寒い日はひだまりでゴロゴロ
「よーし、ちょっと草を刈っておきますか」
植木ばさみを持って、僕は庭に出ていた。
夏ほどの勢いはないが、少し草が生え始めている。
週末のお昼。
太陽が昇っていて暖かいうちに、外での仕事を済ませてしまおうと思ったのだ。
「ん? なんでしょうこれ?」
枯れた草を積み上げた場所が大きく膨らんでいる。
茶色でシマシマ。
どこかで見たことがあるような物体だ。
物体が動いて、ひょいと首を上げた。
シマシマシッポだった。
「あらーこんなところで寝てたんですか」
「アーウー?」
「枯れた草に埋まっていて、擬態しているみたいで、何がいるのかわかりませんでしたよ」
「フウーン」
シマシマシッポは僕を見上げてあお向けになり、ゴロンゴロンと左右に転がった。
「あはは、そこは気持ちがいいんですか? まあ草が敷いてあるから、寝てみたら気持ちがいいんでしょうね」
「アウ」
シマシマシッポはべったりと平べったくなって、かなりリラックスしている様子だ。
家の中よりもリラックスしているかもしれない。
「猫が草に埋もれてリラックスしているというのも、なんか不思議な光景ですけど……」
雲が動いて日差しが強くなった。
「あ、ここは日向ぼっこにもちょうどいいというわけですか」
たしかに暖かい。
「フーン」
「いい場所を見つけましたね」
と声をかけて、僕は草刈りを始めるのだった。
***
庭にいると、どこからともなくうちの猫がやってくる。
そして離れた場所で僕の行動を観察する。
この日も当然うちの猫がやってきた。
シマシマシッポから離れた場所で、うちの猫が座る。
窓の下に作られたコンクリート部分の場所だ。
うちの猫は草まみれになって喜ぶタイプではない。
少しでも草が身体についたら、嫌そうな顔で丁寧に毛づくろいをするタイプだ。
離れたところで二匹がくつろいでいる。
しばらくすると、シマシマシッポが動いた。
トコトコとうちの猫に近づく。
「何なのよ!」というふうにペチンと頭を叩かれ、またトコトコと元の場所に戻っていく。
(いまのは何でしょう……? 草の場所に誘ったのかな……?)
うちの猫が近づかないので、草を積み上げた場所はシマシマシッポの専用になってしまった。
どこか誇らしげな顔をしているようにも見える。
***
ひととおり草を刈って、家に戻ることにした。
玄関へ向かうとうちの猫もついてくる。
「やっとドア係が来たわね!」というふうに僕の前を先導するように歩く。
シマシマシッポのほうを振り返ると、ベタリと寝そべって家の中に入る気はないようだった。
ドアを開けて、もう一度振り返る。
「帰りますよ? まだ外で遊びますか?」
シマシマシッポは首を上げて「えっ?」という顔をして、また寝そべった。
帰る気はないようだ。
(まあ、家の中ですねているよりはいいですよね。しばらく外を堪能してください)
と僕はドアを閉めるのだった。




