うちの気ままなハンターで夜行性動物な猫
ーーうわ、ちいさい! オモチャみたいですね……!
自動販売機まで歩いていった帰り、向かい側からやってくる小型犬を見かけた。
リードをつけて、散歩中のようだ。
ちょこちょこと足を動かして、一生懸命歩いている。
ーー小型犬にしてもちいさいですよね。この大きさなのにちゃんとリードを付けているのが、なんか不思議……。
おばあさんがリードを持って、犬のあとをゆっくり歩いている。
あんまりジロジロ見るのは良くないかな、と思いながら近づく。
ーーあっ、あの猫……!
小型犬から少し離れて、猫が一匹着いてきているのだった。
頭を低くして、そろりそろりと。
獲物を狙うような動きだ。
ーー小型犬が狙われてる……!? 悪い猫ですね……!
おばあさんに軽く会釈をして、すれ違う。
そして僕は、猫の進路に立ちふさがった。
「何してるんですか……! 帰りますよ……!」
うちの猫は「邪魔しないでよね!」という顔で僕を見上げていた。
「よその犬に悪さをしないでください! 飼い主さんに怒られますよ? 返り討ちにあうかもしれませんし」
うちの猫には伝わらなかったようで、プイッとそっぽを向いて、走り去ってしまった。
ーーえー、本当に散歩中の犬にパンチを喰らわしてないですよね……? さっきは完全に狙いを定めてるように見えましたけど……。
と僕は不安になってしまうのだった。
***
ガチャン!
ドアノブを引っ張る音が聞こえる。
真っ暗闇のなかで、時間を確認する。
ーーいまは……夜中の3時ですか……。まあ暑すぎて、どうせ起きちゃうし、いいんですけど……。
ガチャン! と急かすように、またドアノブが引っ張られる。
「はいはい、いま行きますからね」
ドアを開けると待ちかねたようにうちの猫が駆け込んでくる。
トコトコと洗面所へ向かって、ピタリと止まり、僕を振り返る。
「ん? なんですか?」
寝ぼけた頭でうちの猫を追う。
ヒョイと飛び上がり、洗面台に登ると、また僕を振り返る。
「ああ、水を飲みたいんですね。はいはい」
蛇口をひねって、水を出す。
うちの猫が、流れる水をペロペロと舐める。
僕はじっとそれを見つめる。
ーーうん? これは、飲み終わるのを待たないといけないですね……。水を出しっぱなしにするわけにもいかないですし……。ちょっともう、眠くなってきたんですけど……。
うちの猫は水を飲むのが遅い。
小さな舌でペロペロと舐めて水を飲んでいるのだから、まあ速く飲めるわけはない。
特にこの日は機嫌良く、いつもよりものんびりと飲んでいた。
ーーうーん、無理やり中断させて蛇口を閉めるわけにもいかないですし、本当に眠いですし……はやく飲み終わらないかなあ……。
しゃがんで膝に顔をつけて、うつらうつらする僕を気にすることなく、うちの猫はいつまでもペロペロと水を飲み続けるのだった。




