どうしてもご飯を食べたい犬みたいなシマシマちゃん
チューブのおやつを食べるときも、うちの猫とシマシマシッポの反応はまったく違う。
うちの猫はちいさな舌でちょこちょこ食べる。
チューブから中身をたくさん出してしまうと嫌そうな顔をするから、こちらで食べやすい量を調整しなければならない。
シマシマシッポはガツガツ食べる。
出てきた分だけいくらでも、噛みつくようにして食べる。
「もう終わりですよ?」と言っても、何も出てこないチューブをいつまでも舐めていたりする。
***
「いただきま……おわっ!」
食事をしようと椅子に座ると、グニャグニャした不思議な感触のものを踏みつけてしまった。
「やっぱり、シマシマちゃんじゃないですか」
「アウ……」
「ちょうど椅子に座ったときの足の部分に寝転んでいたら、そりゃあ踏みますよ!?」
「ンアウ」
「体重のかけ方次第では危ないですからね。そういうところにいるのはやめましょう」
シマシマシッポはこうやってひとの足元にいることが好きなようだ。
椅子の下にいることは、特に多い。
うっかり踏んでしまうこともあるが、そこはあまり気にならないらしい。
テーブルの上にはうちの猫が座っていた。
僕の食事に手を出すことはないが、テーブルには上る。
マナーがいいのか悪いのかよくわからない子だ。
「はい、じゃあいただきます」
僕が食べ始めると、うちの猫も動き出す。
「食べるの? 仕方ないわね」と明らかに乗り気ではない様子でカリカリを食べ始める。
僕がご飯を食べているときは、自分も食べないといけないと思っているようだ。
うちの猫は食が細いので、こうやって食べているところを確認できると安心する。
「ホワウ……」
椅子のしたからシマシマシッポが顔を出す。
「これは僕のご飯ですよ。シマシマちゃんもカリカリ食べたらいいですよ」
「アウ」
「わかった!」という顔でちょこんと座る。
「わかってないじゃないですか……。僕のご飯はあげませんよ」
「フルル……」
鼻をヒクヒクさせながら、僕の膝に手をかける。
後ろ足で立ち上がる格好だ。
「ちょっと! ひとの話聞いてないでしょ。痛いですって」
シマシマシッポは以外と力があるので爪をたてられると痛い。
ご飯に夢中で力加減がよくわかっていないようだ。
「人間の食べ物ですからね。猫が食べるには味が濃すぎるんですよ」
「ワーウ、ワーウ」
僕の膝に手をかけ、もう片方の手で僕の腕を引っ張ろうとする。
「器用ですけど。なんか犬みたいなことしてますけど。ダメですって」
シマシマシッポに抵抗しようとあたふたしていると、カリカリを食べ終わったうちの猫がテーブルを歩いてくる。
「まだ食べてるの? 遅いわね」と僕の目の前をゆっくり通りすぎる。
「こっちはこっちで、食べてるひとの目の前を通りすぎるのはやめてください……! あんまりマナーが良くないですよ。勝手にご飯を食べないのはいいんですけど。あっ、痛いッ! のぼらないで! それは本当に痛いから!」
僕の目の前と足元で、それぞれ自由に行動している。
「もう! やめてくださいよ!」と言いながら、僕はなんだか楽しくなってしまうのだった。




