シマシマちゃんの挑戦
暑くなってきたからか、うちの猫のお気に入りの場所が変わってきている。
ストーブはつけていないし、ホットカーペットもなおしてしまったからだろう。
あちこちに動いて、あるときはシマシマシッポのお気に入りのソファーでくつろいでいたりもした。
***
散歩から帰ってきたシマシマシッポが、リビングに入ってきて、ピタリと止まった。
お気に入りのソファーにうちの猫が座っているからだ。
円を描くように、うちの猫に近づきすぎないようにして、部屋のなかをぐるりと回る。
そして部屋の隅で座り込む。
順番待ちをしている、という様子だ。
うちの猫は気にしていないようで、目を細めてくつろいでいる。
少しして、シマシマシッポが立ち上がった。
30センチほど、ソファーに近づく。
(あら、珍しい! 普段なら諦めてどこかに行くのに。よっぽどソファーに座りたいんですね)
うちの猫がブンッとシッポを振る。
シマシマシッポはすぐさま耳をペタリと寝かせて、座り込んだ。
うちの猫が、フンと鼻を鳴らす。
その後も腰を浮かせて、また座ってを繰り返しつつ、シマシマシッポはじわじわとうちの猫に近づいていった。
(シマシマちゃん、頑張ってますね!このまま近づいていったら、どうなるんでしょう……!)
息を殺して見守る。
近づくにつれ、シマシマシッポの移動距離が短くなる。
ついに、モゾモゾとするだけで、近づけなくなる。
(どうなっちゃうんでしょう……!)
うちの猫は大きく伸びをして、シマシマシッポをちらりと見て、フンと鼻を鳴らし、リビングから出ていってしまった。
「えー、シマシマちゃん、良かったですねー。ソファーを譲ってもらえましたよー」
シマシマシッポはおっかなびっくりといった様子でソファーに登り、何度か姿勢を変えて、それからいつものように目をつぶるのだった。
***
うちの猫は玄関前をうろうろしていた。
「よく譲ってあげましたねー!」
「ウーン」
指を鼻に近づけると、鼻から首筋をこすり付けてくる。
「この調子でもうちょっと仲良くなれるといいんですけどねー」
と首を触っていると、パッとうちの猫が僕から離れた。
大きく口を開けて、「クァー!」と威嚇する。
「あら、機嫌悪いんですか。まあそれはそうかも……って! ちょっと! そっちは!」
うちの猫が走りだし、リビングへ駆け込む。
すぐにシマシマシッポがドタバタ逃げ回る音が聞こえてくるのだった。




