うちのやっぱり難しい二匹
目が覚めるとなんだか変な感じがする。
ベッドが狭い。
すぐそばでガサガサと毛布が動く音がする。
見ると、うちの猫が「ウウーン」と鳴いて、伸びをしているところだった。
また毛布に潜り直して寝るつもりのようだ。
「いや、彼女ですか……」
とつぶやいて、僕も眠るのだった。
***
週末、どこにも行けないので部屋で本を読んでいると、スウーとドアが開いた。
モゾモゾと遠慮がちに、シマシマシッポが顔をのぞかせる。
「あら、シマシマちゃんじゃないですか。珍しい」
シマシマシッポは基本的に、僕の部屋までは来ない。
二階はうちの猫の縄張り、という暗黙の了解のようなものがあるみたいだ。
ーーまあ、一階もうちの猫の縄張りなんですけど……。
シマシマシッポがソロリソロリと遠慮しながら部屋の中へ入ってくる。
本をふせて、両手を広げた。
「さあ、僕の膝の上でお昼寝しますか?」
それは遠慮しますという顔で、シマシマシッポが離れていく。
向かう先は座布団だ。
うちには座布団がたくさんある。
猫用に用意した、というわけではないのだけれど、うちの猫とシマシマシッポは気に入っている。
気がつくと座布団のうえで丸くなっているということが、よくある。
二階の僕の部屋にも座布団はいくつか置いてあった。
シマシマシッポはのそのそと座布団のうえに座って、何度が姿勢を変えて、ようやく落ち着いたのか丸くなった。
ーーせっかく二階に来たんだから、僕の膝の上で寝たらいいのに……! まあ落ち着いて寝ているみたいだし、そっとしておきましょう。
とまた本を読んでいると、うちの猫が部屋に入ってきた。
ドアから数歩。
ぴたりと止まる。
丸くなっているシマシマシッポをじっと見ている。
シマシマシッポのほうは、完全に寝ているようだ。
ーーあら、どうなっちゃうんでしょう……?
僕が黙って見ていると、うちの猫は「ハァ? なんでこの子がいるの?」という顔をして、ゆっくりと部屋から出ていった。
ーーうーん、一緒に寝たりするのは無理でしたか……。そうですよねえ……。ご機嫌斜めになっちゃったみたいだし、あとでチューブのおやつをあげましょう。
と僕は見送るのだった。
***
別の日、今度はうちの猫が座布団で寝ていた。
部屋のドアがスウーと開いてシマシマシッポが滑りこんでくる。
また来ちゃいました、という顔だ。
数歩でピタリと止まる。
うちの猫は目を閉じたままだ。
抜き足、差し足、といった様子で、シマシマシッポは方向転換して、部屋から出ていった。
ーーあらら、やっぱり一緒にゆっくりするのは無理ですか。これじゃあまた部屋には来なくなりますね……。
シマシマシッポが出ていったドアのほうへ、耳をピクリと動かして、うちの猫は満足げに眠るのだった。




