うちの残念なお誘い
「ウアーオ!」
朝起きて、階段を降りるとシマシマシッポが待ち構えていた。
「あらおはようございます。お出迎えありがとうございます」
「フウーウ!」
僕をチラチラと振り返りながら、シマシマシッポは玄関のドアへ向かう。
ドアは閉まっている。
「あっ、遊びに行きたかったんですねー」
「ナッ! ナッ!」
遅い! というように短く鳴いて、急かされる。
「開けますよぉ。いま起きたばっかりなんだから、そんなに急かさないでくださいよー」
待ちきれないように、開いたドアのすき間からするりと出ていく。
もう振り返ることはない。
ーーいいんですけど、なんか僕の扱いが雑になってませんか……?
ドアを開けて、トコトコと去っていくシマシマシッポを眺めるのだった。
***
「フーン?」
朝食を食べていると今度はうちの猫がドアの前に座る。
リビングから出たくなったらしい。
「ちょっと待ってくださいねー」
と言って、待ってくれるうちの猫ではない。
悪気があるのかないのかわからないが、気分によっては、ドア近くの棚の上に乗っているものを落とし始めるのだ。
バタン。
ガシャン。
「ゼロ、ヨン、サン」
プッシュ式の電話機の上に乗ったりもするから、あれこれと騒がしくなる。
やっぱりわざとやっているのかもしれない。
「あー、もう。開けますから。待たせてすいません」
ドアを開けると僕をチラッと睨んで、無言で出ていく。
まあこれはいつものことだ。
問題はここからだ。
廊下をトコトコを歩くうちの猫を眺める。
だんだんと壁に寄って、すっと上半身を壁の陰に隠す。
そしておしりだけ見せて、立ち止まる。
ーーやっぱり、これやりますよね。
以前からこういう行動はしていた。
シマシマシッポもだ。
だが、最近多い気がする。
僕が見るたびに、おしりだけが少し遠くで待ち構えているのだ。
ーーうーん、一緒に行こうよ、ってことだと思うんですけど。
猫なのでおしりの穴が丸出しだ。
もうちょっといい誘いかたがあるんじゃないかと思う。
「うーん、まあいいでしょう。どこに行くんですか?」
僕が追いかけると、うちの猫は僕を見上げながらトコトコと歩いて離れていき、またおしりだけをつき出すのだった。




