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うちのそれは嫌

「はーい、美味しいやつですよー」

と僕はチューブ状のおやつを見せびらかした。

うちの猫が、「あらなにかしら」という顔で近づいてくる。

そう、このおやつは少食で偏食なうちの猫でも大喜びするおやつなのだ。

僕の足元にちょこんと座って、「本当になんなのかしらね」という顔で待ち構えている。

こういう態度だか、うちの猫的には大喜びなのだ。

しかも、今日のおやつはいつもと違う。

最近ちょっと痩せたかな？といううちの猫のために、栄養バランスのいいものを選んで買ってきたのだ。

「さあ、今日のやつはいつもとはひと味違いますよ！」

僕がチューブを差し出す。

うちの猫がにおいを嗅ぐ。

そして、「これ、いつもと違う」という顔をして、トコトコと去っていった。

＊＊＊

ーーたしかに違うんですけど、猫に大人気のこのチューブのおやつに、あんな塩対応する猫って、そんなことあります……？

チューブは開けてしまったので、どうにか処理してしまわなければならない。

家のなかを探し回って、なんとかシマシマシッポを見つけることができた。

「はーい、シマシマちゃん。おやつ……おわっ！？」

シマシマシッポが駆け寄って、僕の膝に登ってくる。

「いや、あげますから。ちょっと落ち着いて」

シマシマシッポは目を見開いて、チューブに集中していた。

チューブの中身を押し出すと、すぐさま舌ですくいとる。

中身が出てこなくても、チューブを舐める。

チューブを噛んで、食べようとする。

「いや、そんなにですか？　喜んでくれるのはいいですけど。シマシマちゃんにはいつもと味が違うとか関係なさそうですね」

熱心にチューブをペロペロと舐める。

時々、勢い余って僕の指も舐める。

これはチューブの中身押し出し係りの役得だ。

ーーうーん、うちの猫もこれくらい食欲があるといいんですけどね。いや、こんなには必要ないか……。

チューブの中身がなくなってもペロペロと舐めていたシマシマシッポがようやく中身がないことに気づく。

「アオウ！」

「その鳴きかたは、おかわりの鳴きかたですね。正確にはカリカリを食べ終わったあと、『エサ入れがからですけど？』とアピールして、時々僕が、『あれ？　カリカリ入れてませんでしたっけ？　いま入れますね』と騙されるときのやつ！　ダメですよー。今日のおやつは終わりです」

「アオ！」

しばらくうろうろして、おかわりがないことを悟ったシマシマシッポは、「ブウ」と鳴きながら去っていくのだった。