表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/215

うちの猫と網戸とお隣の奥さん(前編)

 庭に出ると、謎の草が生えていた。



 チューリップから、花をなくして葉っぱだけにしたような感じの草だ。根元には球根がある。


 ――こんな草、前からあったっけ? 


 僕は首をかしげた。


 庭の一画がびっしり埋め尽くされていて、しかもひざの高さくらいまで成長している。

 こんなに目立つ草、前からあったなら見落としていたはずはない。

 

 ――ここ二三日暖かくなってきたから、それで急成長したのかな。ほかの草も伸びているし、これは草むしりの時期が来たのかもしれない。


 そんなことを考えていると、今度はガリッガリッという音が聞こえてきた。なんだかよくない感じの音だった。


 ――この音はいったい……?


 音のほうを見ると、うちの猫が網戸をよじ登っているところだった。


 ――ちょっと! 何してるんですか……! そんなことをしたら網戸がだめになってしまいます……!

 

 うちの猫は豪快に音をたてながら、網戸を僕の肩くらいの高さまで登ると、耳をぺたんと伏せたまま振り返って、


「あお!」


 と鳴いた。


 動けなくなってしまったようだ。必死に腕を動かして、網戸から抜け出そうとしている。


「そうですよね……。網目に爪が引っかかって動けなくなってしまいますよね。最初から気づいてほしかったですが、そうでなくても網戸に登るのはダメなんですよ」


「あーお!」


「わかりました。助けますけど、もう網戸に登るのはやめてくださいね」


 網目から爪をはずして抱きかかえる。

 あらためて観察してみると、網戸には大きな穴が開いていた。


「あー! 何ですか、これ!」


 僕が言うと、うちの猫は、


「ち、違う。知らない」


 という顔で体を縮みこませていた。





 まあ、夏になる前に一度、網戸の張替えはしなければならないと思っていたところだ。

 ちょうどいいといえばちょうどいい。


 網戸をはずして家の裏に向かう。作業ができるくらいのスペースを探して、網戸を地面に置いた。

 うちの猫も気になるのかついてきていた。 


「いいですか? 網戸の張替えは意外と簡単です。猫でもできるので覚えておいてください」


 まず、網とパテをホームセンターで買ってくる。


 網戸の網の周りは、ぐるりと溝が囲っている。その溝にはパテが埋め込まれている。


 パテと一緒に埋め込むことで、網を溝に固定する。だいたいの網戸はそういうつくりになっている。


 網戸の溝に埋まっている古いパテをほじくりかえして、網を外す。新しいものに取り替える。そして、新しい網を巻き込みながらパテを溝に埋めていく。

 これで完成だ。


 細い溝にしっかり埋めなければならないので、最後の工程がちょっとやっかいだけど、パテを溝に埋めるための器具もあるからそれを使えばいい。


「ね、面倒くさいだけで、作業は簡単なのです」


 そう言って、うちの猫は何をしているのだろうと見ると、新しい網の上に乗っかっていた。作業に集中していて気づかなかった。

 目を細めて、完全に落ち着いてしまっている。


「そういうのはやめてくださいよ……。網がまたダメになっちゃいますよ……」


 僕が持ち上げて移動させると、「何よ!」という顔で見つめられた。


「カーテンなら丈夫だし、もうぼろぼろだし、登ってもいいんですけど、網戸は本当にやめてくださいね。すぐにダメになっちゃいますから」


 地面に降ろすと、聞いているのか聞いていないのか、うちの猫は遠くを見つめていた。


 ――本当に、もう!


 ため息をついたものの、このときの僕はまだ知らなかった。うちの猫が僕の話をまったく何も聞いていなかったということを――。

なんかいつもと違う、特別なことをしてみたいと思って前後編にしてみました!

分けたわりに、いつもどおり短いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ