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うちの幸せな睡眠タイム

うちの猫がテーブルの上に転がっていた。

身体を伸ばして、長い「く」の字の形。

触ってくださいとでもいうような、無防備な体勢だ。


そっと近づく。

すぐに気づかれたようだ。

ピクン、ピクピク……と耳が反応していた。

目はつぶったまま。


「こんなところに寝ていたら……触っちゃいますよー」


おでこをツンツンと指先で触ると、すぐにゴロゴロという音が聞こえる。

逃げようとはしない。

身体もまったく動かさない。

ゴロゴロという音と、耳が反応していなければ、寝ているとしか思えないくらいだ。


――ふーむ、今日は機嫌がいいみたいですね。起きませんね。


さらにツンツンと背中を触る。

反応は、ゴロゴロという音と、ときおりピクピクと動く耳だけ。

嫌がって逃げ出すわけでもない。

唸って爪を立てるわけでもない。

寝ているふりをして、動かない。

それはつまり、もっと触って欲しいということだ。


「ふふふ、よーし、もーっと触っちゃいますからね!」


ピアノを奏でるように、指先でツンツンツン!とうちの猫の背中を触る。

さすがにじっとしていられなくなったのか、うちの猫がぐぐっと前足を伸ばす。

そしてグネグネと身体を捩って、あお向けになる。

僕にお腹を見せる姿勢だ。


「もっとですね!わかりました……!両手でやっちゃいますよー!」


両手でうちの猫のお腹を触りまくる。


ツンツンツン!


うちの猫がまた身体を捩って腹ばいになる。

そしてモゾモゾと移動する。

ティッシュの箱に顔を近づけると、ヒゲをこすりつけ始めた。


「ウウーン……」


ツンツンツン!


「フーン……」


ツンツンツン!


「フンフニャン……」


「ふう、なんだかよくわからない状況ですが、とても満足ですよ!」


うちの猫はティッシュの箱をだき抱えて、なにやらもどかしそうにフニャフニャ言いながら、ヒゲを擦り続けるのだった。


***


「あら、シマシマちゃんも寝てますねー」


調子にのった僕は、シマシマシッポもツンツンしてやろうと、当然考えるのだった。


「この寝顔は、ブサイクですね……」


そっと腰をおろす。

シマシマシッポはあお向けになり、半分目を開けて、口も少し開いていた。


生き物が寝るときの姿はさまざまだ。

だが、半分目を開けた状態でブサイクにならない生き物は、歴史上存在したことがない。

猫でも人間でも一緒だ。


「本当にこれはブサイクですねー!」


と言いつつ、シマシマシッポに近づいていく。

寝ているシマシマシッポと平行になって、添い寝をしているような格好になる。

シマシマシッポも動こうとしない。


「ふふふ、触って欲しいんですねー!」


指をゆっくりと、鼻に近づける。

ピタッと鼻を押さえた瞬間、シマシマシッポが、目を開く。


「ギャン!」


ピョンと飛び上がって、着地する。

驚いた僕は転がって離れる。

シマシマシッポは大きく目を開いて、身体全体で息をしている。

こちらも驚いている様子だ。


「ええ? 気づいて寝たふりしてたんじゃないんですか?」


僕と顔を見合わせて、シマシマシッポは思い出したように、あくびをして、毛繕いを始めた。

びっくりしたのをごまかしているようにも見える。


「猫って、寝てても近づいたらすぐに気づく動物じゃないんですか……?熟睡するんですね……」


なんだかびっくりしすぎてこれ以上撫でる気にはなれず、落ち着くために僕はコーヒーをいれるのだった。

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