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うちの元気なまたたびシート

 一晩遊んでいる間に、うちの猫もシマシマシッポもすっかり以前の様子を取り戻した。

 うちの猫はツンツンしているし、シマシマシッポはとてもちょろい。

 いつも通りだ。

 それでも家族の話を聞くと、僕がいない間に多少の変化があったらしい。


 まずシマシマシッポの気が強くなった。

 よその猫が庭に遊びにくると追い払おうとするらしい。

 うちを自分の縄張りだと認識するようになったということだろうか。

 そして毎回よその猫に追われて木の上で震える結果になるという。


――シマシマちゃん……。なんでそこまで弱いんですか……。


 体も大きい(太っている)し、見た目はそこそこ強そうなのに、シマシマシッポはケンカに全く勝てない。

 もちろんうちの猫にも勝てない。


 うちの猫の変化はというと、少しおとなしくなったらしい。

 シマシマシッポを追い回す時も、走らずゆっくり追いかけることが多い。

 そしてホットカーペットの上でじっとしていることが多いらしい。


――寒いからですかね……。


 病気とかではないようだが、少しやせたような気もする。

 いまもストーブの前に座って動かない。


――落ち着いた……といえばそうなんですけど。


 やっぱり元気よく走り回ってほしいと思う。



 そういうわけで、僕はホームセンターに来ていた。

 うちの猫が元気になるお土産を買うためだ。


――やっぱりあれですよね。チューブのおやつ。これは間違いないでしょう。


 とりあえずおやつをかごに放り込んでいく。


――オモチャも買って……でももうたくさんありますし……。うーん。


 以前買った円形爪とぎは、うちの猫に好評のようだ。

 円形爪とぎとは、要するに段ボールでできた丸いお皿だ。

 うちの猫はちょくちょくお皿の中に入っては、満足げな表情をしているらしい。


――予想外に好評だったみたいですよね。今回もよさそうなものがあれば……ん?


 僕が手に取ったのはまたたびシートだ。

 粉状のものや、木の棒のようなものはよく見かける。

 しかしシートになっているのものは初めて見た。


――ふむふむ。シートにまたたびパウダーが印刷されているんですか。


 またたびなら、まあ喜ばないことはないだろう、とこれを買うことに決めたのだった。



「さあ、またたびシートですよ!」


 またたびシートは特別な準備をする必要はなく、パッケージから出すだけで、その効果を発揮するらしい。

 さっそくリビングのカーペットの上に広げる。


「さあ……」


 だがうちの猫は警戒しているようでなかなか近寄らない。


「ちょっと……。そっちに移動してください」


 四つん這いになった僕が追いかけると、うちの猫が嫌そうな顔でトコトコ歩いていく。

 そしてまたたびシートの上で、ハッとした顔をする。


――気づきましたか……!


 シートのにおいを嗅いで、からだをこすりつけようとして、僕を振り返る。


「フウーン……」


 どうやら僕に見られたくないようだ。


「ふふふ、嫌がっても見ちゃいますよ!」


 うちの猫はフンフン言いながら、じりじりと僕から距離をとりつつまたたびシートにからだをこすりつける。


「ふふふ……」

「ウウーン……」


 こうして我々はたっぷりまたたびを楽しんだのだった。



 またたびとはいえ、うちの猫がこんなに喜ぶのは珍しい。

 たいていのものにはスンとした態度をとる猫なのだ。

 またたびシートの効果は絶大だと言ってもよさそうだ。


――うちの猫でこれなら、シマシマちゃんはどうなんでしょう。


 シマシマシッポを捕まえて、またたびシートの上に降ろすとすぐに反応があった。

 ゴロゴロ転がりからだをこすりつけて、「なにこれ!」という風に飛び起きる。

 シートをぺろぺろと舐めながら、ひっくり返って背中をこすりつける。

 そして飛び起きて、またゴロゴロ転がる。


――ずいぶん忙しそうですね……。喜んでいるようなのでいいですけど。


 ふと気が付くと、またたびシートに夢中になっているシマシマシッポの背後にうちの猫が近づいていた。

 頭を低くして、いまにもとびかかろうという姿勢。

 完全に獲物を狙う目だ。


「ちょ、ちょっと! またたびに夢中のところを襲うって、あんまりでしょう……」


 僕が制止しようと手を広げても、「ふん、邪魔ね」という感じでよけてシマシマシッポとの距離を詰めようとする。


「ダメですって。もうしばらく楽しませてあげましょうよ……。あっ、ひどい! もう!」



 こうして、結果としてまたたびシートのおかげでうちの猫はいきいきと「獲物」を追いかけるようになったのだった。

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