うちの猫のおかえりなさい
年末には実家へ帰ることができた。
雪は降ってはいないがひどく寒い。
駅から急ぎ足で実家へと向かうが、道には誰もいない。
――この辺にもちょこちょこ野良猫がいたと思うんですけどね。この寒さでどこかに行ったのかな?
ポケットに手を入れて、肩をすぼめて半分震えながら、僕はようやく実家へとたどり着いたのだった。
帰宅のあいさつをして、すぐに猫を探す。
――うーん? あ、いた!
カーテンのしたから見上げている顔を見つけて駆け寄る。
シマシマシッポだ。
「あらまあ、また太りましたよね?」
お腹ではなく、顔の周りに肉がついていた。
また一段とタヌキに近づいている。
「久しぶりですねー」
手を伸ばすとシマシマシッポは目を真ん丸にして、ぴょんと飛び上がった。
マンガみたいな驚き方だ。
「えっ? いや、僕ですよ?」
シマシマシッポはビックリした顔のまま、トコトコと走って庭へ出て行ってしまった。
若干傷つきながらもうちの猫を探す。
――うちの子にもあんな対応をされてしまうとショックですよね……。
うちの猫は布団の中にいた。
寝ていたようだ。
毛布をめくると「はあ?」という顔で、めんどくさそうに眼を開く。
「ほら、僕ですよ? 帰ってきましたよ?」
うちの猫は驚くこともなく落ち着いていた。
また眠りそうになりながらも、僕の手のにおいをかいでいる。
ちょっと毛繕いをして、またにおいをかぐ。
少しして、手におでこをこすりつけてきた。
――あらー、甘えちゃって!
おでこをこすりつけながら眠りそうになっていた。
――よっぽど眠いんですね。
それじゃあおやすみなさいと声をかけて、毛布を掛ける。
うちの猫と遊ぶのはまた明日にしようと思った。
リビングで年末のテレビを見ているとガチャとドアが開いた。
うちの猫が起きてきたのだ。
「もう起きたんですね? さっきはやたら眠そうにしてたのに、5分も経ってないですよ? 僕を追いかけてきたんですか?」
うちの猫は僕の目の前に移動して、毛繕いを始めた。
途中でやめて、僕の方をちらりと見る。
また毛繕いを始めて、僕の方をちらり。
「ふふふ、ナデナデしてほしいんですね? 仕方ないですねー」
おでこをなでるとゴロゴロとのどを鳴らす。
少しして、うちの猫はハッと何かを思い出したように、僕の手を軽く噛んだ。
手を咥えたまま、目を細めて僕の様子をうかがっている。
――あはは、そうそう、うちの子はこうなんですよね!
おとなしくなでられるだけというのはうちの猫らしくない。
こうしていつものうちの猫の反応を見られて、実家に帰ってきたんだなあとあらためて感じたのだった。




