うちのマタタビ、クネクネカッ!
コンビニでマタタビと書かれた箱を見つけた。
中にはマタタビ粉末が入っているらしい。
まさかこんなものがコンビニに売っているとは思わなかった。
値段も確認せずに手に取り、レジに持っていってしまう。
シマシマシッポがマタタビに反応するのは以前確認している。
フニャフニャクネクネして、ずいぶん気持ちよくなっていたようだった。
一方、うちの猫はあまり興味を持てないようだった。
だが、いままでにあげたことがあるのは棒状のマタタビと、つめとぎのおまけについてきた粉状マタタビだけ。
単独で売っている、この粉状マタタビなら、いつもと違う反応が見られるかもしれない。
***
家に帰るとさっそくマタタビの箱を開けて、粉の入った透明な小袋を取り出す。
――なんかこの見た目は、ものすごく楽しくて幸せな気分になれる薬みたいな……。実物見たことないけど……。
と思いながら、マタタビ粉末を手のひらに乗せて、うちの猫に近づける。
――どうですか?
うちの猫はぷいっとそっぽを向いた。
だがそのまま手を近づけていると、鼻をヒクヒク動かし始めた。
やはりマタタビのにおいが気になるようで、僕の手に顔を近づける。
そしてそのまま止まらなくなった。
スンスン! スンスン!
いままでに見たこともないような勢いで、においを嗅いでいた。
――おお、このマタタビは効果があったようですね!
だんだん落ち着かなくなってきたようだ。
身体をクネクネさせ、目を細めてうっとりとした表情を浮かべる。
そして次の瞬間、カッと僕の手のひらに噛みついていた。
力は入れていなかったようで痛くはないが、いきなりのことでびっくりしてしまった。
「なんでそんなことをするんですかー。びっくりしますよ」
うちの猫は気を取り直して、またマタタビのにおいを嗅いでいる。
だんだんクネクネしそうになって……。
「わっ、また噛んだ! ひどいことをしますねー」
僕の反応を無視して、うちの猫はクネクネカッ! を繰り返している。
――なんなんですか、これ……。思ってたのと違う……。
どうも素直にクネクネするのは嫌なようだ。
僕にカッと噛みつくことで、なんとか正気を保っている。
――うちの猫の中のツンとデレが戦っている……。そういうことみたいですね。
デレが勝つことはなさそうだったし、うちの猫が困っているようだったのでマタタビを与えるのはここまでにした。
残っていたぶんをつめとぎにふりかけると、うちの猫は飛びついて、それからごまかすように爪を勢いよく研いでいた。
***
ホームセンターで買ってきたレンガを庭に並べる。
――ここに置いて……。うん、いい感じですね。
庭の一画をレンガで囲ってちょっとオシャレな花壇にする計画だ。
買ってきたレンガでは数が足りてないが、今回は雰囲気をつかむためのお試しレンガなので問題はない。
――まずはレンガを埋める穴というか溝を掘らないとですね。
邪魔な草を引き抜いていると、うちの猫が近づいてきた。
「あら、手伝ってくるんですか?」
もちろんうちの猫は手伝ったりはしない。
僕が引き抜いた草のにおいをかぐだけだ。
どちらかというと邪魔をしている。
「あのですね、ここに花壇を作るんですよ。猫草も植えましょうね」
うちの猫は草を鼻の穴に入れようとしている。
「何してるんですか……。ちょっと草を移動させますよ」
草を取り除き、シャベルで溝を掘り始める。
――レンガを埋めるとなると、もうちょっと深さがあったほうがいいでしょうか。
と悩みつつ穴を掘っていると、うちの猫が穴に興味を持ったようだ。
のそのそと穴に入りって座り込んでしまった。
「ちょっと、そこは邪魔なんです。穴が掘れないでしょ!」
と言ってもどいてくれない。
目を閉じて、穴の中で落ち着いてしまっている。
「ほら、どいてください」
手を伸ばすと威嚇されてしまった。
「もう……」
と諦めて、花壇を作るのはまた次の機会となった。
――花壇ができたら何を植えましょうか。
離れたところから花壇を眺めて考える。
うちの猫は穴の中に座ったままだ。
――そうだ。マタタビって庭で育てられるんでしょうか……?
今度ホームセンターで探してみようと思ったのだった。




