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お決まりのご挨拶

「アウアウアウ!」


 シマシマシッポが鳴いていた。

 早朝から甘えた声で何かを主張している。


「はい、おはようございます?」

「アウアウ! フルルルル」


 喉を鳴らしながらも主張を続けている。

 なんだか今日はテンションが高い。


 ――うーん? カリカリはありますし、何が言いたいんでしょうか? あっ……。


 水を入れた鉢が空になっていた。


「喉が乾いていたんですね!」

「アウアウ!」

「もう空になったんですね? 昨日は入ってたと思うんですけど」


 冬になって、空気が乾燥して水が減りやすくなっているのかもしれない。

 水を入れると、目を細めて嬉しそうに飲み始めた。


 ――ふふふ、見てるこっちも嬉しくなってきますね……?


 ふと見ると、うちの猫がシマシマシッポの背後からこっそり忍び寄ってきていた。


「いまは水を飲んでるんだから、やめてあげてください」


 抱えて本棚の上に乗せる。

 うちの猫は不満そうにシッポを本棚に叩きつけていた。


***


 少ししてソファーを見ると、シマシマシッポが丸くなって寝ていた。

 水を飲んだせいもあってか、満足そうな表情だ。

 そこへまた、うちの猫が近づいていく。


 ――あっ……。


 とめる間もなく、うちの猫が前足を振り上げた。

 その前足で、しかし叩くのはシマシマシッポではない。

 座っているソファーだ。


 べチンと大きな音がして、シマシマシッポが飛び起きた。

 ピンと耳を立てて、首を縮めて、かなり驚いている様子だ。

 うちの猫がそれをじっくりと眺めて、満足げに去っていった。


「新しい技を思いついてしまったんですね……ソファーパンチ……。直接叩かないのは偉いですけど……」


 シマシマシッポは固まったままだ。


 ――直接叩くよりも効果があるみたいですね……。


 しばらくの間、シマシマシッポは固まったままだった。


***


 庭でボスを見つけた。

 お団子のようにまるくなっている。

 隣にはいつかのシャム猫っぽい猫――ぽい猫だ。

 こちらもまるくなっている。


 ――二匹で同じ格好でまるくなって……本当に仲がいいんですね。


 ぽい猫が僕を見つめる。


「ミャアミャア」

「あら、かわいい鳴き声ですねー」

「ミャアン」


 結構ひとに慣れている猫のようだった。

 僕から逃げようとはしない。


 しゃがんだ姿勢で少しずつ近づいてみる。

 ぽい猫は「ミャア?」と鳴くものの、まるまったままだ。

 一方、ボスは目をつぶってまったく動かない。


 ――もうちょっとで触れますよ……。あっ。


 ちょうどそこへシマシマシッポが通りかかった。

 近づくのをやめて、シマシマシッポを捕まえる。

 腕の中でぬいぐるみのように動かないシマシマシッポを、ぽい猫の前に置く。

 シマシマシッポは耳をペタンと伏せて、後ずさりをしようとする。


「あはは、人見知り――猫見知りですか? そんなにビクビクすることないですよ」


 仲良くなったらいいなと思いつつ、シマシマシッポのお尻を押す。

 するとぽい猫が起きあがった。

 そして軽く前傾姿勢になる。

 次の瞬間、ブンッという音とともに猫パンチを繰り出していた。

 シマシマシッポは地面にベタリと伏せて、首を縮めていた。

 ぽい猫の猫パンチは、シマシマシッポの頭の上をかすめている。


 ――避けた!? いや、それよりも、あんなにかわいく鳴いておいて、狂暴なんですか……。


 シマシマシッポが家の中に逃げ込もうと、玄関へ走っていく。

 ぽい猫は平然とした様子で座りなおし、ボスは目をつぶったまま微動だにしていなかった。


 ――気の強い彼女なんですね……。まあボスには似合ってるかも……。


 うちの猫と鉢合わせたら大変なことになりそうだと思いながら、シマシマシッポを追って僕は玄関へ向かった。

ちなみに後日、うちの猫がぽい猫を追い払っていました……。

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