かわいいおにぎりの毛づくろい
コンビニのおにぎりをテーブルに置いて、僕は夕食をとっていた。
おにぎりはお昼に買って、食べるタイミングがなくてそのままになっていたものだ。
その処分について、考える。
夕食は別にあるから、もうおにぎりを食べる必要はない。
しかしせっかく買ったのだから、捨ててしまうのはもったいない。
――夜食にでもしましょうか。
と、うちの猫がおにぎりに鼻を近づけた。
首をかしげ、しばらく見つめる。
そして――。
ペロペロ、ペロペロ。
舐め始めた。
おにぎりはまだビニールに包装されたままだ。
――ビニールが気に入ったのか、おにぎりが気に入ったのか……。どっちなんでしょうか。
嬉しそうに目を細めて、熱心に舐め続けている。
――なんか食べようとしているのとも違うような。毛づくろい……? おにぎりの毛づくろいをしてあげてるんですか? どういう心境ですか?
うちの猫の行動が気になって、食事が進まない。
僕の視線も気にせず、うちの猫はひたすらおにぎりの毛づくろいを続けていた。
***
トコトコとボスが庭を歩いてくる。
その後ろから、同じようにトコトコと、白い猫がついてきていた。
――あら、お友達でしょうか?
モコモコの毛並みで、顔の真ん中だけ薄っすらと黒い白猫だ。
――この毛並みはペルシャっぽい雑種かな? きれいな子ですね。
ペルシャっぽい猫はボスの後を追いかけ、頭をこすりつけようとしている。
――ふふふ、仲がいいんですね……?
ペルシャっぽい猫は、ボスのお尻の臭いを嗅ぎたいようだ。
一方、ボスは気にしていないようで、マイペースにトコトコ歩いている。
ペルシャっぽい猫が立ち止まり、お尻を嗅ごうとすると、ボスが前に進む。
慌てて追いかけて、お尻に顔を近づける。
しかしお尻は逃げていく。
ペルシャっぽい猫の興味はひたすらお尻に集中している。
――変わったお友達ができましたね……。問題なのは、この子がメスなのかオスなのか……。
モコモコの毛に隠れて性別の判断をできないまま、2匹を見送ることになってしまった。
***
家の中はいつも通りだ。
ヒーターをつければ、うちの猫はご機嫌で前に座る。
去年と同じく、毛皮が焼けてしまうんじゃないかというくらいの至近距離だ。
「ほらー、もうちょっと離れてください。焦げちゃいますよ」
と触ると、本当にびっくりするくらい熱い。
ヒーターから少し離れた位置に座布団を置いて、誘導してみた。
するとうちの猫はヒーター側の端に、ちょこんと座るようになった。
どうしてもヒーターの近くに座りたいらしい。
この座布団をシマシマシッポが見つけた。
そろそろと近づいて、寝転がる。
幸せそうに目を細めていた。
――ふふふ、暖かいでしょう。
と眺めていると、うちの猫が駆け寄ってきた。
寝ているシマシマシッポの頭をバチンと叩く。
そして耳元で「クワー!」と威嚇をする。
シマシマシッポは飛び起きて逃げ出していった。
「いや、いま使ってなかったんだから、シマシマちゃんに使わせてあげたらいいじゃないですか。交代で暖まればいいんですよ……」
うちの猫は「なんてことかしら!」という風に「フンッ!」と鼻を鳴らして去っていく。
ヒーターの前が無人になる。
「いやいや、結局使わないんですか」
僕のツッコミを完全にスルーして、うちの猫は階段を駆けあがっていった。




