うちの猫の冬モードとドアを開ける係
すっかり冬になった。
着替えようと思っても、服が冷たいから、一度ヒーターで温めなければならないくらいの寒さだ。
北の地域の人はどうやって暮らしているんだろうと思う。
うちの猫もこの寒さには耐えられないようで、外に出かけることがほとんどなくなった。
いつ見ても、家の中にいる。
僕が帰ってくると、すぐに僕の部屋に駆け込んでくる。
僕がヒーターを点けることを知っているのだ。
押しのけるようにして、僕とヒーターの間に座り、背中を向ける。
「ちょっと邪魔なんだけど」とチラリと視線を送ってくる。
そんなことを言われても、僕も暖まりたいのだ。
仲良くヒーターの前に座ることになる。
眠る時間が近づくと、今度は布団に乗ってくる。
僕が電気毛布を使うことを知っているのだ。
なかなか布団の中まで入ってくることはない。
だが距離はかなり縮まっているように感じる。
しばらくそうしていると、布団から飛び降りる。
「寝てればいいじゃないですか……」と言っても、聞いてくれない。
ちょっとリビングに行きたい気分になったら、行かなければならないのだ。
トコトコとドアへ向かい、ちょこんと座る。
そして「はやく開かないかしらね」という様子で、毛づくろいを始める。
――もう寝ようと思ったのに……。自分でドアを開けてくれればいいんですけど。
「フゥン」
「フゥンじゃないですよ。そのドア、開いてるんです」
うちの猫が部屋から出たくなったときのために、僕の部屋のドアは完全に閉めずにわずかに開けているのだ。
ちょっと爪を引っ掛ければ自分で開けられるはずだ。
うちの猫は申し訳程度にドアを前足で触って、また「フゥン」と鳴いた。
自分で開けるつもりはないらしい。
「わかりました……。はい、どうぞ」
ドアを開けるとフンという鼻を鳴らす音を残して走り去っていった。
しばらくすると、ドアの向こうから「フゥン」という声が聞こえる。
「だから……開いてるんですよ……」
と言いながら、僕はドアへ向かう。
***
朝食をとっていると、正面の窓にシマシマシッポが近づいてきた。
外から窓ガラスに前足を当てて、立ち上がるようにしている。
目をキラキラ輝かせて、じっと僕を見つめて、何かを訴えかけていた。
「あはは、中に入りたいんですね」
窓は自分で開けられないだろうから、仕方がない。
――そのわりに普段は自由に出入りしているような気がしますけど。結局どこから出入りしてるんでしょうね。
ガラガラと窓を開ける。
すぐに駆け込んでくるかと思いきや、ピタリと止まって、ジワジワと小さく丸くなってしまった。
耳もペタンと伏せている。
――どうしたんでしょう? 中に入らないんですか?
シマシマシッポは地面をひっかくような仕草をして、駆け出していった。
――何だったんでしょう?
ふとテーブルの下を見ると、うちの猫が座っていた。
「私何もしてないわよ」と澄ました顔で毛づくろいをしている。
――追い返したんですね……。またそういうことをやって……。
シマシマシッポが走っていったのは玄関の方向だ。
――もしかして……。
と玄関へ向かう。
ドアを開けると待ちかねたように、「アウアウ」と悲しそうに鳴きながら、シマシマシッポが飛び込んできた。




