表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/215

毛布の中からこんにちは

 ずいぶん寒くなってきた。

 暗くなってから出かけるときは、コートを着なければならないくらいだ。


 ――季節の変わり目で風邪をひきやすいですし、しっかり暖かくしておかないと……。


 ベッドに毛布を重ねておく。

 電気毛布も使うか迷ったが、まだはやいだろうと判断した。


 ――あれば絶対使っちゃいますし……。電気毛布も使いすぎは良くないんですよね。


 電気ヒーターも、押し入れから出して設置しておく。

 ストーブもあるのだけれど、どうもうちの猫が飛び乗って火傷をしそうで怖い。


 ――洗濯機の中に喜んで入っちゃうし、うちの猫は危機管理能力がなさそうなんですよね……。


 ヒーターに必要以上に近づいたり、接近防止の網にスリスリしてみたりする姿も見かけている。


 ――猫用の安全ヒーターとか、あったらいいかもしれないですね。


 と思いつつ、実はうちの猫のために座布団より少し大きいくらいの電気毛布を用意してある。

 寒さが本格的になってきたらこれを使う予定だ。


 ひと通り準備をして部屋に戻る。

 ブックマークの更新チェックをしていると、何かの気配を感じた。


 ――うちの猫……はいないですね。


 最近お気に入りの窓枠の上にも、うちの猫の姿はない。

 ふと振り向くと、毛布の中からピョコンと顔を出したシマシマシッポと目があった。


「わっ、いつのまに!」


 シマシマシッポは寝起きなのか、目をショパショパさせて「ウニャニャ」とつぶやくように鳴くと、毛布の中に潜り込んでいった。


「まあ別にそこにいたっていいんですけど、部屋の中にいるなんて珍しいですね?」


 怪我をしたときに寝かせていたおかげで、僕の部屋に慣れたのかもしれない。

 気にせずにブックマークのチェックを続けていると、うちの猫が部屋の中に入ってきた。

 落ち着かない様子でウロウロしている。

「この部屋、絶対何かいるわよね」という顔だ。

 僕を見つめるので、


「何もないですよ? 気のせいじゃないですか?」


 と鼻をツンツンすると、「そうかしら? 何か変なのよね」と半信半疑な様子で部屋を出ていった。

 毛布の中のシマシマシッポを確認するとびっくりした顔でからだを縮みこませていた。


***


 庭ではボスが座っていた。

 芝生の上に、足をからだの下に隠す座り方でじっとしている。


「ふふふ、後ろから見ると変な生き物に見えますねー」


 足が隠れているから楕円形のお餅のような物体に見える。

 周囲をウロウロしても、ボスは動かずに耳をピクピクさせるだけだ。


 ――やっぱりこの座り方だと暖かいんでしょうか?


 この辺りでは冬でも雪が積もることは滅多にないけれど、あまりにも寒さがひどくなってきたらボスも家に入れてあげないとな、と思う。


 ――どこか別の場所にねぐらがあるっぽいですけど。


 ボスは定期的に姿を見かけなくなる。

 顔なじみの家を転々としているのかもしれない。


 うちの猫がやってきて、「変なのがいるわね」という顔でボスを睨んでいた。

 ボスもシマシマシッポも、寒くて動かなくなっているのに、うちの猫は元気そうだ。

 トコトコトコといつもと変わらない様子で歩いている。


「遊びにいくんですか? 寒いしもうすぐ暗くなるし、遅くならないようにしてくださいねー」


 とうちの猫に近づくと、トコトコトコと距離をとって、僕を見つめている。


「ん? 何ですか?」


 追いかけると近づいた分だけトコトコ歩いて、ふり返る。


「あのー、ついてこいってことですか? 来ないでってことですか?」


 道路に出てもトコトコ歩いてふり返る。


 ――もう、寒いから出歩きたくないんですけど……。


 と思いつつ、うちの猫が待っているので追いかけないわけにはいかないのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ