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猫と眠る週末

 急に喉が腫れて、ひどく痛むようになった。

 ツバを飲み込むだけで飛び上がるほどに痛い。

 声も出せない。

 食事もほとんど食べられない。

 だからといって何も食べないわけにはいかないから、我慢してゼリーを流し込むことになってしまった。

 風邪ではないようで、喉以外に不調なところはなかったのが不幸中の幸いだ。


(それにしても痛いですね……。今日は家の中でゆっくりしてましょう)


 リビングへマスクを取りに行くと、シマシマシッポが寝そべっていた。

 僕を見て「フゥン」と鳴くが、どうも様子がおかしい。

 うつむいて動かない。


(あれ? また怪我してませんか?)


 よく見ると右目が少し腫れている。

 後ろ足の怪我が治って意気揚々と遊びに出かけていたのが数日前のことだ。

 それがもう怪我をしてきてしまった。

 シマシマシッポもしょんぼりしている様子だ。


(またガラトラ猫にやられちゃったんでしょうか……。参っちゃいますね)


 怪我の場所を触らないよう、肩を撫でると、ググッと足を伸ばしてから、丸まってしまった。

 あまり動く気にはなれないようだ。


(そうですよね。こういうときはおとなしくしてましょう)


 シマシマシッポを持ち上げると、抵抗はなかった。

 そのまま抱えて僕の部屋へ向かった。


 ベッドの脇に毛布を敷いて、シマシマシッポの寝床を作る。

 普段僕の部屋に入らないせいで落ち着かない様子だったが、毛布の上に無理やり寝かせて、お腹をポンポンと叩いていると、すぐに目を閉じてウトウトし始めた。

 シマシマシッポはこういうチョロいところがある。


 痛み止めに風邪薬を飲んだせいで、僕もすぐに眠くなった。

 目を閉じると、ベッドの隣からゴロゴロという音が聞こえている気がした。


***


 ハッと目を覚ますと、一時間ほどたっていたようだ。

 隣でシマシマシッポが「えっ?」という顔をしている。

 起こしてしまったようだ。


(いや、そこで寝てていいんですよ)


 お腹を叩いて寝かせて、リビングへゼリーを取りに向かう。

 そこではうちの猫がうろついていて、「ウニャウニャ」と不機嫌そうな声を出していた。

 こんな風に鳴くのはうちの猫にしては珍しいことだ。

 シマシマシッポが僕の部屋にいるのが不満なのかもしれない。


(シマシマちゃんはまた怪我をしているので我慢してくださいね。そうだ……)


 キッチンの引き出しを探す。


(ほら、かつお節です。かつお節あげるから、今日は見逃してください)


 カリカリの上にかつお節をふりかけると、うちの猫は「仕方ないから食べるけど!」という様子でカリカリを食べていた。


***


 今回は目の怪我ということで、翌日にはシマシマシッポは元気に歩き回っていた。

 腫れも治まっている。

 近所から釣りのお裾分けで貰ってきたアジをモリモリ食べて、体型が変わるほどお腹を膨らませていた。


 ――この子はどうしてもタヌキになりたいんでしょうか……。


 まあこの様子なら心配はないようだ。


 うちの猫はというと、シマシマシッポが僕の部屋を占領したのが気に入らなかったらしく、窓枠に居座るようになってしまった。

 背を向けて外の景色を眺めつつ、耳だけはこちらを窺っている。


(僕はまだ治りきっていないんですよ。ほら、一緒に寝ましょう)


 と手を伸ばすと、サッと届かないところへ移動して、シッポを窓枠に叩きつけていた。

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