表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/215

うちの入れない窓

「あらまー、仲良しさんじゃないですか」


 と僕は立ち止まった。


 リビングのソファーの上でうちの猫が寝ている。

 近くの床ではシマシマシッポが寝ている。

 二匹ともぐでんとからだを伸ばして、リラックスしている。

 かなり仲が良さそうな、幸せそうな、二匹の猫の光景だ。


 僕がやってきたことに気づいて、シマシマシッポが薄目を開けた。

 ゴロンと仰向けになって、「アオゥ……」と甘えた声を出す。

 そのまま、また寝てしまった。


 次にうちの猫が、目を覚ます。

 ぐぐっとからだを伸ばして、いま気づいたという風に、シマシマシッポを見つめる。

 いきなり、「フゴォー!」と威嚇をする。

 びっくりするような、大きな威嚇だ。

 そして、ソファーから飛び降りると、やるべきことはやったというように、澄ました顔でトコトコ歩いていってしまった。


 シマシマシッポは仰向けのまま、キョトンとした顔をしている。


「本当にもう……」


 僕もとっさのことでなんの反応もできなかった。


 ――そっと寝かせておいたほうが良かったのかもしれませんね……。


 うちの猫の扱いはなかなか難しい、とあらためて思ったのだった。


***


「ウウーン、ウウーン」


 うちの猫の悲しそうな声がした。

 この声で鳴くのは、だいたい家の中に入れてほしいときだ。


「はいはーい。いま開けますからねー」


 と声のする場所を探す。


 ――あれ? 窓は開いてますね?


 開いた窓の向こうから、悲しそうな鳴き声が続いていた。


 ――どうして入ってこないんでしょう……。ってこれは!


 窓枠にシマシマシッポがベッタリと長くなって、寝そべっていた。

 これではうちの猫が家の中に入ろうと飛び込んできたら、シマシマシッポの上に着地することになってしまう。


「シマシマちゃん……」


 シマシマシッポがキョトンとして、僕を見つめた。

 外では相変わらずうちの猫が悲しそうに鳴いている。

 シマシマシッポが着地地点を完全にガードしているので、窓が開いていても、入ってこれないのだ。


「これはさすがにわかっててやってますよね……」


 うちの猫の鳴き声にも、シマシマシッポは気づいていないフリをしている。


「意地悪しないでくださいよ」


 おでこをペチンと叩いても、「なんで?」という顔をするばかりで動こうとしない。


「もう、ほら、こっちにきてください」


 とシマシマシッポを抱きかかえて床に降ろすと、すぐさまうちの猫が飛び込んできた。

 怒りで鳴き声も出ないという様子で「フフン」と鼻を鳴らし、からだを震わせて、走り去っていく。

 シマシマシッポがピンと耳を立てて、興味津々という顔でうちの猫の後ろ姿を見つめる。

 そして、すこし離れてトコトコついていってしまった。


 ――うーん、構ってほしくてやったことなのかもしれませんが、これは逆効果だと思いますよ……。


 と呆れつつ、僕は二匹を見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ