表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/215

うちの花びら猫

「ナアナア! ナアナア!」


 シマシマシッポが僕の足にまとわりついている。


「ん、ん? 今日はやけに甘えてきますねー?」

「ナアナア!」


 テーブルの上ではうちの猫が僕を睨みつけている。

 いまにも飛びかかりそうな姿勢だ。


 ――なんか二匹ともいつもと雰囲気が違うような……? あ、ご飯! ご飯をあげてませんでしたっけ!?


 慌ててカリカリの袋を開けると中身は空だった。


 ――あれ、まだなくなっているはずはないのに……そうか! シマシマシッポも食べるからカリカリの消費量はいままでの倍以上。計算違いでした。しかしこれはマズい……。


 僕の足にはシマシマシッポが「ナア!」とまとわりつき、うちの猫はテーブルから無言の圧力をかけ続けている。


「あの……買ってきますね」


 と家を出てスーパーへ向かった。



 途中でまだスーパーの開店時間ではないことに気づき、行く先を変える。

 時間がはやすぎてどのお店も開いていない。

 結局コンビニでお高いカリカリを買うことになってしまった。


 ――これって量も少ないしそのわりに高いし、ムムム……。


 いつものカリカリとは違う味だったけれど、うちの猫が嫌がらずに食べてくれことだけが救いだった。


***


 今回に限らず、シマシマシッポはお腹が空くとわかりやすく甘えてくる。

 ただ甘えるだけならまだいいのだけれど、それがだんだんエスカレートしている気がする。



「ナアナア! ナア!」


 シマシマシッポがからだをこすりつけてカリカリを要求していた。


「はいはい、ご飯ですね」


 とキッチンに向かうと、カリカリはエサ入れにまだ残っている。


「えっ? まだありますけど……?」

「ナアナア!」

「ありますよ? ほら」


 エサ入れをツンツンすると、「ん?」という感じで駆け寄り、食べ始める。


「ふふふ、入っているのに気付かなかったんですか? おっちょこちょいですね!」


 そう言って離れると、ご飯を食べていたはずのシマシマシッポがトコトコ追いかけてくる。


「あれ? もう良かったんですか? さっきまで鳴いてたのに……まあいいならいいでしょう」

「ナアナア!」

「ん? だからカリカリは入ってますって」


 ということが最近何度かあった。


 ふと思いついて、シマシマシッポがカリカリを食べ始めても離れずに、その場にしゃがんで、食べるのを見守ってみることにした。

 シマシマシッポは確認するように途中何回か僕をチラリと見て、しかし熱心にカリカリを食べ、皿はきれいに空になってしまった。

 最近のすぐ放置してウロウロする食べ方とは違う。


 ――うーん、これって近くで食べるのを見ていて欲しいってことでしょうか……。


 このままひとりでご飯を食べられなくなってしまうのはマズいかな、と思う。


 ――そういえばうちの子も僕と食事のタイミングを合わせようとしますし、でも食事中に構おうとすると怒るし……?


 そういうものなのかな、とも思う。


***


 結局僕が構いすぎているせいで、必要以上に甘えてきてしまうのではないかという結論になった。


 ――うちの子の場合は構いすぎると距離を取られますから、気にしなくて良かったんですが、シマシマちゃんは性格が違いますからね。


 それぞれに合わせて対応を変えたほうがいい。

 ということで、適切な距離感を見極めつつ接してみることになった。



 外から鳴き声が聞こえたので、玄関のドアを開ける。

 すぐにシマシマシッポが駆け込んできた。

 その姿を見て、僕は「あはっ」と笑ってしまった。

 シマシマシッポの頭に、ちいさな花びらがいくつも刺さっていたのだ。


「ふふふ、なんでそんなもの頭に乗せてるんですか。自分で気づくでしょう」


 シマシマシッポはキョトンとした顔をしている。

 以前は種を体中につけていたし、シマシマシッポの毛皮は植物が絡みつきやすいのかもしれない。


 ――花壇だろうが生け垣だろうがお構いなしに飛び込んでいきますし……。


 とりあえず押さえつけて、花びらをひとつずつ摘みあげる。

 シマシマシッポは押さえつけられながらも、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。


 ――やっぱり気になっていたのかもしれませんね。自分で処理できないのはどうかと思いますが……。


 途中で、「あっ、また構ってしまった」と気づいたのだが、「これは仕方ないですよね」と自分に言い訳をして、僕は花びら処理を続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ