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台風の猫たち

 台風がやってくるということで、庭の片付けをした。

 物干し台を横倒しにして、風で飛んでいきそうなものを集める。

 必要のないものは捨てて、そのほかは倉庫に放り込んで、という作業をしていると、開いた倉庫のドアにシマシマシッポが駆け込んできた。


「ちょっと! こら、ダメですよ。いま片付けてるんですから、邪魔しないでください。中に入っちゃダメです」


 とシマシマシッポを抱えて倉庫から連れ出す。

 しかしその後も周りをウロウロして、倉庫の中に入る隙をうかがっている。

 これではなかなか作業がはかどらない。


 しばらくして、シマシマシッポがトコトコと、庭の隅へ向かっていった。

 倉庫からは離れた場所だ。


 ――ふう。ようやく落ち着いて片付けをできますね。


 と振り返ると、うちの猫が倉庫に入るところだった。


***


 うちの猫が洗面所の蛇口を見つめ、僕を振り返り、「フゥーン」と鳴いた。

 水道から水を飲みたいという合図だ。


「はいはい、いま水を出しますからね」


 と蛇口を緩める。

 勢いのまったくない、滴り落ちる水に、うちの猫が舌を伸ばす。

 目を細めてピチャピチャと水を舐めて、嬉しそうだ。


 ――ただ、これは時間がかかるんですよね。


 いつまでもうちの猫が水を舐めている姿を眺めることになってしまう。


 ――まあいいか……。


 と気が済むのを待っていると、足の上に重みがかかった。

 シマシマシッポだ。

 シマシマシッポが僕の足の甲の部分に、お腹を乗せているのだった。

 あまりこういうことはない。


「何してるんですか? いまは蛇口当番なので、遊ばないですよ?」


 返事の代わりにゴロゴロという振動が伝わってきた。


 ――そこが気に入ったんですか……? 喜んでいるならいいんですけど、この状況は……。


 足の上に猫を乗せながら、水道の水を飲む猫の気が済むのを待っている。

 なんだか奇妙な状況になってしまった。



 ようやく気が済んだようで、うちの猫がぷいっと顔を背けた。

「美味しかったですかー?」と声をかけながら、蛇口を閉める。

 特に返事はない。

 洗面所の隣にある洗濯機に飛び乗ったうちの猫が、シマシマシッポを見つけた。

 ぐっと肩に力を入れて、僕の足もとのシマシマシッポを睨みつける。

 シマシマシッポはビクッとからだを震わせて、からだをペタリと床に押し付けたまま、後ずさりをした。

 匍匐後退だ。

 壁にたどり着いても、うちの猫は無言の圧力をかけ続けている。


「はいっ、そこまで! お水飲んだのに機嫌悪いんですか? あっちに行きましょう」


 とうちの猫を抱える。

 うちの猫は僕に抱えられながらも、シマシマシッポを睨みつけているようだった。


***


 台風が近づき、風が強くなってきた。

 藤棚のツルがグルングルンと動きまわっている。

 庭にボスを見つけて、窓を開けた。


「この天気なんで、うちの中でやり過ごしましょう。今回の台風は大きいらしいですよ」


 と声をかけると、シッポを震わせながら飛び込んできた。


 ボスは家の中をウロウロするわけでもなく、窓の側にどっかりと座り込んだ。

 庭の様子が気になるらしい。

 ときおりキョロキョロと窓の外を見回している。


 ――こんなに風が強いとびっくりしますよね。動物は台風なんかに敏感だっていいますし……あ、うちの猫の機嫌が悪かったのもそのせいですかね。


「はやく通り過ぎて欲しいですよねえ」


 と一緒に外を眺めて、ふと気がつくと、いつのまにかボスは目を閉じていた。

 だらりと横たわって、安心しているようだった。

台風はたいした被害もなく通り過ぎていきました!

よかった!

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