雷は誰のせい?
ドーン! と雷が落ちる音がして、目が覚めた。
――おお? いまのはけっこう大きかったような?
外ではかなり激しく雨が降っているようだ。
台風のときほどではないにしろ、こういう天気でも気圧の変化があるのか、頭が重い。
耳の中を圧迫されているような感覚もある。
――これはちょっと眠れそうにありませんね。
とリビングに向かった。
僕が麦茶を飲んでいると、うちの猫もリビングにやってきた。
その目はほとんど開いていない。
眩しそうに、ゆっくりと瞬きをしている。
――こういうところは寝起きの人間と全く変わらないですね。不思議なものです。
と眺めていると、「なんなのよ!」という風に僕を見つめ、周囲を歩いていた。
雷が鳴って落ち着かないのかもしれない。
シマシマシッポもやってきて、やはり落ち着かない様子でウロウロしていた。
カラカラン!
乾いた大きな音が響き渡って、シマシマシッポがビクンと身構えた。
うちの猫は、「本当になんなのよ!」という風に窓に近づいて首をかしげている。
「いまのも雷ですよ。窓の外に何かがいるわけじゃないんです」
と声をかけても、うちの猫は窓の外が気になるようだ。
催促をされて窓を開けると、一生懸命になって、匂いを嗅いでいる。
――雷の匂いなんてないですよね……いや、あるのかな?
うちの猫はクンクンと鼻を動かし続けてている。
一方のシマシマシッポはソファーの影に隠れてしまった。
そんな二匹を眺めながら麦茶の残りを飲んでいると、外が真っ白に光った。
一瞬遅れて、ドーン! という音がする。
いまのはかなり近かったようだ。
うちの猫はしばらく空を見上げて、振り返り、僕を見て「ハア? いまのなんなのよ!」という顔をした。
瞳孔が開いてまんまるになって、ちょっと怒っている様子だ。
「いや、なんですか、その顔。いまのは僕のせいじゃないですよ……。雷です。どうして天気は僕のせいになってしまうのでしょうか……」
外に出ることはないものの、うちの猫はその後も雷の匂いを気にして窓の側から離れようとはしなかった。
シマシマシッポはいつの間にか逃げ出してしまっていた。
***
僕が出かけようとすると、うちの猫もついてくる。
玄関のドアを開けると僕より先に外へ出て、キョロキョロと見回していた。
やはりいつもと何かが違うらしい。
雨には濡れたくないのか屋根の下に座り込んで、しきりに匂いを嗅いでいる。
「そんなところにいても何も見つからないですよ。雷が鳴っているだけです。ただの雷ですよ」
と声をかけてもやめようとはしない。
「アンタがやってるんでしょ!」という感じで睨まれてしまった。
その後もうちの猫は動かない。
「そこにいると濡れますよ。濡れるの嫌ですよね。家に戻りましょう」
ドアを開いた状態のまま説得を続けていると、シマシマシッポまで来てしまった。
僕の足の間から顔を出し、うちの猫に睨まれて顔を引っ込める。
しかしシマシマシッポも外が気になるのか、そのまま足元をウロウロしていた。
――なんなんですか、この状況は……。出るなら出てくれないと、これじゃあ動けないんですが……。
二匹とも中途半端な位置にいて、ドアを閉めてしまうと家にも帰れずに取り残されてしまう。
うちの猫の気が済むのを待っていると、ボスが通りかかった。
ボスは雷も雨もあまり気にならないようだ。
トコトコと歩いて、「ニャッ、ニャッ」と挨拶をして去っていく。
それを見たうちの猫は、自分もいけそうだと判断したのか、雨の中に飛び出した。
濡れた地面には触れたくないのだろう。ピョンピョンと飛び跳ねるようにして、ボスを追いかけていく。
シマシマシッポも少し迷ってから、やけくそのように飛び出していった。
――風邪ひかないでくださいね……。
三匹を見送って、僕は玄関のドアを閉めた。




