うちのからかわれやすい猫
シマシマシッポが突然走りだした。
座布団で丸くなっていたうちの猫が顔を上げる。
僕もつい、目で追ってしまう。
バタバタっと走り回ったシマシマシッポが、うちの猫の前で立ち止まる。
うちの猫の目が細められた。シマシマシッポの長いシッポが鬱陶しい様子だ。
おしりをフリフリして、すぐにシマシマシッポが走りだす。
一周して、またうちの猫の目の前で立ち止まった。
フワリフワリと顔の周りで揺れるシッポを振り払うようにして、「ウゥー!」とうなりながらうちの猫が立ち上がる。
――わっ、ついに挑発に乗りましたね。
と僕も立ち上がる。
追いかけっこの始まりだ。
こうなると誰が誰を追いかけるというわけでもなく、とにかく走り回ることになる。
しばらく三匹で走り回って、疲れて座り込んだ。
シマシマシッポはすぐに元気になったようで、「フルルル」とのどを鳴らしながら走り去ってしまった。
うちの猫は、まだベタリと横になったままだ。
動けないようだ。
――シマシマシッポは元気ですね……というか……。
家のどこかで、ドタバタッと動く音がしている。
――ずいぶん我が物顔で暴れるようになりましたね……。
シマシマシッポが元気よく暴れているあいだ、うちの猫は休憩をはさみながら、なんとか落ち着いて毛づくろいをしようとしていた。
***
庭では小鳥の声が聞こえるようになっていた。
「あれ? 様子がおかしいな?」と見ると、うちの猫が木を見上げて、「キュッキュッキュッ」と鳴いている。
小鳥がいるようだ。
――こういうふうに鳴いている姿はかわいいんですけどね……。小鳥を捕まえちゃうんですよね……。
「どこにいるんですか?」とうちの猫のそばにしゃがむ。
うちの猫は木の枝を見上げて「キュッキュッ」と鳴いて、ウロウロしては「ウウーン」と悲しそうな声を出していた。
――あっ、あそこに……。
小鳥は案外近くにいた。
うちの猫がジャンプしても届きそうにはないけど、しっかり姿を確認できる距離だ。
うちの猫はどうにもならなくて、「フウーン」と鳴きながら横になってしまった。
すると小鳥が、「チチチ」と鳴きながら、枝から枝へ移動した。
うちの猫は飛び起きて、またウロウロする。
――うーん? なんかこれは……?
うちの猫が諦めようとすると、小鳥が近くの枝に移動する。
逃げるわけでもなく、うちの猫に捕まらないくらいの場所に留まっている。
――小鳥に遊ばれてませんか……?
しばらくのあいだ、うちの猫は悲しそうに鳴きながらウロウロすることになった。
***
うちの猫が座布団で丸くなっているのを見つけた。
ふてくされたように、座布団に顔を押し付けている。
「あはは、今日はいろんな生き物からからかわれて災難でしたねー」
とおでこをつんつんする。
うちの猫はわりとすぐにムキになるので、からかいやすいのかもしれない。
うちの猫は「ほっといてよ!」というようにさらに顔を座布団に押し付けて、動かなくなってしまった。
「ふふふ、ご機嫌ななめなんですかー?」
つんつんを繰り返す。
「みんなからからかわれて困っちゃいますよねー。あはは」
座布団の奥からは、「オウー」という威嚇音が聞こえていた。




