うちの……それはまあ怒られますよ……
玄関のマットの上に、うちの猫が寝転んでいた。
二階へ上がる階段のそばで、ちょっとエントランスのようになっている場所だ。
マットはふかふかの毛布のような素材で、確かに横になると気持ちが良さそうだった。
「ふふふ、こんなところで何してるんですかー?」
うちの猫はじっと玄関のドアを見つめていた。
後ろ足はダラリと伸ばして、上半身だけを起こして、ちょっとセクシーなポーズにも見える。
「誰か待っているんですか? 僕ならここにいますよ?」
うちの猫は顔だけ動かして、「あら、いたの?」というようにゆっくりとまばたきをして、そっぽを向いた。
隣に座っておでこを撫でていると、ドタバタと音がした。
階段をシマシマシッポが勢いよく降りてくる。
「相変わらず元気ですねー。というか、いつの間に二階へ昇っていたんですか」
シマシマシッポはウロウロと歩き回り、うちの猫をチラチラ見ている。
そして、また勢いよく階段を駆け上がっていった。
「あはは、遊んで欲しいみたいですよ? 追いかけないんですか?」
うちの猫は微動だにせず、「元気な子ね」というようにゆっくりまばたきをしていた。
***
部屋で本を読んでいると、うちの猫が静かに侵入してきた。
床に落ちていたスーパーの袋が気になるようだ。
そろりそろりと袋の中に入り、すっぽり収まってしまった。
――なんか大人しいというか、静かというか……。こっそりひっそりしたい時期なんでしょうか……?
袋の中で大人しく座って満足している様子だったので、気づかないふりをしておくことにした。
しばらくするとシマシマシッポが部屋の外からスーパーの袋を見つめていた。
目を大きく開いて、耳をピンと立てて、興味津々という表情だ。
お尻をふりふりして、勢いよく袋に飛びかかった。
「ああっ、そこにはうちの子が入ってるんですよ!?」
スーパーの袋から出てきたうちの猫は、いきなり飛びかかってきたシマシマシッポに激怒していた。
からだを震わせながら「シャー! クワー!」と威嚇している。
シマシマシッポはすぐに部屋を飛び出していく。
シマシマシッポがいなくなったあとも、うちの猫は怒りが治まらないといった様子でうろついていた。
「あはは……。遊びたかっただけで悪気はなかったんだと思いますよ……」
うちの猫は鼻を鳴らしながら、また袋の中に収まっていった。
***
窓の側の日当たりのいい棚の上に、畳んだタオルを置いていた。
ここは洗濯物を置いておくのにちょうどいい場所だ。
ふと見ると、シマシマシッポがタオルの上に寝転んでいる。
「あはは、いい場所を見つけましたねー。できれば洗濯物の上には乗らないでほしかったですが……」
シマシマシッポは顔だけ動かして、僕のほうを向いてゆっくりとまばたきをした。
――あれ、これって見たことがあるような……。
猫がまったりしたくなる時期なのかもしれない。
シマシマシッポはじっと窓の外を眺めて、僕の相手をしてくれる様子はなかった。




