表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/215

うちの雨降りと、正体不明の獲物

 裏庭の倉庫へいくと、屋根の下で、シマシマシッポがおとなしく座っていた。

 雨が降っているから、雨宿りだろう。

 軽くおでこをつついて挨拶をして、


「ふんふーん。カマはこの辺でしたかねー」


 と倉庫の中を探していると、僕の隣で「ウワーオ」と鳴いていた。いつもよりもトゲのある、不機嫌な声だ。


「えっ? どうしたんです」

「アーオ、ウアーオ」


 僕を見て、「ウアーオ」と鳴いて、空を眺めて、また僕を見つめる。


「うん? 雨ですね? 濡れるから遊べませんね?」

「アオ!」

「あれ? もしかして、僕にどうにかしてくれって言ってます?」

「アーオ!」

「というか、この感じは……雨が降ってるのは僕のせいだと思ってませんか?」

「ウワーオ!」


「そうだけど?」というようにシマシマシッポが鳴いた。

 そういえばうちの猫も似たようなことをしていた。猫は雨が降るのは人間のせいだと考えるものらしい。


「僕に言ってもどうにもならないですよ……」

「ウアーオ!」


 不機嫌な顔でいつまでも見つめている。


「だって、どうにもならないんですよ……」


 とその場を後にした。



 カマを持って、道路沿いに草が生えている場所へ向かう。

 どこからやってきたのか、雑草がびっしり地面を埋め尽くしてしまっている。

 そろそろどうにかしなければと思っていたところへ、この雨だ。

 地面が柔らかくなっているので、草を掘り返すのにはちょうどいいと考えて、カマを持ってきたのだった。


 ――ふふふ、ものすごい効率ですね。


 軽くカマを地面に突き刺すだけで根っこから掘り返されていく草を見て、僕は満足していた。

 ちなみにシマシマシッポも途中までついてきて、いまは駐車場の屋根の下にいる。

 何か虫を見つけたのか、地面を叩きながらウロウロしている。

 あちらもあちらで満足しているようだ。


 ――この調子でどんどん……あれ?


 土の中から奇妙な生き物が出てきた。


 ――ミミズ……? いや、なんかおかしい……。


 形はミミズに似ているが、激しく伸び縮みしている。僕の知っているミミズは、こんなにサイズが変化する生き物ではなかった。


 ――ええ……? なんかヤバいのを掘り返しちゃったかも……。


 からだをテカテカ光らせながらのたうち回る謎の生物を眺めてしばらく考えた僕は、草掘りをやめることにした。


 ――今日は雨ですし、よく考えると外で草を掘り返すような天気ではないですよね。


 と倉庫へカマを戻しにいった。



 駐車場では相変わらずシマシマシッポがウロウロしていた。

 近くに獲物は見当たらない。


「何を捕まえてたんですか?」

「アオウ?」


 機嫌は直ったようだ。

 喉をフルフル鳴らしながら返事をしている。


「ふふふ、こんな雨の日に、いったい何が……」


 嫌な予感がした。


「え……マジで何がいたんですか? 謎の生き物ですか? 違いますよね?」

「アウアウ?」


 シマシマシッポは首をかしげるばかりだ。


「大丈夫だとは思いますけど……謎の生き物をうちの中に持ち込んだら本当に怒りますからね?」


「ワオウ?」とシマシマシッポは生け垣の下に飛び込んでいった。


 ――分かってくれたのかどうなのか……。うちの猫は家の中に小鳥を持ち込みましたし……。


 リビングで謎の生き物を踏みつぶすなんてことが起きないように、僕は祈るしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ