朝のシマシマシッポ
朝起きて、暗いなかをキッチンへ向かう。するとシマシマシッポがトコトコトコッと足元をかけていった。
「わっ、足元は危ないんですよー。暗くてほとんど見えてないですからね。気をつけてください」
「アーオウ」
「だいたいどこから入ってきてるんですか……。いつもいつも……」
「アーオ! アーオ!」
朝からシマシマシッポのテンションが高い。こうしてあんまりうるさく鳴いていると、家の中とはいえ近所迷惑なんじゃないかという気もしてくる。
「ちょっと静かにしましょうか」
「アーオウ! アーオアーオ!」
「アーオじゃないです。ニャッと鳴いてみましょう」
お手本のようにして「ニャッ、ニャッ」と鳴く僕を見つめて、シマシマシッポがピタリと立ち止まる。そして、「ナッ、ナッ」と鳴き返した。
「えっ、賢い! ニャッ、ニャッですよ」
「ナッ、ナッ」
「あはは、ニャッ、ニャッ」
「ナッ、ナッ」
ふたりで鳴きあって、結局うるさくなっているんじゃないかという気もした。
外から帰ってくると、玄関の前にボスがいる。ちょうどドアを塞ぐように横になっていた。
「あら、また待っててくれたんですか?」
このところ、こうしてボスが待っていてくれることが続いていた。猫同士でケンカをする時期から、甘えたくなる時期に変わったのかもしれない。近所でケンカをする声も聞こえない。
お腹を見せてアピールするボスの相手をしていると、だんだんとテンションが上がってきて、
「フニャー」
と鳴きながらトコトコ走っていく。
そうして、ようやく家の中に入ることになる。
うちの猫とシマシマシッポも、あまりケンカをしなくなった。といっても、仲良しになったというわけでもない。ちょうどいい距離感を見つけて、お互いその距離を保っている様子だ。
うちの猫は、ストーブの前のソファー。シマシマシッポはテレビの前のソファーに寝転んでいる。
最近はそれぞれのソファーが決まってきたようだ。いつも同じソファーでくつろいでいる。
二匹ともだらりと力が抜けて長くなり、リラックスして目をつぶっていた。
「うーん、気持ち良さそうでいいんですけど……」
と二匹の様子を眺める。
「僕の座る場所がないですよね……」
つい先程、洗濯物を取り込んだところで、それをソファーの上に置いていた。座れそうなスペースはうちの猫とシマシマシッポが占領したので、僕は床に座るしかない。
「まあいいですけど……」
床に座ったまま洗濯物を畳み始めると、うちの猫が、
「何かやってるわね。どれどれ」
といった感じで前足を伸ばしてタオルに爪を立ててきた。
「ちょっと! 邪魔しないでくださいよ」
うちの猫の顔を見ると、爪を立てたまま目を閉じている。眠たいけれど、邪魔だけはしたかったようだ。
「もう、本当に……。なんですかそれ……」
タオルから爪を抜いて、うちの猫にそのタオルをかけると、モソモソと動いてタオルにすっぽり包まってしまった。
「はい、おやすみなさい」
と声をかけて、僕はまた洗濯物を片付け始めた。




