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細雪と騒がしい朝

「フギャー!」

「ニャー!」

「ギャッギャッギャー!」


 家の外で猫がケンカをしている声が聞こえた。

 まあそういうこともあるかと聞き流そうとして、何かが引っかかった。


 ――この声、どこかで聞いたことがある……!


 もしかしたら、うちの猫がケンカに巻き込まれているのかもしれない。

 巻き込まれていたら、間違いなく勝てない。

 不安になって、慌てて階段を駆け降りた。


 階段を降りた先のフローリングのうえに、うちの猫がべたりと横になっていた。

「なんか騒がしくて迷惑ね」という風に目を細めている。


「あれ? そうですか……。ここにいたんなら心配ないですね」


 このまま部屋に戻ろうかとも思ったが、猫の声は思ったよりも近い。気になって、確認しておくことにした。

 窓を開けるとすぐ目の前に、シマシマシッポが座っている。そこへ詰め寄るようにして、見知らぬ猫が威嚇していた。シマシマシッポは相変わらず「なんで?」という顔をしている。


「ああっ! こらっ。シマシマちゃんをいじめたらだめですよ」


 僕が裸足のまま慌てて庭に降りると、見知らぬ猫は渋々といった様子でゆっくり去っていった。

 シマシマシッポはそのすきに家の中に入っていた。


「あはは、実は怖かったんですか?」


 よく見ると、シッポが三倍くらいの太さに膨らんでいる。

 平気そうな顔をしているけど、本当に怖かったのかもしれない。


 ――そういえば、子供が来たときも怯えてましたもんね……。


 大きさだけなら先程の見知らぬ猫よりもシマシマシッポのほうが大きいのだけれど、案外気は小さいようだった。


 ――まあ怪我がなくて良かったです。


 と僕はシマシマシッポが落ち着くまで頭を撫でていた。





 朝起きるといつもよりも冷えこみが激しくて、外を見ると雪が舞っていた。

 細雪というのだろうか。あるかないかの雪の結晶が、地面にたどり着いては消えている。

 僕の住んでいる地域ではこれくらいの雪でも珍しい。


 ――うーん、寒いのは憂鬱ですね……。すぐにやみそうですけど。


 と眺めていると、庭をシマシマシッポが歩いていた。


 ――雪に気づいているんでしょうか?


 雪を見て「なんだろう?」という顔をしているようにも見えるし、いつもと変わらないようにも見える。

 トコトコと歩いていって、突然立ち止まった。

 前足を持ち上げて、プルプルと振っている。


 ――あはは、雪が付いちゃったんですね。


 冷たさには気づいているようだ。

 また歩き始めて、シマシマシッポは見えなくなった。



 外を眺める僕の隣に、うちの猫が座った。

 うちの猫は雪に気づいているようだ。

 しきりに空を見上げている。


 窓をひっかいて僕を見つめるので、要求どおり、窓を開ける。


「こんなに寒いのに外に出たいんですか?」


 うちの猫は窓から半分からだを出して、辺りを見回している。

「これはちょっと寒すぎるわね。外に出るのは無理ね」という風に鼻を鳴らしている。


「今日は家の中で暖かくしていてください。電気カーペットを点けておきますからね」


 と言っても、うちの猫はキョロキョロしている。

「探せばどこかに暖かい場所があるかもしれないわね」といった様子だ。


「あのー、そこにいると窓が閉められないんです……。外は寒いですから……諦めましょうよ」


 その後もうちの猫が納得するまで、冷たい外の空気を浴び続けることになってしまった。

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