逢魔が時
夕暮れ。空がオレンジ色に染まる。この時間には、魔が現れるという。
男が歩いていた。彼は近所付き合いも良く、好青年として知られている。
夕方、いつものようにコンビニへ買い物に来ていた。
洗顔とワックス、それと小腹が空いたのでパンを買った。
まだ何か買う物は無いだろうかと、会計が終わった後もうろうろしていた。すると、いつも読んでいる漫画の最新巻が置いてあった。思わず手に取り、眺める。
財布を開くと三百円。買えない。でも読みたい。いやしかし。
盗もう。そう思った。運良く店員はこちらを見ていない。そっと袋に漫画を落とし、コンビニを出る。
ポン、と肩を叩かれた。別の男性店員だった。
「会計済ませてない商品がありますよね?」
男は逃げ出した。しかしすぐに捕まってしまう。
近所付き合いの良かった彼の犯した犯罪は、瞬く間に噂になって広がっていった。
「まさかあの子がねぇ」
「信じられないわ」
「そういうことする子には見えなかったんだけどねぇ」
「人は見かけによらないわねぇ」
「私は前から危ないやつだと思ってたのよ」
取調室にて男は言った。
「魔が刺したんだ」
夕暮れ時。昼と夜の境界線。この時間には魔が現れるという。この男も、魔に魅力された被害者なのかもしれない。