何かを飲み込んだ少年
ある日、誰もいない事をいい事に、田んぼと田んぼの間のアゼ道を自転車で滑走し、大声で『フライ・イン・ザ・スカイ』という我が名曲かつバイブル的存在のような歌を歌っていた少年がいました。
空が真っ青で、その中を白い丸っぽい雲が転々と流れている様が、春の陽気さをプンプンとさせています。
少年は気分が良いのです。ああものすごく良いのです。何で良いのでしょう?
知りません。
少年は、そのまま田んぼと田んぼの間を抜けて道路に突き当たって停まりました。すると。
シュポッ。
……何かが、少年の口の中に飛び込んで来ました。さっきまで「お調子」にのって大口を開けて歌を野の虫や鳥やカエル達に披露していたわけですが。
やめた途端にコレです。
(ん? 何かが入って来た……? ととっ、ワッ!?)
何かが口の中に飛び込んで来た拍子に、少年はバランスを崩して自転車ごと倒れてしまいました。「わああっ!」
ドングワァラ、ガッシャンコッ!
激しく倒れ込みました。と、そこに自動車が。「うわああああッ!」
少年は、気を失ってしまいました。
…………。
それから数日か、数週間か……数年後なのか。経ちました。
少年は目を覚ましましたが、辺りの様子を見渡してみて驚愕しました。
「何なんだ、コレはッ!」
なんと、少年の体は改造されていたのです。手術台のようなベッドの上で、自分の体のあちこちから青や赤のコードが引っ張られていました。よくよく見ると、自分の腹の部分がスケスケになっていて、内臓ではなく小人さんがせっせと栄養を運んでいるのが見えます。
「気がついたようだね。キラーン」
わざわざ擬音語を添えて、そばに居た白衣を着た老人が言ってきました。
……ワナワナと震える少年のコブシ。一体自分に何が起こったのか……? 少年は気が動転して、博士(なのか?)に詰め寄りました。
「俺の口に何が飛び込んで来たんだッ!」
えっ……そこっ!?
……訳がわかりません。少年は気が動転していたので。
様々な展開を想像しつつ。少年の未来に幸あれ。
《END》