もう一度恋の予感(五百文字お題小説)PART4
お借りしたお題は「自転車」「予防接種」「ストレス」です。
唐揚げ専門店の正社員の松子は、予防接種の帰り道に自転車ごと自動車と接触して転倒し、救急車で搬送された。
そこには勝手に恋敵と思っている萌がいた。
しかし、萌と思われる看護師が多恵という名前だと知り、混乱した。
「以前のあんただったら、トラックとぶつかっても無傷だったのにね」
お見舞いに訪れた親友の光子が涙を流して笑う。松子はムッとしたが、実際にタクシーと接触して運転手を鞭打ちにした前科があるだけに何も言い返せない。
「検温します」
そこへどう見ても萌としか思えない多恵が入って来た。
(この子?)
光子がジェスチャーで尋ねる。松子は無言で頷いた。
「失礼しました」
多恵は会釈して出て行った。
「訊いたの、あの子に?」
光子が小声で言った。
「訊けるわけないでしょ? 切っ掛けがないもの」
確かにいきなり、
「貴女、本当は萌さんでしょ?」
そんな事を切り出したら、病棟を変えられてしまうかも知れないと思った。
それでも、そんな話をしたせいで、多恵の事が気になった。
「げ」
トイレに立った時、松子は廊下の先で親しそうに話す多恵と長谷川さんを見てしまった。
(どうして長谷川さんがここにいるのよ?)
また強いストレスを感じてしまう松子だった。
次で終わります。