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ありがとうの花束

作者: あくあ

目が開けられないような光に包まれて

体は宙に浮いているようにふわふわする…

ゴウゴウと音がする強い風が私に当たったかと思うと、

突然目の前に見慣れた町が現れた…でも…

見たことある気がするのに、どこだかわからない…

だれか…ここがどこだか…私がだれだか教えて。



〜ありがとうの花束〜



しばらくアスファルトの道を歩いていた。

体が軽い感じがするのは気のせい?

綺麗な女の人が切り盛りしている花屋の前を通り、

少し先の大きなスーパーからはたくさんの主婦らしき人が出てきた。

なんだか微笑ましいな…なんでだろう。

にぎやかな町を抜けると、静かな住宅地に出た。

どうしてこんなに静かなんだろうと思っていると、

あるアパートから1人の人が飛び出してきた。

私の横をものすごい勢いで駆け抜けていくのは、

少し茶色がかった髪の毛をした20くらいの男だった。

「何かあったのかな?」

追いかけようとしたが、急に体が重くなって動けなかった。

どのくらいの時間そこに立ち止まっていただろう…

さっきの男の人が今度は驚くくらいゆっくりとした足取りで

こっちへ向かってきた……

彼が私の横をまた通ると、体が動くようになった。

「美里……」

そう呟く彼の目からは大量の涙がこぼれていて、

なんだか切ない気持ちになった。

彼の後をついて行き、さっき彼がでてきたアパートの中へ

入ろうとしたので私も滑り込んだ。

「美里…美里……ぅぅ…」

部屋の中央に座り込んだ男は何度も同じ人の名を呼び

ずっと泣き続けていた。

「泣かないで…」

私の言葉は彼に聞こえていないようだった。

「お願い…泣かないで。」

私はどうにかして笑ってもらいたくて

言葉をかけるが彼は気付いてくれない。

涙を流しすぎて、この人は消えちゃうんじゃないか…

そんなの嫌だ…生きていて欲しい…

彼はおもむろに立ち上がった。

外に出て行ったので私は追いかけた。

「通じた!!」

そう想い嬉しい気分で私は後ろをついていく。

すると彼はとある喫茶店の前で立ち止まり、

懐かしい目でその店を眺めた。

思い入れがあるようだった。

そしてまた歩き始めて、次は公園へ入っていった。

ブランコに座り、キィキィと音をたてて彼は遠い目をした。

やっぱり目からは涙が溢れていた…

そうして彼は家具屋、本屋といろいろな場所へ足を運んだ。

「どういうこと…?」

今度は思い入れがないようなビルの中へ彼は入っていった。

屋上まで行くと、景色がとても綺麗で私は彼から目を離した。

「すごい…この町はやっぱり見たことがある気がする…」

がしゃん…

振り向くと彼がフェンスをよじ登っていた。

「何してるの!!!」

急いで彼に捕まろうとするが届かない…

飛び降りる気!!??

「やめて!!死んじゃダメ!!!」

私は体が熱くなりふいにある言葉が出てきた。


「高史!!!!!!」


彼は私の方を向いた。届いた…


「美里……?」


み…さと?私?

彼は急いでフェンスから降りてきて、私を見つめる。


「美里!!!」


彼は私に抱きつこうとするが、すり抜けた。


「……美里だろ?……幽霊なのか?……」


幽霊…美里?その言葉を聞いたときある光景がフラッシュバックした。




『なんでそんなこと言うの!?』

私はさっきのアパートで彼に対して怒っている。


『美里…お前なぁ…なんでそう自分勝手なんだよ!?』

彼はため息混じりに言い返している。


『私のことなんか好きじゃないんでしょ!!』

感情にまかせて言った後に後悔している私がいた。


『なんだょそれ…分かった。もうお前なんか好きじゃねぇ。』

彼はテレビの方を向き、私の表情を無視した。


私はアパートを飛び出した。



思い出した。

死んだんだ。私…このすぐ後に事故にあって…

喧嘩したまま高史と別れたんだ……

あの喫茶店…よく2人で行ったよね。

あの公園ではブランコこぎながらいっぱい話しして…

2人で住んでたアパートの家具…あの店で買ったんだっけ…


「ごめん高史…私…あんなこと言って…」

涙がぽろぽろこぼれてきた。


「美里…俺が悪いんだ。ごめん…好きじゃないなんて嘘だよ。」

分かってる…分かってたはずなのに…


「うん…私だって…高史のこと…」


シュワァァァァ…


「「!!」」


体から光が放たれた。

あぁ…心残りがなくなったから…高史と最後に仲直りできたから

私は逝かなきゃいけない…


「美里…美里…いくなよ!!!」


ゴメン高史。大好きだった…

また生まれ変われたら…高史と出会えるかな?


「高史…ありがとう…死なないで、生きて。」


「うん…うん…美里、嫌だ!!!」


「幸せになって?ずっと見守ってるから。」


「あぁ…大好きだ…美里…」


「好きょ?高史…」


「美里……ありがとう…俺と一緒にいてくれてありがとう…」



私は何処へ向かうんだろう。

彼との思い出をかかえて…

でも、さみしくないよ?高史から大切な物をたくさんもらったから…

唐突に終わってしまいました…すいません。

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