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ある聖女の手記

 聖界歴1307年、秋、記す。


 巡礼中に立ち寄った山村、サルニにて魔族が出現。

 聖主の教えと御霊を伝える者として、その浄化に参加。

 サルニの聖所には御高齢の聖父様しかおらず、僭越せんえつながら一晩の宿をお借りした恩義を返す為にも、我が手により執り行う。

 今では非常に珍しい中級魔族の上に新月であった為、少々梃子摺てこずってしまったが、数刻後に調伏を完了。

 多少ながらも被害を出してしまい、我が身の未熟さを不甲斐なく思う。

 被害状況は軽傷者が数名、魔族出現点の側にあった農家の納屋が全壊、調伏点となった聖所の塀が半壊、及び前庭が半径3シン(1シン=約5メートル)、高さ1シン弱の規模で陥没した模様。

 幸いにも死傷者は出なかった。

 この時、この魔族は赤子を抱えており、最後まで手放そうとしなかった。恐らく何処かから奪い、食料にでもする心算だったのだろうと推測する。

 見た所、まだ生後数月ほど。健康な男児である。

 浄化中は恐怖の余りか、魔族に何らかの術でもかけられたいたのか泣きもせず、魔族の腕の中で身動き一つしなかったが、現在は元気を取り戻し、旺盛な食欲を見せて時折ひどく暴れる始末である。

 聖父様の厚意に甘え、そのままサルニに預けても構わなかったのだが、もしかするとこれから立ち寄る村や街に親がいるかもしれないと考え、身柄を預かる事とする。

 この身は若輩にして巡礼中の身であるが、これもまた聖主の与えたまえし試練に違いない。

 人間の赤子は流石に育てた事はないが、家畜ならば過去に幾度も世話をした事がある。何とかなるだろう。

 名がないと不便なので、仮の名として『エミリオ』と名付ける。

 尊敬する我が師の名を一部頂いた。万が一親がこのまま見つからなくとも、師のように強い人間に育つよう祈りを込めて。



 世に光を齎したまいし聖主よ。

 この憐れな赤子に祝福を与えたまえ。その行く末に幸多からん事を──。

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