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第14話. 繋がりより強固となる意思

(こっちの下級のハエどもは、なんとかいける・・・!焔の出力さえ維持できていれば俺たちでも戦える!)


 一方、ピエトロ、そしてトレロは残りし魔物に相対する。ヴェスパといえども、自慢の機動力を失い、動きの鈍った魔物との戦力差は、彼ら騎士2人が上回っていた。


(だが、アイツ──!あの馬鹿でかいヴェスパ“オークハンター”は尋常じゃねえ!その縄張り……オークの生首がある場所に立ち入った兵士は片っ端から蹴散らされちまった。ヤツはただデカいだけじゃなく、戦士として並大抵じゃなかった……!あのバケモンに、真正面から……!)


(これまで復讐なんぞ不可能だと心が折れちまっていたが、今なら、あのクソ野郎にやり返せるかもしれねえ──!)


 特攻の焔を浴び、狂い悶え殺意を剥き出しとする怪物は規格外の規模を誇る大鎚を大きく振りかぶる。それは天井の梁もろとも破壊しつつ、オルサスの脳天へと目掛け一気に振り下ろされた。


「オルサス!!」

 ピエトロの声が響く。


 鉄槌の衝撃が礼拝堂に響き渡り、振り下ろされし床は粉々に砕ける。そこに最早オルサスの姿はなかった。


「!!!」

 一瞬遅れてトレロが察知する。


 空中──


 巨剣──“ドラゴニス”を手に、オルサスは高く跳躍していた。

 鉄槌が振り下ろされた手前には、床に創られ敷かれた紅き結晶の塊。それはまるで、連なりしあばら骨のような、胸郭を彷彿とさせる構造体が組み上げられていた。


(シーネ、随分と器用じゃないか!弾力を持たせた構造──即ち能力で創ったジャンプ台……!!コイツなら、届く……!)


“キールレイド“──!!

 紅き”支える意思“を纏う分厚い巨剣が、上空から真っ直ぐ、渾身の力と共に垂直に振り下ろされる。


 大鎚を振り下ろした直後の頭を下げた姿勢。その巨体、通常の矢など通さぬ装甲を有するその魔物は、ヒトにより頭部に対する近接攻撃が食らわされる事が想定されていなかった。


 その一撃が余すことなく伝えられた事を示す鈍く重い音が轟き、響き渡る。


 そして間も無く、これまで数えきれないほどのガルフィス兵士を葬ってきたその巨大なる魔物は脳天を叩き割られ、崩れ落ちた。


(アイツ、や、やりやがった──!こっちも……!このままいけば!)


「!!」


 一斉に鳴り響く羽音。

 残りし魔物は、戦力差を察知し、紅の銀焔にこれ以上耐えきることが出来なかった。

 次の瞬間には一目散にその場を離れ、一斉に消え失せる。


「見ろ、奴ら撤退していくぜ!あの人間を舐め腐っていやがるヴェスパどもが!こんなところは見たことがねえ!」

「な、なんという逃げ足だ・・・。い・・・生き残ったのか、俺たちは・・・」


 安堵する2人に、焼かれ灰となったオークハンターを背にオルサスが近づく。

「トレロ、ピエトロ。2人とも良かった。無事で」

「オメーもどっかでのたれ死んでんじゃないかと内心ヒヤヒヤしたぜ。しかしなんだってんだそのデタラメなスキルは。バケモンには馬鹿げたチカラを、っていうことか?相変わらずマトモじゃねえよお前は。異常だよ異常!」

 ピエトロは早口で躊躇なく捲し立てる。


「おいおい、その辺に──」

(ピエトロ……そういやコイツ、身内に対してはわりと言いたい放題なヤツだったな。噛み付くべきでない相手に間接的に噛み付いてしまい、しょうもない損をしてきたヤツだ)


「・・・」

 姿を隠していたシーネが、姿を現した。


「うお!!?」

 ピエトロは驚き硬直する。

 村娘の衣装。しかしながら、その眼には命懸けで守り抜いた王女が持つものと同じ、血の色の様に輝く瞳。先程の戦いで目の当たりにした異能の力の主だと、2人はすぐに確信した。

 武力ではどうしようもない窮地を覆す程の力、だからこその失言による気まずい空気が流れる。


「す、すまない。こいつ・・・ピエトロは仲間に対しては、い、いつもこんな調子なんだ」

 トレロが切り出し、申し訳なさそうに彼女へと語りかける。


「トレロさん、知っています。ピエトロさんは面白い人だって、兄がよく言っていました」

 シーネはおかしそうにくすくすと笑ってみせる。

「お、おお・・・!?」


「はじめまして」


「私は・・・シーネ=カリナ。兄、アヴィオール=カリナの妹です」

「なっ!!!?」


「シーネ……!」

(いきなり、それを打ち明けるのか!)


 重要な意味を持つ真実。

 自らの特別なルーツを明かすと言う事はここガルフィスでは危険を伴うとされ、実際に兄は最後まで守り通してきた。

 それを自分から打ち明けることに、オルサスは一瞬驚きを覚えた。


(・・・いやむしろ、この状況では必然と言えるだろう。血を嗅ぎ分けるヴェスパ相手には血筋は隠しても無駄なんだ。それに──)


(俺たちは、今後の戦いに繋ぐために、瘴気を飛ばなくてはならない。全く得体が知れないよりかは、繋がりが見えているということが、俺たちの信頼になり、意思は強固なものになる。繋がるごとに俺たちは、そして彼女の能力はより強くなるはずだ)


「そ、それは・・・ヒジョーーにスバラしいおチカラ・・・です。ははは」

(まじかよ・・・!王女様と同じ輝きの瞳、そして魔法にしてはあのチカラは出来過ぎていた。さっきのは間違いなく“王家の力”、()()()()()だったんだな、団長!)


「あ、ああ、大したものだ。瘴気の中でもこの焔が消えないのは大きい。し、しかしこれをどうする?このままというわけにもいかないだろう。お、俺たちのランタンでも余ってしまう。保存する方法があるのか?」


「それならば、我々にお任せくださいませ」

 トレロはの問いかけに対し、身を隠していたもう1人が姿を露わにする。ゴブリン商人ペルッチョ、顔が広いだけあり、ここにいる者はその素性を既にを知っている。


「ペルッチョの旦那じゃねえか!」

「十分な量にどうやら瘴気に耐えうる特別な焔!コレだけあれば、必要とする場所に拡めることが可能です!ゴブリン商人の名にかけて、いざという時にこの焔を分け与えられる形にいたしましょう」


「相変わらずあったけえなおい。いいのかよ?」


「アストリアは何度も試練を乗り越えてきました。ヒトと手を取り合い助け合うことで乗り越えられるというのが我々ゴブリン族の答えです」


 ゴブリン商人は胸を張り、誇らしげに答える。


 (疑問は山ほどあるが、どうやら良い流れに向いている。これを使いながらみんなを探し出し、再びガルフィスの騎士団が集えば、きっと──。そして、シーネには今度こそ伝えるべき時だろうか。敵を討つあの化け物の事を──)


(・・・)


 ──オルサス達が居る教会、その外──


 或る建物の屋上に佇み、彼らを覗き睨む陰があった。


 それは、貴族の防寒衣装に身を包み、細身の長身の青年の様に見える姿。しかし、額には触角、背には翅をもつ人ならざる魔物の姿をしている。


(おいおいおい!んだよこれ!)


(あいつらを上の階に追い込み別の建物に飛び移って逃げたとこを1人ずつ消してやろうと思ってたが──)


(人間が教会を焼いてんじゃねーーよ!床燃えてんじゃねぇか!!女の子が危ねえだろ!!)


(つーか・・・なんだあの色は・・・!?放っとくとやべえ気がする)


(()()()()か!?ここで!)

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