第五話
机上の空論⸺机の上で考えただけの、実際には役に立たない意見。
青年館出版【雑学・言葉の意味と使い方】より引用
こんな粗雑な計画で、上手くいくはずがない。
岳志は興奮気味に話していたが、俺はずっと不安を抱えていた。明らかにガバガバ過ぎる。
まず、合鍵が使えなかったら?その時点で計画は終わりだ。使えたとして、ターゲットに勘付かれたら?首を絞めた時に誤って殺してしまったら?スーツケースに入らなかったら?運んでる間に人に会ってしまったら?スーツケースの中でターゲットが目覚めてしまっていたら…?
この計画は成功しない。
あまりにも、不確定要素が多すぎる。
途中で降りると言うべきか…?いや、あの気弱で情けない悠斗ですら乗り気なのに、ここで降りたら俺が弱虫のレッテルを貼られる。それは避けたい。
だけど、何か一つでも予定通り進まなければ即終わるこの計画に加担する勇気があるのかと問われれば、今の俺にそんな勇気はない。
クソ…なんで俺がこんな事に巻き込まれなきゃいけないんだ。こんなの完全犯罪とは程遠い、バカな中学生のお遊びじゃないか。……いや、そもそも俺が貸した本のせいでこうなってるのか。岳志のやつ、あんなに完全犯罪に興味を持つなんて思わなかった。
俺もいつかは完全犯罪してみたいと、あれを読んで思っていたのは事実だ。あの本には結局出来ないと暗に書かれていたが、出来ないと言われたらやってみたくなるのが人間の性だろう?もっと小さな犯罪であれば、俺だってきっとやってた。
岳志のやつ、誘拐殺人なんて…一体何を考えてるんだ?




