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第2話 – この気持ち、消せない?!

高校二年生のミナセ・カズキは、平穏で普通の生活を望んでいた。

しかし、ある日その願いはあっけなく砕かれる。

なぜなら、彼の妹であり、可愛くて成績優秀で、しかも男子に大人気のミナセ・キサキが、同じ高校に入学してきたからだ!


キサキは兄に対して異常に距離が近く、優しく、そしてやたらと甘えてくる。

それを見た周囲の生徒たちはすぐに誤解し始める。


「え?付き合ってるの?」

「妹って言ってるけど、あれ絶対彼女だろ?」

「カズキって妹と恋人関係なの!?」


必死に距離を取ろうとするカズキだが、キサキはその様子に気づかない(もしくは気づいててわざと?)。

さらに悪いことに、彼の心臓はキサキの笑顔を見るたびにドキドキし始めてしまう。


忘れ去られた過去の想い、心に秘めた感情、そしてどんどん増えていく誤解と噂…。

カズキは自分に問いかけることになる。


「もしかして俺…妹に恋してるのか?」

朝のミナセ家は昨夜と同じく、穏やかであたたかな雰囲気に包まれていた。カズキはイチゴジャムのトーストを口に運んでいると、キサキが台所から現れた。彼女はきちんとまとめた髪に、完璧にアイロンのかかった制服を着て、熱々の緑茶を二杯持っていた。


「カズキ兄、まずお茶を飲んでね。慌てて食べるとお腹にガスが溜まっちゃうから」


カズキは時計を見る。07:01。


「まだ早いけど…なんかもう疲れたな…」


「だって昨日からずっと私のこと考えてたでしょ?」キサキは可愛い目でにじり寄り、カップを兄の前に置いた。


「勘違いすんなよ」


「えへへ〜でもお兄ちゃん顔、赤いよ…」


カズキはため息をつく。新しい一日、変わらない問題。


その日の学校はいつもより賑やかだった。キサキは男子だけでなく女子からも大人気。だがカズキはただ「普通」の生活が戻って欲しかった。目立ちたくなかったのだ。


しかし運命は彼に試練を与えようとしていた。


昼休み、キサキが教室に入ってきた。うさぎ型のご飯と桜の形に並べられた野菜を詰めたお弁当を持って。


「カズキ兄、今日も一緒に食べようよ!」


「やめてくれ…。毎日これやられたら誤解されるだろ…」


「誤解されてもいいの。私はただ、兄と食べたいだけ。ダメ?」


「社会通念的にはダメだな…」


「でもお兄ちゃんの気持ちには関係ないでしょ?」


カズキは絶句した。


そこへ男子生徒が近づいてきた。


「えっと…カズキさんの妹さんですよね?俺、2-Aのユウヤです。一緒に…」


「ごめんなさい」キサキが笑顔で遮った。「毎日お兄ちゃんと食べるって約束してるの」


ユウヤは口ごもりながら退散。


「なんだよ…酷いな」


「正直なだけ。それに、カズキ兄は私が作ったもの、好きでしょ?」


「そんなこと言った覚えないし!」


キサキはまたたまご焼きを兄に差し出した。


「ハイ、あーん♡」


「やめろ!みんなの前で!」


「でも兄は喜ぶでしょ?」


教室はどよめき、ハルトは呆れ顔で言った。


「お前、完全にヤバい世界に住んでるな」


授業が終わり、カズキは図書館で宿題をこなしていた。静かな一角で集中しようとしていたが……すぐ横にキサキが来た。


「カズキ兄…」


「またお前かよ……何してんだよ?」


「一緒にいたいんだもん。ここの本の匂いも好きだし」


「でもここは図書館だぞ、静かにしろ」


「静かにしてるよ。ただ一緒に……ただここにいるだけ」


カズキは数学ノートに集中しようとするが、隣のキサキが彼の集中を崩す。距離が近すぎる。彼女のぬくもりが感じられる。


「キサキ…これ以上続けたらまた誤解されるぞ」


「私は気にしない…兄が私を近くにいてくれるなら」


カズキは顔を背ける。だがその優しい瞳が彼を見つめていた。


「許してるわけじゃない…ただ、ケンカするのが面倒なだけ」


「へぇ…それでも私をそばにいさせてくれるんだ…兄、私のこと、本当は――」


カズキは応えず、その場にいた。


数日が過ぎ、キサキの人気は増すばかり。可愛い顔立ち、成績優秀、社交性も抜群。教師やクラスメイトにも好かれていた。


しかしカズキにとっては、毎日が試練そのものだった。心が乱れ、感情がぐちゃぐちゃになっていく。


ある夕方、カズキは屋上で一人悩んでいた。ここは静かで、彼の逃げ場だった。


「あたし、来るってわかってたでしょ?」


聞こえた声に振り返るまでもなく、キサキだとわかった。


「キサキ…少し離れててくれ…考えたいんだ」


「離れられない…もしあたしが兄を一人にしたら…兄が私から離れていきそうで怖いの」


キサキはそっと隣に腰掛けた。風が二人の髪をそっと揺らす。


「分かってるよ、この気持ちが変だって…でも、偽れないの。毎回“普通の妹”として過ごそうとすると、何かが壊れる。兄の手を握って、声を聞いて…そのとき、生きてるって思ったの」


カズキはうつむき、胸が押しつぶされそうだった。


「キサキ…これはダメだ。世間は俺たちを受け入れない。お前が傷つく…俺たちが辱められる」


「傷つけられたって構わない。あたしは世界なんか関係ない。兄といたいだけ」


「……俺も…同じ気持ちかもしれない」


その言葉にキサキは驚き、二人の視線が絡んだ。時間が止まったようだった。遠くにカラスの鳴き声が聞こえる。


「カズキ…」


キサキが唇を寄せようとしたその時、カズキは立ち上がった。


「もう…これ以上はダメだ。距離を取ろう。考えたいんだ」


キサキは制服の裾をぎゅっと握りしめ、ゆっくりとうなずいた。


「兄が落ち着くなら…私は待ってる。でも、兄を愛する気持ちは消さない」


その夜、カズキはバルコニーに立ち、星空を見上げた。微かな星明かりが心の奥を照らしているようだった。


「これが恋なのか…ただの一時の気持ちなのか…。でも…なぜお前を見ると胸が締めつけられるんだ…」


目を閉じ、キサキの顔、声、笑顔が浮かぶ。彼は心の奥で悟っていた――どれだけ否定しても、既に自分は「普通」の兄ではなくなっていると。



次回のエピソードをお楽しみに!

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