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大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる  作者: takemot
第5章 大人で子供な師匠のことを
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最終話 大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる

「ふああああ」


 口から飛び出す大きな欠伸。


 結局、あの後僕は一睡もすることができませんでした。告白に失敗したショックをズルズル引きずり。ふと気がつくと、師匠の綺麗な寝顔に吸い込まれそうになり。


 断言できます。あの状態で寝られる人なんて、世界のどこにもいないでしょう。


 ちなみに、いろいろ耐えることができず、師匠のほっぺを指で数回つついてしまったのは秘密です。


 柔らかかった。


「おっと」


 感慨にふけっている場合ではありません。今は料理に集中しないと。


 湯気が漂う鍋の中。クリームシチューがコトコトと優しい音色を響かせています。小皿に取って、少し味見。口に広がるミルクと野菜の甘み。


 うん、美味しい。けど、もう少し煮込んだ方がよさそう。


 ゆっくりとシチューをかき混ぜ続ける僕。底の方が焦げ付かないよう、時折火加減も調整。


 師匠、喜んでくれるといいな。


「でしくん、おはよー」


「あれ? 師匠、今日は早起きですね」


 なんと珍しいことでしょう。まだ朝ご飯を作り終えてもいないのに、師匠が部屋から出てきました。欠伸をしながらグシグシと目元を擦る彼女は、見るからにまだ寝足りないといった様子。いつもの師匠なら二度寝を決め込んでいたはずなのに。


「なんかね。夢の中で、弟子君がシチュー食べてたの」


「ほう」


「で、頂戴って言ってもくれないの」


「ほうほう」


「しかも、いたずらっ子みたいにほっぺツンツンしてくるし」


「…………」


「だから、目が覚めた時、シチュー食べたい欲が高すぎてさ。起きてきちゃった。ふああ」


「ナ、ナルホドー」


 いやー。不思議な夢ですね。全く。はっはっは。


 そうこうしているうちに、シチューも完成。いつも使っている木製のお皿にシチューをよそい、パンの入った籠とともにテーブルへ。


「キター」


 キラリと輝く師匠の瞳。先ほどまでの眠そうな姿はどこへやら。


「じゃあ、食べましょうか」


「うん。いただきまーす」


 言うが早いか。師匠は、スプーンですくったシチューを口の中へ。


「は、はふはふ」


「出来立てなんですから、ゆっくり食べてください」


「ん。美味しい! さすが弟子君!」


「はは。ありがとうございます」


 いつも通りの日常。相変わらずの師匠と僕。


「弟子君、弟子君。今、素晴らしい提案が思いついたんだけど」


「お仕事さぼる以外でお願いします」


「…………」


「…………」


「むぐぐぐぐ」


 昨日の出来事が、僕たちの間に何を生んだのか。それはまだ分かりません。


 けれど。


「はいはい。ご飯食べ終わったら、今日の仕事の確認しますよー」


「いーやーだー」


「はあ。じゃあ、仕事終わりにお菓子でも買います?」


「その話詳しく」


 大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。


 これが二人にとっての幸せだったら、なんて。


「本当に師匠は相変わらずですね」


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