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魔王の儀式 ~ギルドで副業してる皇城の下女ですが、突然第三皇子から告白されました。そして断りました~  作者: しんとうさとる
第2章 街の人たち

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6-4 誤解されているような気がする




 子どもたちとしこたま遊んで、お昼ご飯も一緒に食べて私たちはようやく帰路についた。あー、疲れた。やっぱ子どもは元気だね。無限に体力あるんじゃないかって本気で思うよ。


「はは、確かに。でも楽しかったし、気分もリフレッシュできた。君だってそうだろう?」


 まぁね。じゃなきゃお金だけ渡してハイ、サヨナラすればいい話だからね。

 そうは言いつつもアルフも疲れたんだろうね。人も少ないってこともあって魔導具を外して肩を解しながら孤児院の話をあれやこれやしてたんだけど、ちょうどポータルのある建物から誰かが出てきた。そしてその人はこちらを見るなりギョッとして立ち尽くしてた。


「で、殿下……?」


 出てきたのは先日見かけたユンゲルス男爵だった。そっか、この人の領地だったのか。

 見ればアルフが「あちゃー」ってな感じで天を仰いでた。あーあ、油断しちゃったね。私が他人事みたいな顔をしてるとアルフがジトッとにらんだ。いや、自業自得っしょ。

 そんな私の心を読んだのかしらないけど、アルフはため息を一つつくとすぐに魔導具をつけて、そして笑みで取り繕って近寄っていくと男爵はその場に慌ててひざまずいた。


「失礼致しました、殿下。いらっしゃるとお教え頂ければお迎え致しましたのに……」

「こちらこそ黙って訪問してすまないね、男爵。苦境を訴える卿の領地がどのような状況か、実際のところをこの目で見ておきたかったんだ」


 アルフの切り替えの早さはさすがだね。そして私に付き合って来ただけなのに口からでまかせがこうもペラペラ出てくるのはさすが皇族の血としか思えないよ。やっぱ口が上手なのは皇族・貴族の必須スキルだよね。


「でもちょうど良かった。急な申し出で申し訳ないが、このまま町を案内してもらえないだろうか? リナルタ、君も構わないよね?」

「殿下の御心のままに」


 下女モードで回答すると、アルフがちょっと残念そうな顔をした。いや、だって男爵の前なんだからしかたないっしょ。それが嫌なら、さっさと皇都に帰還すればよかったのに。


「そりゃそうだけど……」

「殿下、男爵様がお待ちですよ?」


 しとやかな笑みで促してあげると、男爵にバレない程度に小さなため息をアルフが漏らした。

 それからはユンゲルス男爵に町を案内してもらった。

 孤児院に向かう時と違って、今度は町の外周部に沿う形でグルリと回っていく。皇都とは違って農業や畜産が主流らしく、どこまでも牧歌的な雰囲気の景色が続いてた。うーん、いつかこういうところでのーんびり生活するのもいいかもね。


「案内してはいるものの、何もお見せできるものがなく恐縮です」

「とんでもない。こうして民が穏やかに過ごしている光景だけでも私には価値があるものだ。皇都は生き馬の目を抜くような連中ばかりだからね」

「ははは、それにはご同意です。皇都の貴族方とお会いすると肩が凝ってしまいます」


 最初はガチガチに緊張してた男爵だけど、今はアルフとの会話も弾んでる。

 相性は悪くないみたいだね。ガタイもガッチリして実直で、腹芸も得意じゃなさそう。たぶん戦場で功績を上げて授爵したタイプかな? 貴族社会で生活するのは疲れそうだよね。私はお貴族様よりよっぽど男爵みたいな人の方が好きだけど。

 そんなことをつらつら考えつつ二人の後ろを歩いてたんだけど、チラチラと男爵様がこちらを見てくる。しかもこれみよがしって感じじゃなくて「聞いちゃダメな気がするけど、どーしても気になる!」みたいな。うん、やっぱ腹芸とかできなさそうだね。


「彼女のことが気になるかい?」

「え? え、ええ、その、まぁ……」

「なら他ならぬ男爵の疑問だし教えてあげるよ。実は彼女は僕のこいび――ぐふぉあっ!?」

「単なる下女です」


 後ろからアルフの脇腹に拳を突き刺して黙らせる。こら、疑うのが苦手そうな男爵様に嘘を吹き込んじゃダメでしょ?


「そ、そうか。しかし噂では――」

「恐れ多くもアルフレッド殿下には『多少』の興味を持って頂いておりますが、それ以上でもそれ以下でもございません。殿下の将来のためにも誤解なさらぬようお願い致します」

「……本当ですか、殿下?」

「ぐ、ほ……ま、まぁ間違ってはいないよ。今のところは、という話だけでゅぉ!?」

「すみません、脚がすべりました」


 アルフの脳天に今度はかかと落としを食らわせる。だからさぁ、変なこと言うなっての。


「……く、くくく、はははは!」


 男爵様の方は私たちのじゃれ合いを見てしばらく唖然としてたんだけど、徐ろに笑い声を上げ始めて、終いには大爆笑になった。そりゃそうか。ついついいつもの感じでやっちゃったけど、下女が皇子を足蹴にするなんて光景、そうそう見られるもんじゃないからね。


「なるほどなるほど」男爵様がしたり顔でうなずいた。「お二人のご関係は理解致しました。ご貴族の令嬢方にご興味を示されないはずだ。殿下がそういった女性を好まれるとは……いや、これ以上の詮索は野暮ですかな?」

「なんだか……」

「すごく誤解されているような気がするんですが」


 ま、いいや。とりあえず詮索をやめてくれるのであればツッコまれて嘘を重ねる必要もなくなるし助かるよ。アルフが「僕は別に被虐趣味があるわけじゃ……」なんてゴニョゴニョ言ってるけどスルー。そして改めて町の風景を眺めてみて、ふと気づいた。


「ずいぶんと、戦闘の傷痕が多いですね」






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