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魔王の儀式 ~ギルドで副業してる皇城の下女ですが、突然第三皇子から告白されました。そして断りました~  作者: しんとうさとる
第1部 皇城の下女兼ギルドのお仕事

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5-3 私の趣味、知ってる?




「……! ギャア――」


 そりゃさぞびっくりしただろうね。でもたいそうな悲鳴を上げてもらっちゃぁ困るの。

 口を塞ぎベッドに力付くで押し付けたんだけど、隣のハンナは眠りが浅かったみたい。一瞬だけ漏れた悲鳴に反応したのか、むっくりと体を起こした。


「なによ、フリーダ。まだ夜中じゃ……り、リナルタ!?」


 私の姿を認めた瞬間一気に覚醒したらしく、寝ぼけ眼が一気にギン!って見開いた。そのまま大声を上げられそうな感じだったから、夕食の時にくすねてた食事用のナイフを投げつけてハンナの真横に突き刺してやると静かになった。うん、宜しい。


「二人とも。深夜なんだからお静かに。ね?」


 そう言うと、二人ともおしっこチビリそうなくらい震えて頷いた。理解が早くて結構。


「じゃあ始めよう。こうしてこんな夜中に私がわざわざ来たか。用件は分かってるよね?」

「な、なんのことだかさっぱりよ……?」


 あら、とぼけちゃう? いや、あっさり認めてくれるなんて期待もしてなかったし、そう思ってこっちもちゃーんと準備してるから安心して。

 ポケットから琥珀色の石を取り出して、魔力を込めて転がす。すると石から鮮やかな光が飛び出して空中にとある景色が映し出された。その瞬間、二人の顔色が一気に青ざめた。

 そりゃそうだよね。だって――自分たちの犯行現場(・・・・)がハッキリ映し出されてるんだもん。


「……」


 私が投げたのは記録石ってやつで、設置しておけば一定時間見える範囲を記録できるって代物。んでそいつからは、フリーダとハンナが宝石とか大量の金貨が入った袋を私の部屋に隠して笑い合う様子が上映中ってわけ。そりゃ顔も真っ青になろうってもんだよ。

 ま、この映像自体は完全なる捏造なんだけどね。二人が忍び込むタイミングで記録石をセットしてるなんて、そんな都合の良いことあるはずがない。記録石はお高いんだし。

 この記録石と映像は私が「魔法」で作り出したものだ。だけど全くの嘘っぱちってわけでもなく、つまり実際にこの映像と同じことをやってたってわけ。おかげで半日魔法が使えない程度で済んだ。これが事実無根な映像だったら年単位で魔法が使えなくなっちゃうところだけど、リズベット様がフリーダとハンナの事を教えてくれたから助かったよ。


「さて、嘘っぱちで人を牢屋にぶち込んでくれたわけだけど……覚悟はできてるよね?」

「ご、ごめんなさい!」

「ゆ、ゆゆゆ、許して!」


 許す? ははは、ずいぶんと面白いことをおっしゃるお二人だこと。まさか、謝ったら許されるなんて本気で思ってるわけじゃないよね?


「明日、わ、私たちの勘違いだったって証言するから!」

「そ、そうだ! 私たちが持ってる宝石やお金も分けてあげる! だから、ね? お願い!」


 ふぅん。それってつまり、私に本当に泥棒になれってことかな?


「別にいいじゃない! どうせ貴族様たちの贅沢に使われるお金よ? 少し私たちがおこぼれに与ったって問題ないってば」

「大丈夫、大丈夫よ。私たちと貴女が黙ってればどうせ分かんないって。それに私、知ってるんだから。アンタがギルドで働いてるの。お金が必要なんでしょ?」


 はぁ……助かりたいんだろうけど、この期に及んでこんな提案するなんて、まったく。


「なるほど、面白い提案だね」


 笑顔で二人の肩を一度ポンと叩く。勘違いした二人の顔に安堵が浮かんだ。


「ところで二人ともさ。私の趣味、知ってる?」

「……? い、いいえ?」

「なら教えたげる」


 だけど次の瞬間、私は胸元をつかみあげていた。息が掛かるほどの距離で告げる。


「――アンタたちみたいなクズをぶちのめすことだよ」


 そして私は拳を振り抜いた。






 気が済むまでフリーダとハンナをボコボコにした後、私は二人を皇城一階の通路内に吊るしておいてあげた。首にはちゃーんと「私たちが盗みました」って書いたプレートを掛けてね。

 もちろん二人に見せた記録石の映像は足元で絶賛上映中。今頃は決定的捏造証拠映像が、皇族・貴族・使用人問わず多くの人に鑑賞されてる頃かな。


「あの二人のことだから、どうせ『リナルタがやりました!』って騒ぐんだろうけど――」


 でも、こうして牢屋の中でお茶をすすってても今まで誰も来てないって事は、みんな相手にしてないってことだよね。記録石の証拠はあるし、私は牢屋にいて出られるはずもないからね。一介の下女に鉄格子をひん曲げる力があるなんて思いもしないだろうし。


「……ん?」


 とまあ、そんな感じでのんびりまったりしてると、門番さんの恐縮した声が聞こえてきた。なんか昨日も同じようなことがあった気が……お付きの下女がボコボコにされたリズベット様あたりがまた嫌味と愚痴でも言いに来たかな?


「リナルタ! 無事か!?」


 だけど入ってきたのは血相を変えたアルフだった。あ、おはようございます。


「……なんかずいぶんと馴染んでるね?」

「まあそこまで劣悪ってわけじゃないですし?」


 ちゃんと屋根はあるし、食事は黙ってても出てくる。別段文句はない。そう伝えるとアルフは脱力して肩を落とした。


「急いでここに来たけど、君を見てると損した気分になるよ」

「もしかして心配してくれたんですか?」

「当たり前だろう?」


 アルフが少しむっとした顔をした。ん? どうして怒るんです?

 私が首を傾げているとアルフが何か諦めたみたいにため息をついた。そして門番さんから鉄格子の鍵をもらうと、そのまま部屋の外に出るよう命令した。

 地下牢にアルフと二人になる。彼の手で鍵穴に鍵が差し込まれ、カチリと音が響く。ギィ、と錆びた鉄格子が悲鳴を上げて扉が開いた。

 次の瞬間――私はアルフに抱きしめられていた。ちょっと、突然何してくれるのさ。思わず脇腹に拳を突き立てそうになったけど、それは止めておいた。

 なぜなら、私を抱きしめるアルフの腕が震えていたから。


「……アルフ?」

「すまない……」


 何をそんなに怖がってるのか。考えてみても私にはアルフの心中を推し量ることはできない。けど私なんかを抱きしめることで落ち着くなら、少しくらい我慢してあげようか。





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