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綻び

「なんだ、その破損に俺の存在は含まれてなかったんだ。運悪いな」

「遺言はそれだけか?」

 胸ぐらを掴んだままゴーストノートを道に叩きつけてプラグインを発動させた。コンプレッサーで彼の手足に圧をかけて押さえつけ、イコライザーで手際良く腹部に穴を開ける。

「気が早いなあ、まだ壊さないでくれよ。記憶の破損は人格の欠如なんだろう、なあ?俺は失いたくないよ」

「それは俺もあの地下で散々アディサリに言ってきたんだ。でも話が通じなくてさ。……なあ、この腹ん中のパッチ、こことここ、付け替えたらどうなると思う?」

 当然彼は壊れる。修復できるかもしれないが、一体誰がこんなところへ助けに来てくれるというのだろうか。話を聞くそぶりを全く見せなかったからか、彼はついにほんの少し焦り出して呻く声と共に俺の手を掴む。眉を八の字にしつつ笑顔を見せた。

「何か聞きたい情報はないのか?」

「いらない」

「待てよ、なんだって答えてやるさ」

 一瞬目を合わせ無視して作業を始めると、ゴーストノートは勝手に情報を吐き出した。

「複製品、君の複製品がイカれそうなんだ」

「……は?だからなんだよ」

 複製品とは俺の性能をコピーした機械のことだろう。地下に監禁される何十年か前に突如博音学会へ連れて行かれ、突如性能をコピーされた。その後数週間の監視を経て野に解き放たれた、なんてことがあったのだ。そんなことを思い出しながら手を動かす。まるでタイムリミットかのように、かちゃかちゃと内臓音が反響する。ゴーストノートの発声が荒れ始めた。

「学会が動き出そうと縺てる、代替品じゃ厳しいほど患者が増えて縺?※」

「……」

「君を捕獲する豬√lになってきている。一部の学莨壼藤縺か知らない情報なんだ」

「ただコピーを取らせたら済む話じゃねえか」

 少し手を止めるとゴーストノートの発声が落ち着きを見せる。

「いいや違う、"コンソルジャーとは言え"本来人の複製品を作るのはアディサリにとって禁忌だ。以前禁忌を犯したヤツらは粛清されたんだ」

 コピーを取っただけで粛清されただと?話が噛み合わないし、アディサリにそんなタブーがあると聞いたこともない。

 ……俺はいったい、何をされたのだろう。本当に性能のコピーを取られただけなのだろうか。丁度施設へ連れていかれてからの記憶が所々抜け落ちている。

 ゴーストノートは続けて言った。

「君、今度は四年じゃ済まないよ」

 酷く人間性を否定されたような気分だ。

 頭を抱えようとしたが指が液体で汚れており、手の甲をこめかみにつけた。ゴーストノートが何を言いたいのか透けて見えて、思わず笑いが込み上げる。

「は、ハハ!クソ、俺を、俺をなんだと思ってやがんだあの連中は。コンソルジャーになら何したって良いとでも思ってんのかよ」

 どのような扱いを受けてきても耐えてきた。関わらないようにわざわざ距離を置いた。それなのに、大した攻撃をしたわけでもないというのに自由をも奪われるとなれば。

 その瞬間パキと嫌な音がなった。

「おい今何に亀裂が入ったんだ?」

 彼は自身の中身の何かが損傷したように思ったのだろうが、今の音は俺のコアが損傷した音だ。その時テルムとモーグの顔が過ぎった。俺を変えたのはアディサリだ。しかし、また変えようとしているのもアディサリだった。その事実がコアの損傷をヒビまでに抑えたようだ。

 俺はあの2人のことをどう思っているのだろう。彼らはアディサリだ。憎き種族、俺を都合の良い機械としか思っていない、俺の事情なんて考えるだけ無駄だと言うかのよう、そのくせ何もかも難癖を付けては俺を見下す種族……そうだったろうか。会ったのはたったの2回だ。なのに、他の誰よりも崩壊のストッパーとして脳裏に過ぎる。アディサリだ、アディサリなのに。

 力を緩めてしまったからか、ゴーストノートが拘束から抜け出してしまった。

「やめておいた方がいいぜ」

「……?」

「お前の腹の中に仕込んでおいた。俺を嗅ぎ回るような計算を始めたら、俺のプラグインが作動する。解錠はお前には無理だ」

「そりゃ困る、君に対しての依頼があまりにも多いんだ。今放棄したら依頼主に探し出されて壊されるよ」

「お前本当に面白いな。人の不幸を食い物にしてるってのに、呆れるよ。覚悟が1ミリもねぇんだな。で、誰からの、いやどの組織からの依頼なんだ?学会だけじゃねえんだろ」

「……アディスフォリッジ」

「アディスフォリッジもか。まあ複製品の件で動き出すだろうとは思ったけどよ」

 アディスフォリッジは博音学会と取引を行いたいのだろう。俺と言う金のなる木を使って、持久性の低い劣化版コピーを高額で売りつける気だ。そうすりゃ学会は損をするものの禁忌とやらを犯さずに済み、アディスフォリッジは大儲けできる。

 指の装甲にヒビが入るほど手を握った。どいつもこいつも嫌になる。

「おいゴーストノート」

 彼は無言のままこちらをじっと見る。

「俺の言う通りに動け。そうすりゃプラグインを一つずつ解除してやるよ」

「ハハ……何個ついてるんだい?」

「言うと思うか?」

 ゴーストノートの不気味な笑顔が初めて崩れた。

「さて、返り討ちにしてやろうじゃねぇか」

 人差し指と中指に挟んだ黒いパーツを持ち上げて睨みつけた。

補足

・ゴーストノート

ドラムの打ち込みなどでよく使います。うっっっすらスネアの音を増やして入れていたりして、音楽に深みや立体感を出します。これがあるか無いかで結構なテクニックの差が生まれるんですよね。

この世界では聴こえるようで聞こえない幽霊音符として忍者のような情報屋になってもらいました。


・見た目と年齢

ソルたちの見た目は26~27歳程度ですが、結構な年数生きています。本人たちは脳細胞の老化、というより劣化で最終的に滅びます。

彼らにとって死は壊れることですので、脳細胞の劣化以外に部品の回路のショートでも死に直結します。

生殖器に関して、ソルだけ少し特殊になっています。

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