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邂逅

Skebでターミナルノイズの素敵なSSをいただいたので、創作意欲がぶち上がりちゃんと邂逅シーンを書こうと思いました。

急いで書いたため荒い部分が多いです。後々加筆すると思います。

「……」

 彼は音を鳴らした。静かに、そして煩く。


某スラムの上層

 人工光の夜が辺りを薄暗く照らす。かつては月というものがその役割を担っていたのだと、今を生きる者は多種多様な手段で知り得る。

 この日は弟のモーグと共に巡診を行っており、丁度研究所へ帰還しようと歩を進めていたところだった。

「あれは……」

 幼いF型(女型)のアディサリが研究所を覆う巨大な壁に背を預けて座り込んでいる。アディサリとは私たちの種族名だ。

 駆け寄ってすぐさまモーグと診察を始めた。

「音割れ病を患っている」

 モーグはぽつりと言葉をこぼして沈黙した。

 遠くから重機がゴウンゴウンとその巨体を動かす音を響かせている。

 二人して身動きを取れずにいたのには理由がある。ロストサウンドの不足、つまりは処方薬が足りない。私たちが音割れ病に感染した際、ロストサウンドが無いと非常に危険なのだ。

 座り込んでいたF型のアディサリは安心しきった表情を浮かべている。

「姉さん、彼女をここで放置するともう手遅れになる」

「けど」

「姉さんはきっと後悔するよ」

「……」

 もし、モーグが感染してしまったら。そんな言葉が頭を支配するが、それらを振り払ってロストサウンドを取り出した。それを患者に処方すると彼女は穏やかな表情で礼を言った。

「どういたしまして。ここから北に区間エレベーターがあるから、この紹介状を持って上層の博音学会へ向かってね」

 彼女の回路を介して紹介状を送信し、壁へ向かう姿を見送った。ロストサウンドの効果で動けるようになったものの、足取りは酷く不安定だ。

「今はまだロストサウンドの効果で保つけど……」

「大丈夫だよ姉さん、十分時間は稼いだよ」

「"コンソルジャー"さえいてくれば」

「きっと、アディサリ(私たち)のいないどこか遠くへ言ってしまったんだね」

 思わず俯いてしまった。

「アディサリは、博音学会は罪を自覚すべきだわ」

「……!姉さん!」

「え?」

 壁の角からユートピアのAI兵器、すなわち敵が土埃を舞わせながらゆったりと顔を出した。姿を捉えようとライトがこちらを照らし、暗順応しきった瞳に刺激を与える。やつが本格的に攻撃を開始する前にモーグとともに駆け出した。

「この型、なんでこんな層にいるの!」

 自らの波形を引き出して応戦するが、ビクともしない。間違いない、この型はロストサウンドでしか倒すことが出来ないが、このとおり先程使い切ってしまった。

 私たちの一歩とユートピアの一歩に差がありすぎてか、すぐさま追い詰められてしまった。

 背後には中層のスラムが広がっており、落下すると厄介なことになるだろう。四面楚歌とはこのことか。

「姉さん!」

「きゃっ」

「モーグ!」

 今、モーグがユートピアの攻撃を直接受けてしまったのではないか。そう考え続ける暇もなくともにスラムの屋上へと落下してしまった。

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