二人だけの旅行(二日目)
次の日の朝になった。最初に目覚めたのは恵那だった。恵那は眠りから覚め颯太の方を見た。颯太はまだスヤスヤと眠っていた。そんな颯太の寝顔を眺めながら起き上がり朝日を浴びた。
窓から太陽の光が差し込み恵那の眠気を覚ます。そして机の上には昨日買ったアシカのぬいぐるみが出迎えてくれた。
恵那はアシカのぬいぐるみの前まで行きアシカのぬいぐるみに「おはよう。」と話しかけていた。
そして颯太を起こさないよう静かに歩きシャワーを浴びた。朝のシャワーは少し暑めのお湯で浴びるのが恵那の日課だった。シャワーを浴びながら今日行く神社のことを思い浮かべていた。恵那はこの神社に好きな人とずっと行きたがっていた。神社のトップであるこの神社に台少なそうたと行けることが本当に嬉しかった。
シャワーを浴び終えてメイクをしている途中で颯太が目がさめた。颯太は寝起きの声で「恵那ちゃん起きてたのね。おはよう。」と話しかけてきた。
恵那は颯太の寝起きの声が好きだった。まだ頭が起きているかいないかわからないくらいの思考回路で喋る颯太は恵那にとって可愛く見えた。そして恵那にしか見せない姿なので恵那はそれを堪能することができた。
颯太が立ち上がり準備をしているうちに恵那もメイクを進めていた。今日のメイクもバッチリに仕上げこの日も楽し無事を意気込んでいた。
「恵那ちゃんメイク終わったんだね。俺も準備できたよ。」
「うん。私もバッチリ決まっているよ。」
「よし。それじゃ行こう。」
そう言って二人は旅館を出て車に乗り込んだ。
宿から数十分走らせたところに神社がある。二人は最初外宮からお参りしようとしている。この神社は外宮から回るのが慣わしとなっているためそれに従うことにした。
車の外には様々な自然が映し出されていて二人は眼福だった。
「海と山の二つの景色が混ざり合って幻想的だね。」
「うん。山と海の荒々しさと穏やかさ両方の面が見れるね。」
「荒々しさ感じる部分あった?」
「うん。波を見てそう思ったよ。」
「波も穏やかじゃん。颯太くんの心が荒々しい説。」
「その説は無きにしも非ず。」
二人が風景を楽しみながら道を走っていると大きな鳥居が見えてきた。鳥居は堂々としつつも俗衆と神の世界との境界としての入り口も示しているようだった。
「見えてきたね。大きな鳥居。ここを潜ったらもう神様の世界だね。」
「そうだね。鳥居見ただけで神様のパワーを感じるよ。」
「そうよね。ちなみに外宮には天照大神の食事を司る豊受大神と言う神様をお祀りしているよ。天照大神を祀ってから数百年経った頃に当時の天皇陛下の夢に天照大神が出てきて豊受大神を祀ってほしいと言われて立てたのが始まりらしいよ。」
「なるほどね。外宮が後にできたんだね。
「そうだよ。」
恵那から外宮ができた由来を聞いた颯太は神様も食事を大事にするのだと感心した。確かに食事は生命を司る大事な行為であり生きていくには食事をしないと生きていけないものなので大事さはわかっていた。
恵那の話を聞いて改めて食事は大事にしようと思った。
そして二人は外宮についた。駐車場につき車から降りると爽やかな空気が感じられた。
「空気がすごい気持ちいいね。」
「颯太くんも感じた?車から降りた瞬間空気が普段感じるものと違ったよね。この先にある橋を渡るとさらに空気感が違ってくると思う。」と恵那が言うと橋の方を指さした。
確かに橋の向こうから神聖な空気が伝わってくる。
二人は橋を渡り境内に入っいく。橋を進んでいくごとに空気が澄み渡り神聖なパワーが強くなっていくことがわかった。
「この橋を渡ると境内に入っていくよ。橋を進むごとにパワーが強くなっていくのがわかる。」
「俺も感じてるよ。体全体にパワーを感じているから浄化されている感覚になるよね。」
「本当にそう感じる。普段たまったものが浄化されていって心がすーっと楽になっていく感じがする。そして心の中に暖かさを感じるよね。」
二人は同じような感覚に浸っていた。神聖な空間で感じるパワーは普段感じるものとは全然違うと改めて思っていった。
二人は境内を進み最初に豊受大神を祀ってある正宮に参拝しようとしていた。まずは正宮に行き日頃の感謝を伝えてそれから別宮や摂社末社を回るプランを立てていた。
朝も早い時間帯なので人は少ない方だがそれでもそれなりの人がいた。人々は境内の奥にある正宮を目指していた。
「颯太くん知ってる?この神社の内宮と外宮の正宮でお賽銭できないんだよ。」
「なんか聞いたことあるそれ。理由までは忘れたけど。」
「正宮では天皇陛下が日本のことを願う場所だから個人の願いをするのはダメなの。だからお賽銭も個人の願いがこもっているからダメなんだって。それほど神聖な場所ってことなの。」
「なるほどね。そうだったんだ。個人的なお願いもダメなんだね。」
「そうだよ。だから正宮では日頃の感謝を伝えるんだよ。他の神社でも日頃の感謝を伝えるのは大事だけど。」
恵那の話を聞いて今から本当に神聖な場所にお参りするのかという気分になった。心を清らかにして正宮にお参りしようとしていた。
そして正宮に辿り着いた。周りにはお参りをする人で溢れていた。
二人はお参りする人の列に並んで小宮から伝わってくるパワーを感じ取っていた。
「すごいパワーだね。恵那ちゃんも感じる?」
「うん。感じるよ。すべての罪穢れをなくしてすべての人を見守ってそうなパワーを感じているよ。」
「さすが正宮って感じよね。日本は神の国って言われるけど本当にそう思うよ。」
「うん。神様に守られている感じがする。過去も。現在も。そして未来も。」
そう言った恵那の目はなぜか曇っているように見えた。その言葉がすごく重く感じた。恵那にとってもしかしたら過去や未来はもっと重いものなのかなと瞬時に感じた。
そして二人は正宮の前まで来ていた。二人はそこで日頃の感謝を伝えた。その瞬間正宮の方からスーと風が吹いてきた。正宮の手前からではなく正宮の奥から風が吹いていたので二人は少しだけ不思議に思った。
二人は正宮を後にして再び境内を歩き出した。
「さっきの風正宮の中から吹いてきたよね。あれって歓迎されるサインって聞いたことある。」
恵那は少しだけ嬉しそうだった。
「確かにあの風の吹き方は歓迎されているような吹き方だったね。なんか俺も嬉しくなってくるよ。」
「うん。とっても嬉しい。」
二人は喜びを分かち合いながら境内を歩いていた。
二人が次に向かったのは豊受大神の荒御魂を祀ってある別宮へと向かった。
「次行く別宮は豊受大神の荒御魂を祀ってあるんだよ。昨日行った神社にもあったのと似ているけど個人的なお願い事はそこの別宮でするといいんだって。」
「そうなんだ。神様の勢いがある部分にお願いするのね。」
「そうなの。内宮でも天照大神の荒御魂が祀られているところがあるの。そこでみんな個人的なお願い事をしているよ。もちろん感謝を伝えるのが先だけどね。」
恵那は颯太に解説をしながら境内を歩いていた。境内は相変わらず神聖な空気を放っていた。
そして二人は別宮についた。人は正宮よりも少なかったがそれでもそこそこの人がいた。
二人はそこで感謝を伝えそれぞれの願い事を伝えた。別宮からは正宮で感じたパワーとは違い少し荒っぽいが優しさもあるような空気感を二人は感じていた。
その後も二人は境内にある他の別宮や摂社末社にお参りをした。それぞれの社に行くたびに違った空気感を感じていた二人は様々な考えや思いが浮かんでいた。
二人は境内をゆっくり回って二人だけの時間を過ごしていった。心が清々しい気分になるとともに日頃の溜まったストレスがお互いに安らいで行く感覚もした。
二人は境内の中にある池が見える休憩所で休憩をしていた。そこで池を見ながら椅子に座っていた。
「この池綺麗だよね。さすが神聖な場所にある池だよね。」
「うん。この池にも神様がいそうな感じがするよ。俺もこんな池で暮らしてみたい。」
「颯太くん魚になるの?」
「それは流石にならないわ。」
「なってくれれば面白かったのに。」
池を見ながら魚になりたい論争をしていると風がすーっと吹き出した。まるで正宮の時に感じたような風だった。
「また気持ちいい風が吹いたね。お魚さんになるならないの話も神様聞いていたのかな。」
「この話聞かれたらなんか恥ずかしいよね。」
「そんなに恥ずかしいとは思わないけどね私は。」
二人はその後も池の椅子でそんな話を続けていた。
しばらくして二人は椅子から立ち外宮を後にしようとした。鳥居の前まで行きそこで境内にむけて一礼をして駐車場で車に乗り内宮へ向かった。
「本当に良かったよね。神聖な気分を味わえたよ。きて良かった。」
「うん。俺もきて良かった。人生観が変わった気がする。」
「本当にそのくらいの感覚だよね。内宮に行ったらもっと変わる気がするね。」
「うん。楽しみ。」
会話をしながら車を走らせていると内宮の駐車場に着いた。そこに車を止めて二人は内宮を目指した。
内宮までの道を進んでいくとお店街が連なっていた。
「いろいろなお店あるね。ちょうどお腹も空いたしここで何かお昼ご飯食べようよ。」
「うん。いいね。何にしようかな。」
二人はお店街でお昼ご飯になるもにを探していた。いろいろなお店があり迷ったがこの土地の名物であるうどんのお店に決めた。
店内に入ると小麦の香りと出汁の匂いが漂っていた。二人はそこでうどんを注文してうどんを食べた。
あっさりとした出汁に腰の合ううどんが絡み合いとても食べやすかった。外は気温もそこそこ上がっており暑かったので冷たいうどんは二人の体を涼しくした。
「冷たいうどん美味しいね。本当に涼しくなったよね。」
「うん。ちょうどいい体感温度になったね。帰りもさ色々お土産屋さんとかあったから見ていこうね。」
「うん。じっくりみよ。」
二人はうどんを食べ終わり店を出て内宮を目指した。その道中にも様々なお店があり帰りに寄って行きたいお店が何軒もできた。それは帰りの楽しみにして内宮の正面まで目指した。
内宮に着くと外宮同様に大きな鳥居とその先に伸びる大きな橋があった。鳥居の奥から太陽のような暖かい空気とすごく高貴なパワーが感じられた。
「すごい・・・」
恵那は鳥居の前に立ち尽くしていた。あまりのパワーの強さに言葉に表せないほど感激していた。
颯太もそれは同じで言葉に表せないくらいパワーを感じていて本当に全国の神社のトップに来たと感じていた。
二人は一呼吸おいて鳥居の前に立った。そして一礼をして橋を渡った。
橋を渡っていくとどんどんパワーが強くなっていくのを肌で感じていた。そのパワーは決して攻撃的ではなく温かくそして外宮同様全てを浄化する強い浄化のパワーを感じ取れた。
橋をどんどん渡っていくと恵那がある部分で立ち止まった。
「どうしたの急に止まって。」
「颯太くんあそこの擬宝珠みて。あそこだけ色が違うでしょ。」
「うん。確かに違うね。」
ちなみに擬宝珠とは神社などでよく見られる柱の先端などに着いている玉ねぎみたいな部分のことを言う。
「あそこの擬宝珠の中にも神様が祀られているんだよ。」
颯太は改めて色の違う擬宝珠の方を見た。確かにあそこだけパワーが少し違って見えるような気がした。
「今は右側通行しないといけないけど帰りに近くまで寄れるから触るとご利益あるそうよ。帰りに忘れないでお参りしていこうね。」
恵那に言われて颯太は感心していた。恵那の細かいところまで大事にする部分は神社に行っている時でなくても関心していた。
二人は色の違う擬宝珠を見つつ橋の奥へ足を進めていった。
100メートルくらい歩くと橋が終わり本格的に境内に入っていった。橋の終わりにある鳥居をくぐると空気がまた変わっていった。ものすごい浄化のパワーと太陽のような暖かさがどんどん強くなっていった。
二人は境内を歩いていると途中川岸に降りれるところがあった。
「颯太くんここで手とか清めるんだよ。手前に手水舎もあるけど本当はここで心身を清めるから川の水に手を入れてみて。」
恵那に言われる通り川に手を入れた。川の水は冷たく入れた手だけではなく心も清められる感じがした。
颯太に続き恵那も川に手を入れた。
「とてもひんやりしてて全身清められているみたいだね。なんだか体が軽くなった気がする。」
「俺も同じ感覚だよ。さすが神聖な場所にある川だね。」
「川にも神聖さが伝わってきてきて本当に浄化されるね。」
二人は川でしっかりと手を清めて境内の奥へと向かった。
二人は境内を奥へと進み最初に正宮に向かった。外宮同様最初にお参りをする大事な場所だったので一番に正宮に向かった。
正宮までの参道を歩いて行口と正宮に近づくにつれ人がだんだんと多くなっていった。時刻はお昼を周り人が一番参拝する時間帯だったのでそれに応じて人も多くなっていった。
「やっぱり人が多いね。やっぱり神社のトップなだけあってみんなお参りにくるよね。」
「そうだよね。俺たちと同じように遠くから来ている人もいるだろうね。それだけ日本人は無意識この神社に行ってみたいって思っていると言うことだと思う。」
「そうだよね。みんなの心にこの神社はあるよね。」
二人はしばらく会話をしていると正宮の前までついた。外宮正宮での個人的なお願いはダメなので日頃の感謝を伝えた。
二人が感謝を伝えていると外宮で起きたように正宮の奥から風が吹き込んできた。二人はその風をしっかり受けさらに感謝を伝えた。
正宮でのお参りをした後二人はあるところに向かった。
二人は内宮でご祈祷を受けようとしていた。この神社でのご祈祷は他の神社とは違い御食と神楽と呼ばれ二人は神楽を奉納することにしていた。神楽を奉納すると言っても二人が神楽を奉納するではなく巫女さんが神楽を舞うことにより様々なご祈祷を受けることができるのであった。
神楽を受けるために二人の服装も正装に近い格好をしていた。
二人は神楽殿と呼ばれる神楽を奉納する場所に行きご祈祷の申し込みをして順番を待っていた。
「この神社行ったらご祈祷を受けたいと前々から思っていたんだよね。普段から見守ってくれていることに感謝の気持ちを伝えたかったんよね。」
「それは俺も思っていたことよ。神恩感謝のご祈祷は絶対に受けたかった。」
「うん。そして神聖な神楽も見れるし神様に感謝しながらご祈祷受けようね。」
二人が話しているとご祈祷の案内をされて神楽殿の中に通された。
中は祭壇とその前に広い空間がありきの香りと静寂に包まれていた。
神職さんが祭壇に来てご祈祷を始めるとの趣旨を伝えた。最初にお清めのお祓いである修祓が行われ祓詞が奏上されお祓いされた。そして神主さんが祝詞を奏上しその後神楽が奉納された。
神楽は巫女さんが華麗に舞を披露しており神聖さの中に華やかさもありとても神々しかった。
二人はそれを日頃の感謝を込めながら受けていた。ご祈祷をうけている時はとても清々しく日頃の感謝が神様に少しは伝わったと感じていた。
ご祈祷が終わり撤下品をお受けされ二人は神楽殿を出た。
「感動したね。神楽も上品で神聖で神々しかったしご祈祷を受けている間ずっと体の中からパワーが湧き上がってきて神様に感謝が届いた気がするよ。」
恵那は感動のあまり少し涙ぐんでいた。恵那にとって涙が出るくらい素晴らしい経験だった。
「俺も感動したよ。神様のご加護がこんなにも肌で感じられる時がくるとは思ってなかったよ。本当に良かった。」
「うん。もらったお札とかも家に帰って神棚に大切に祀ろうね。」
「そうだね。そこでも日頃の感謝を伝えていこう。」
二人はこのご祈祷を受けて改めて神様に感謝を伝えたくなった。そしてこれからもそれを継続していき神様のご神意を受けた時にはしっかりと感謝を伝えていこうと感じた。
二人は再び境内を歩いて天照大神の荒御魂をお祀りする別宮へ向かった。ここで二人は外宮同様感謝と願い事をお祈りした。別宮でも外宮の別宮同様強いパワーを感じ取った。
二人のお願いは大体同じものだった。二人は互いのお願いを口には出さなかったけど大体こんなお願いをしたんだろうって想像がついた。
その後も二人は神社の別宮や摂社末社をめぐってお参りをした。昔日本が元寇により攻められた際に神風を起こしたとされる神様を祀っている別宮やその他様々なお社を巡って歴史と神様のパワーを感じ取っていた。
そうこうしているうちに時間は経ち二人は内宮の境内を出た。
二人は行きに通ったお店外に入って行きそこで様々なお店を見て回った。
「颯太くん見てこのお皿綺麗。買って家で使おうかな。」
「いいじゃん。旅行の記念にもなるし買って一緒に使おうよ。」
二人はそう言って綺麗なお皿を買った。そのお皿はまるで鏡のようにキラキラと輝いていた。
その後も二人はお菓子や小物など様々なものを買って気がつけが二人の両手には多くのもので溢れていた。
お店街を抜け二人は車に荷物を置いて車に乗り込んだ。
「恵那ちゃん。この後ご飯を食べにいくけどそれまでに時間があるからさ神社から近い海岸に行かない?ちょうど夕日も綺麗に見える時間帯だし良かったらいってみない?」
颯太は海岸に行くのを提案した。その海岸は神様がまるで降り立ったかのように神々しく綺麗な場所だと颯太は予め調べていた。
「いってみたい。いこうよ。」
恵那は笑顔で答えた。
そうして二人は海岸へと向かった。
車を走らせている時だった。いつも出す速度で車を走らせているだけだったけどこの時だけやけに周りの風景がゆっくりすぎていく感覚になっていた。
「颯太くんなんか車の速度遅くない?そんなことないか。」
恵那もそのことを感じていたそうで颯太に聞いてみた。
「俺も同じこと思っていたよ。速度はいつも出す速度なんだけど今はやけにゆっくりに感じるんだよね。なんか不思議。」
「やっぱりそうだよね。なんでなんだろう。神様の力かな。」
「神様の力ってことにしとこう。神様のゆっくりこの地の風景を楽しめって言っているのかも。」
「うん。そう言うことにしよう。外の風景がとっても綺麗だしね。」
外は西陽が綺麗に地面を照らしておりあたりをオレンジ色にそれていた。
そして少しして目的地の海岸に着いた。二人は車を止め海岸へと向かった。
海が夕焼けに反射してオレンジ色に輝いていた。そこに気持ちの良い風がすーっと駆け抜けていく。二人はその海岸にしばらく見惚れていた。
二人は海岸沿いに座り海を眺めていた。
「颯太くん今日もとっても楽しかった。本当にありがとうね。」
「俺もとっても楽しかったよ。神様にお礼も伝えられたし何せ恵那ちゃんとここにこれて良かったと思っているよ。」
颯太がそう言っている時恵那はなぜか下を向いていた。そしてしばらく喋らなかった。
「恵那ちゃんどうしたの?」と颯太が疑問そうに聞く。そして恵那の方へ目線を向けると恵那は鼻を啜っていた。
少しして恵那が口を開いた。
「颯太くんと本当に旅行に来れて良かった。私の行きたいところに連れていってくれて本当に現実じゃないかと思ったよ。本当に颯太くんとここに来れたんだなって思うと本当に嬉しくて嬉しくて。」
恵那はなぜか泣いていた。颯太は恵那がなぜ泣いているのか分からなかった。
恵那は続けて言葉を発した。
「私は今とっても幸せ。颯太くんがいてくれて本当に幸せ。こんな幸せを私は望んでいたの。そして颯太くんと付き合ってこの望みが叶って本当に嬉しいの。だけど涙がなぜか出ちゃうの。現実だけど夢みたいでさ。」
恵那の涙が海岸の砂浜に垂れた。いつもの恵那らしくないのと幸せを望んでいたという発言が少し気がかりだったが颯太自身も恵那と一緒に入れることが幸せだったのは間違いなかった。
颯太は涙ぐんでいる恵那のそばに寄り添いそっと手を頭に乗せた。そして顔を恵那の顔に近づけた。
「恵那ちゃん。僕も恵那ちゃんと入れることが幸せだよ。これは夢でも幻でもなくて現実だよ。だから安心して。俺はこうして恵那ちゃんとここにいる。だから泣かないで。」
颯太はそう言って恵那の顎に手を差し出した。そのまましばらく恵那の目を見ていた。そしてそのまま恵那の顔を持ち上げた。そして颯太は恵那の唇に自分の唇をかざした。
夕日のオレンジ色と相待ってそれはとても温かった。颯太の暖かさが恵那の唇にどんどん伝わってくる。
少しして颯太は恵那から顔を少し話した。恵那は泣き顔ではなく笑顔になっていた。
「やっぱ笑っている恵那ちゃんが一番好き。」
颯太はそう言って再び恵那の頭の上に手を置いた。
「ありがとう颯太くん。大好き。」
恵那もそう言って今度は恵那から颯太の唇に恵那の唇を合わせた。
そして二人はそのままハグを交わした。夕日の向こうから神様がそれを見守っているようだった。
二人はしばらく海岸にいて余韻を楽しんでいた。そうしているうちにオレンジ色の空が段々と暗くなっていった。
「そろそろ行こっか。このあとは晩御飯で美味しい刺身とか食べられるよ。」
「やったー!楽しみ。私たくさん食べるからね。」
「食べれるだけ食べようね。」
二人は車に戻り晩御飯を食べるお店に行った。
車を走らせること数分でそのお店に着いた。お店は古風な感じでいかにもし店という感じが出ていた。
二人は席に案内されそこに刺身や貝など海の幸を頼んだ。
「颯太くん昨日も伊勢海老食べたのにまた食べるんだね。」
「うん。伊勢海老美味しいから今のうちに食いだめしときたいんだよ。」
「胃に入っても1日後には出ちゃうけどね。」
「味はいつまでも脳に残っているから問題なし。」
そんな会話をしていると料理が運ばれてきた。伊勢海老や様々な魚の刺身、貝類などが運ばれてきて二人はテンションが上がった。
それを二人は味わいながら食べていった。どれも美味しく幸せな気分になった。
二人が食べ続けていると店員さんが味噌汁を運んでくれた。
「このお味噌汁はサービスだから良かったら飲んでみてね。」
店員さんの優しげな声と味噌汁のいい匂いが漂ってきて二人は味噌汁に興味がそそわれた。
「とってもいい香り。ありがとうございます。」
「いいんですか?ありがとうございます。」
「いいんだよ。たくさん注文してくれてこちらも嬉しいよ。」
二人は店員さんにお礼を言って味噌汁を飲んだ。
赤味噌に魚介の出汁がとても効いていて今までに飲んだことがない味だった。
「うん美味しい。こんな美味しいお味噌汁初めて飲んだ。」
「確かに美味しいね。魚介の出汁がまたいい味出している。」
二人はお味噌汁を堪能して心も体もあったかくなっていた。
二人は晩御飯を満喫して店を出た。そして宿に向かい荷物などをまとめていた。明日はゆっくりめに宿を出て少しだけ観光をして帰路に着く予定なので今のうちに荷物をまとめ朝ゆっくりできるようにしていた。
「颯太くん今日も楽しかったね。途中泣いちゃってごめんね。」
「ううん。大丈夫だよ。そんだけ恵那ちゃんがこの旅行に想いをかけていたの伝わったし俺も楽しかったから大丈夫よ。」
「ありがとう。明日なんだけどさ通りがけにあるショッピングモールによっていろんなもの見てみたいの。ちょうどそこにお土産屋さんもたくさんあるから会社とかのお土産物買いたいしさ。あと帰りに各県のサービスエリアによるのも忘れずにね。」
「うん。大丈夫だよ。ちゃんと寄ろうね。荷物もまとまったしまた露天風呂に行こうよ。」
「うん。」
二人は露天風呂に向かい二人で温泉を楽しんだ。
温泉からは昨日同様空には月と星が輝いていた。その風景を今日もまた二人は楽しんでいた。
二人は温泉から上がるとビールを取り出した。明日はゆっくりでいいので二人でお酒を飲もうとしていた。
「今日もありがとうね乾杯」
「乾杯」
二人は乾杯をしビールを飲んだ。キンキンに冷えたビールがお風呂上がりの二人の体に染み渡っていく。
「なんか旅行あっという間だったね。楽しい時って本当にあっという間だよね。」
恵那は少し寂しそうにそういった。
「本当にそうだよね。楽しい時間こそ長く感じていたいのにさ。」
「本当よね。時間を延ばす能力あったらこの旅情の時間を永遠の時間にしたいな。」
「それ俺も思った。」
「さっすが颯太くんわかってるー」
二人はお酒を飲みながら会話を楽しんだ。酔いが回ってくると二人はだんだんと面白くなっていき変なテンションになっていった。
恵那がいきなりモノマネ10連発とかやり出すと颯太は面白くてずっと笑っていた。
颯太は元から恵那はお笑いセンスがあるなと感じていたがお酒を飲むことでそれがさらに加速されていってキレッキレのモノマネをやっていた。
しばらくお酒を飲みながらそんなことをしているとを眠くなったので二人は寝ることにした。
「颯太くん。おはよう。」
「おはようじゃなくてお休みでしょ。」
「どっちでも大丈夫だよ。で何言おうとしたんだっけ?」
「お休みでしょ。」
「あ、そうだった。今日もありがとうねお休み。」
「お休み。」
恵那のボケに颯太は総ツッコミをしながら二人は眠りについた。昨日同様波の音が二人の部屋に響いていた。




