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パラレルワールドの研究

お泊まり旅行のことを楽しみにしながら仕事をしていく日々が続いていたある日会社から人事異動のお知らせがきた。

 颯太の会社は様々な部署があり全国各地にも支社があり転勤はあることだった。颯太は最初県外への転勤かと思って焦っていたがどうやらそうではないらしく新しくできる部署への異動だった。

 その部署はパラレルワールド研究部と言うところだった。

 颯太はその名前を聞いて驚いた。パラレルワールドを研究する部署ができる話は噂程度に聞いていたがまさか本当にできるとは思っていなかった。しかもそこに異動になる事にはもっと驚いた。


 そんな時に上司である高野さんがやってきた。高野さんは颯太の方に近づき話しかけた。

「颯太くん人事異動の知らせは見たか。前噂してたパラレルワールドについて研究する部署がうちの会社にもできて颯太くんはそこに移動になった。」

「はい。それは通知で見ました。でもなんで私が素pの部署に配属になったんですか?私は研究者でもなんでもないのに。」

 颯太は高野さんに疑問をぶつけてみた。

「その件なんだけど颯太くんをパラレルワールド研究部に押したのは私なんだ。颯太くんの彼女の件もあるしそしてパラレルワールドについて他の社員より詳しいのは間違いないからね。そして私がそこの部長になるからってのもある。」

「高野さんが部長になるんですね。それで私がその部に行くんですね。」

「そうだ。そしてその部署に外部から研究者も来る事になっている。その中には高野くんが読んでいた本の作者である渡邉さんも来る事になっている。」


 颯太は色々入ってくる情報に少しだけ戸惑っていた。しかしこれにより恵那のことがもっとわかるようになると考えれば嬉しい気持ちになった。

「渡邉さんもいらっしゃるのですね。渡邉さんには色々お聞きしたいことがあったのでまさかこんな形でお会いできるのとても嬉しく思ってます。

「それなら良かった。明日から渡邉さんがいらしてくるそうなので色々聞くといいよ。」

「ありがとうございます。」


 颯太は高野さんと話を交わし今日の仕事に取り掛かった。人事異動になったので引き継ぎをまとめるのが今日の仕事であったのでその書類を作っていた。


 作業をしていると後輩が声をかけてきた。

「颯太先輩パラレルワールド研究部に異動なんですね。なんか寂しくなります。今までありがとうございました。」

 後輩は少し寂しそうな声をしていた。

「まあ異動とはいえ同じ建物の中にいるんだからあった時はいつでも声をかけてね。また困ったら助けに行くからね。」

「ありがとうございます。僕も先輩みたいなかっこいい人になります。」

「応援してるよ。」

 後輩とそう言葉を交わし颯太は作業に戻った。


 作業を終えると退社時刻になった。颯太は荷物をまとめ家に帰った。

 家に帰ると恵那がいつものように待っていた。

「ただいま。」

「おかえり。」

 といつもの言葉を交わし二人はソファーに座った。

 颯太はそこで人事異動があったことを話した。


「パラレルワールド研究部ね」

 恵那はその言葉を聞いた瞬間顔色が曇った。颯太はそれをみて不思議そうに見えた。

「恵那ちゃんどうしたの?なんか反応が変だったから気になっちゃったよ。」

「ううん。なんでもないよ。ただ颯太くんがパラレルワールドに興味があるのが少し意外だったからさ。」

 そう答える恵那の表情は変わらなかった。恵那にとってパラレルワールドのことはあまり話さない方がいいのは前から思っていたが今回の反応でそれは確信に変わった。

「なんかごめんね。夕飯作ろっか。」

「こちらこそごめんね。一緒に作ろ。」

 そう言って二人は晩御飯を作り始めた。


 晩御飯を作っているときは普通の話をして恵那の表情も次第に明るくなった。料理をしならがその様子を見ていた颯太は一安心した。

 ここから渡邉さんから聞く話とかは恵那から聞かれない限り話さないよ言うにしようと思った。


 次の日颯太は出社すると高野さんにあった。そして高野さんの隣には少し若めの男性がいた。

「颯太くんおはよう。あ、この隣にいるのが渡邉さんだよ。」

 颯太は横の男性を見る。横の男性はニコニコしながら挨拶をした。

「実は渡邉さんは私の知り合いでな。それで今回うちの会社にできた部にもきたわけなんだ。そんなことでよろしく頼む。」

 颯太は驚いた。そして高野さんがパラレルワールドについて理解してくれる理由もわかった。

「颯太くん初めまして。渡邊雄太と申します。彼女さんのことは平野さんから聞いています。その事について今日は話そうと思います。」

「ありがとうございます。早速お話をお伺いしたいと思います。」

 そうして三人はパラレルワールド部が新設された部屋へと移動した。


 三人は部屋に入り椅子に座ると話をし始めた。

「颯太さんの話は予め高野さんから聞いています。聞いた話から私の見解を話したいと思います。」

「はい。よろしくお願いします。」

 颯太は渡邉さんの話を真剣に聞く体制をとった。

「まず恵那さんが転生されてきた要因としては本にも書いてあるとおり前の世界で心理的または外相的に何か大きなことが起きたことが考えられるのは変わりないです。」

「やっぱりそうなんですね。」

「はい。あの本は2年前の本ですので最近のことは書かれていませんが最近わかったことですがパラレルワールドに転生される条件は時間軸と空間の歪みが発生したと同時に大きな心理的、外相的要因が起きたときに本人がその世界で未練がある時にパラレルワールドに転生される可能性が非常に高くなることがわかりました。」

「未練ですか。」

 颯太は自分で本を読んで得た知識のほかに新たに知る知識をもとに色々と考えていた。考えている颯太の様子を見つつ渡邉さんは話を進めた。

「未練がありたとえば交通事故などが起きた場合その未練を晴らすために別の世界でやり直すのが目的で力が働きパラレルワールドに転生されます。」

「ということはやっぱり恵那は前の世界では死んでいる可能性が高いんですね。」

 颯太はそう渡邉さんに聞いた。渡邉さんは頷いて答えた。


 颯太は悲しい気持ちになった。恵那は未練がありならが前の世界での人生を終えた。恵那はそのことを自覚しているのかわからないが未練があって転生されたのは間違いない。その未練はなんだったのか気になっていた。

「そのことなんですが恵那さんの記憶が完全に引き継がれていない件とも繋がってきますのでまとめてお話しします。」

「お願いします。」

 颯太は再び渡邉さんの話を聞いた。

「本にも書いてあった通り基本的には前の世界の記憶は引き継がれないのですが身体または心理に強い衝撃が残った時には引き継がれると本には書きました。それについてですがまた新たなことがわかりまして心理に強い衝撃が残った場合ですと記憶が引き継がれると同時にトラウマだった出来事の記憶は残る部分と残らない部分があることがわかりました。」

「と言いますと。」

「つまり恵那さんのケースですと恵那さんと颯太さんは転生前の世界でも付き合っていたことは確かです。しかし付き合っていた時にトラウマになるほどのなんらかの強い心理的ストレスがあったことが考えられます。」


 颯太は言葉を失った。いくら他の世界の自分とはいえ恵那に強いストレスを与えていた可能性があるといわれると自分がやったみたいに思えてきて心が痛んだ。

「その強いストレスとは具体的になんなんでしょうか。」

 颯太は疑問をぶつける。

「そればっかりはわかりません。そして恵那さんがそのトラウマを覚えているかどうかも本人に聞かないとわかりません。」

 やっぱりかと思った。颯太はとても知りたかったが恵那にそんなことは聞けるわけがなかった。

「そのため恵那さんと颯太さんは今後も記憶違いで色々な弊害が出ると思います。颯太さんはそれを承知で恵那さんと関わっていく事になります。ですけど心が無理だと感じたら距離を置くのが大事だと思います。」


 渡邉さんの言葉でいろんな考えが浮かんだ。えなといることは幸せで楽しいと感じている。しかしえなとの記憶のすれ違いでたまにしんどくなるのも間違いなかった。幸せな反面たまにしんどい時があるので渡邉さんが言っていた通り心がしんどくなったら距離を置くのも一つの手だと思った。

「私が話せるのは今のところここまでです。少しでも参考になったら幸いです。」

「ありがとうございました。とても勉強になりました。」

「それなら良かったです。そして私たちはこれからパラレルワールドについての研究を進めていく事になります。そこに新たな発見があると思います。しばらくはその準備としてパラレルワールドについての知識の習得と私のコンピューターで行なっている実験などの方法について颯太さんには学んでもらいます。よろしくお願いします。」

「はい。よろしくお願いします。」

 渡邉さんは颯太にさまざまなパラレルワールドについての本を渡した。颯太はそれを読む作業から始めていった。


 その日の帰りいつも通りに家に帰り恵那が迎えてくれた。

「颯太くんおかえり。」

 恵那のいつも通りの元気な声が耳を癒してくれる。しかしそれと同時に今日渡邉さんから聞いた話が頭をよぎる。前の世界でどうして恵那は死んでしまったのか。そして前の世界での自分は恵那にどんなことをしたのか。気になることが次々と頭の中に浮かんでいた。

「颯太くんどうしたの?考え事?」

 恵那は颯太の顔を覗き込んだ。それを見た颯太はふと我に帰る。こんなことを考えていてもしょうがない。今はえなと楽しい時間を過ごそうと決めていたからだ。

「ううん。なんでもない。今日の晩御飯どうしようかなって考えてたよ。」

「なるほどね。けど今日の晩御飯は私特製のサラダうどんだよ。」

「サラダうどん。最高。ありがとう。」

「喜んでくれて良かった。もうできているから食べよ。」

「うん。」

 二人は食卓を囲んでサラダうどんを食べた。


 サラダうどんを食べながら会話をしていると会話は旅行の話になっていった。

「あと一週間で旅行だね。楽しみだね。楽しみすぎて仕事に集中できないよ。」

 恵那の顔はとびっきりの笑顔だった。恵那はこの旅行を本当に楽しみにしているんだなと伝わってくる。そんな様子を見て颯太も自然に笑顔になる。

「仕事はちゃんとしてね。でもそれだけ楽しみってことだよね。」

「うん。楽しみ。」

 二人はその後も会話をしながら食事をしていた。


 サラダうどんを食べ終わり二人はソファーに座ってテレビを見ていた。

 二人で横に座ってテレビを見ていると恵那が膝の上に座ってきた。颯太の膝上が恵那の体温で暖かくなる。

「恵那ちゃんテレビ見えないよ。」

「えーごめん。颯太くんの上に座りたかったんだもん。私の顔が見えるじゃん。」

「首しか見えないよ。でもあったかいからいいよ。」

 颯太はそう言って恵那の体に手を回した。恵那の温かさが手にも広がる。

 二人は密接した体をもっと寄せてさらにお互いの温もりを感じ取った。そして恵那は颯太の方を向いた。恵那の顔が数センチ隣にある。颯太の胸が高鳴った。

 二人は互いにしばらく見つめあった。恵那の可愛い顔がすぐ近くにある。やっぱりいつ見ても可愛い顔立ちをしている。可愛すぎて頭が蕩けていく感覚がした。サウナに入った後と似ているけどまた違った感覚が全身にくる。

「恵那ちゃん。可愛よ。すっごく可愛いよ。」

 颯太が小声で言った。その瞬間恵那の顔が赤くなった。そして颯太の胸に顔を埋めた。

「颯太くん。恥ずかしいよ。そんなこと言われたらたまらないよ。」

 颯太の胸の中でもごもごと恵那がいう。そして恵那は颯太の服を握った。


 颯太はそんな恵那を見てさらに言う。

「こんなに甘えちゃって寂しかったのね。たくさん甘えていいよ。いっぱい甘えて。」

 恵那はさらに顔を埋めた。服を握る手の力が強くなっていく。そして颯太は恵那の頭にそっと手を乗せた。そして頭を撫でた。

「颯太くん。もう私おかしくなりそう。大好きな人にこんなことされたらもう頭がおかしくなっちゃう。」

「ん?もっとしてほしいの?」

「違うって。」

「違うの?」

 二人が言葉を交わしたあと少しだけ沈黙が走った。そしてすぐに恵那が話した。

「ううん。もっとして。もっとされたいの。」

 そう言った恵那の顔を颯太は手で上にあげた。再び恵那の顔と颯太の顔が同じ高さにきた。

「颯太くん。大好きだよ。」

「うん。好きだよ。」

 そういうと二人の顔がさらに近づいた。そして唇が合わさる。唇に二人の暖かさが広がっていった。そのまま20秒くらい二人は口を合わせていた。


 二人はその後ベッドに行き寝る準備をした。恵那は頭がホワホワしていて幸せな気分でいた。

 颯太も自分でしたけれど後になって少しだけ恥ずかしくなっていた。けど颯太も幸せを感じていた。


 そしてその後も仕事をする日々を繰り返しているうちに旅行の日まであと2日となった。颯太はパラレルワールドの本を読み込み渡邉さんが作ったパラレルワールドをコンピィウーター上に作り出せるプログラムの操作方法などを学んでいた。


 パラレルワールドに実際に行ったり来たりするのは難しいがコンピューター上で架空の世界を作りそこで時間軸と空間を色々変化されコンピューター上でパラレルワールドを再現するプログラムを渡邉さんが5年前に作り上げていた。

 それを何回もバージョンアップを繰り返し今ではパラレルワールドの実験などに多く使われる事になった。


 颯太はそれの使い方を学びまずは簡単な実験から手伝う事になっていった。

「颯太さん覚えるの早いですね。このプログラムの使い方もすぐに覚えることができたので早めに実験をすることができそうです。」

「ありがとうございます。私も勉強しているうちに色々試したいことができました。」

 颯太は渡邉さんが思う以上にプログラムの使い方を早く覚えていた。そこで一つの実験をさせてみる事にした。

「颯太さん。このプログラム上に一つの物体を作って時間軸と空間を歪めてみてください。そしてその物体に衝撃を与えてみてください。今いるコンピューター上の世界を一とすると多分物体は他のコンピューター上にある世界に飛んでいくと思います。」


 颯太は渡邉先生が言った通りにプログラムを書いた。すると物体が一のコンピューター上の世界から消えたことが確認できた。そして二の世界に行くとそこに物体があるのがみられた。

「なるほど。こう言うことなんですね。時間軸と空間を歪め物体に衝撃を与えると本当に別の世界に移動するんですね。」

「そうです。コンピューター上の世界でもこうして条件が揃えば他の世界へ飛ぶことが確認できます。現実の世界でもこれが証明できます。現実世界でも時間軸と空間の歪みが確認されてますのでこれと同じ現象が起きています。」

 颯太は実際にパラレルワールドに転生されるのをコンピューター状で確認して理解が深まっていった。こうやって恵那もこの世界に転生されてきたんだと理解することができた。

 渡邉さんのおかげでパラレルワールドについてかなり勉強できたことでこの仕事がだんだんと楽しくなっていた自分がいる。もっと研究してみたいという欲も湧いていった。


 そうして颯太は充実した仕事の日々を送っていった。

 明後日は待ちに待った旅行の日、颯太も恵那もずっと楽しみに待っていた旅行が始まる。どんな旅行になるのか待ち遠しかった。

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