二人の思い
颯太くんと会ってない日がどれくらい経っただろうか。恵那は颯太と会えない日が続いてずっと考え込んでいた。
颯太くんに殺され気がつくとひまわり畑にいた。そこである女性の言葉を聞いて気がついたら颯太くんの横に寝ていた。
横にいるのは確かに颯太くんだった。しかし颯太くんではない。そう。別の世界での颯太くんだった。私は颯太くんのことが好き。大好き。けれど殺されてしまった。この世界の颯太くんにも殺されるのかな。けど好きが好きを加速させて検討する余地も与えてくれない。
この世界の颯太くんに記憶がどれだけ引き継がれているかわからないがもぷ彼女のふりをするしかない。そうしないとこの気持ちは抑えきれないと思う。この世界の颯太くんには申し訳ないけれどそうするしかなかった。
「おはよう颯太くん。昨日の飲み会どうだった?」
こう聞いたが颯太くんの反応は想像通りだった。やっぱ知らないよね。
なんか寂しかった。殺される時も邪魔者扱いされたけどそれ以上になぜか寂しかった。
けれどこの世界の颯太くんはとっても優しかった。颯太くんからしたら知らない私を家に住むことを提案してくれたり彼女のふりをしてくれたり。とっても幸せだった。そしてこの世界の颯太くんのことも好きになった。いや。前の世界の颯太くんより好き。
そして二人でいろいろなところへ行ったりいろいろなことをした。どれをしても颯太くんは優しくて本当に幸せだった。
しかしだんだんとすれ違うのは感じていた。やっぱり記憶の食い違いが颯太くんに負担をかけていたんだなって。それはわかっていたのにどうしてあんなこと言っちゃったのだろう。とっても優しくしてくれた颯太くんにあんな酷いことをしちゃった。
しばらくして連絡が来た時嬉しかったけどやっぱ私といると嫌なのかなと思っちゃった。
「今は会いたくない。」
この言葉が私の心の中に響いた。やっぱりそうなのか。そしてしばらく何もできなかった。
しかしなぜかわからないが颯太くんは会いにくると確信していた。いやそう強く思っているだけかもしれない。いや絶対に颯太くんはくる。
そして今日。電話が来た。
「恵那ちゃん。今から会いに行って話すことがある。今すぐ向かう。」
今から颯太くんがくる。とても嬉しい。けど何を言われるのか不安。別れ話なのかな。いや違う。違うと思い込んだ。
颯太は駆け足で家に向かっていた。その足はだんだんと早くなり気がついたら全力で走っていた。
そして見えてきた自分の家のドア。いつぶりだろうか。この奥にえなが待っている。少し懐かしさもあったがそんなことを思っている場合ではない。
颯太は家のドアを開けた。そしてリビングのドアを開く。
「颯太くん!」
「恵那ちゃん!」
二人の声がこだまする。そしてそのまま二人は抱き合った。
「ごめん。本当にごめん恵那ちゃん。」
「私こそごめんね颯太くん。」
二人はお互いに謝って抱き合い続けた。二人の胸にぬくもりが広がる。何も話さなくても自分たちの思いは伝わっている気がした。
少しして二人はソファーに座った。そして颯太は恵那にパラレルワールドでの恵那のことを全て話した。
恵那はその話を全部聞いていた。そして全部事実と答えた。
「颯太くん。颯太くんの言った通りだよ。私はパラレルワールドから転生されてきたんだよ。前の世界には颯太くんに殺されたのも事実。今までだ余っててごめんね。」
「ううん。俺こそ気づいていたのに親身になってあげられなくてごめんね。けどひとつ聞きたいことがあるけど聞いてもいい?」
「うん。」
恵那は唾を飲んだ。何を聞かれるのか少しだけ不安があった。
「転生前の世界の俺とこの世界の俺。好きなのは?」
恵那は少しだけ間を置いて答えた。
「確かに転生前の颯太くんが好きで今の世界の颯太くんとも彼女みたいにしてたのは事実。」
颯太は一言一言心で受け止めていた。
「だけど颯太くんと一緒にいることによって今の颯太くんが大好きになったの。」
少しの間が開く。
「改めて言わせて。颯太くんのことが・・・」
「恵那のことが好き。」
二人の顔が赤くなる。
颯太も恵那も迷いがなかった。今まではカップルのふりだったのかもしれない。颯太は彼氏のふりをしていた。けど今は違う。
「「これからもよろしくい願いします。付き合ってください」」
二人はそうしてハグを交わした。二人の思いが伝わる。二人は魂で結ばれているのだとこの時はっきりと自覚した。
恵那がパラレルワールドから来たとか他の世界の自分が恵那を殺したとか関係ない。この世界の「颯太」が恵那のことを幸せにする。
前の世界の颯太くんが好きとか自分が転生されたから関係ない。今目の前にいる颯太くんが「恵那」は大好き。
二人の気持ちはお互いにおなじだった。過去とか転生とか関係ない。「好き」だからそんなのどうでもいい。
二人はそのままベッドに入って二人だけの空間を味わった。
久しぶりの感覚。それがどんなに幸せなことなのか二人は実感した。