恵那の過去。転生された理由
そう転生される前もこんな感じで泣いていた。
前の世界でも颯太くんのことが大好きだった。すごくすごく好きだった。けどそれが颯太くんにとって苦痛だったのかもしれない。
私は前の世界で颯太くんに殺された。とある公園で颯太くんから別れ話をされた時私が断ったら颯太くんが持っていたナイフで胸を刺された。それが前の世界での最後の記憶だった。
ナイフで刺された後胸に強い痛みが走った。その後今までの記憶が蘇ってきた。幼稚園の時のこと。小学校の時のこと。中学。高校。大学。そして社会人になって颯太くんと出会った時のこと。デートしたこと。告白しておっけいをもらったこと。楽しい日々。そして喧嘩したこと。そして今ナイフで刺されたこと。
全てがこの一瞬の間に頭に映像として流れ込んでいた。そうして私は意識を失った。
そして次に気づいたらひまわり畑がたくさん咲いている空間にいた。私はそこのポツンと立っていた。そこでとある女性にあった。その女性は私の方を見て温かい笑顔で微笑んでいた。そしてその女性は私の方へ寄ってきた。
「恵那さん。あなたはまだ人生に未練を残していますね。私の力で転生させます。ですが元の世界には転生できません。違う世界線での転生になります。記憶が引き継がれない可能性もあります。しかし颯太さんとは必ずまた会えます。」
女性がそう言った瞬間また意識を失い次に気がついたときは横で颯太くんが寝ていたところだった。
私の頭の中ではそのことをはっきり覚えていた。そして前の世界での颯太くんの記憶もほぼ引き継がれていた。そして横に寝ている人も颯太くんで間違いなかった。
しかしこの世界での颯太くんは多分私のことを知らないと思う。いきなりパラレルワールドから来ましたと言っても戸惑うだけかと思って一か八か元からいた彼女であったふりをした。
そうしたら颯太くんもそれに乗ってくれた。とても嬉しかった。また颯太くんと色々な楽しいことや嬉しいことを共感できると思った。
私が颯太くんに殺された理由は大体はわかる気がする。前の世界の颯太くんは私と付き合ってからだんだんと態度が変わっていった。そしてある時に颯太くんのラインの通知が見えた。そこには私以外の人とデートをするラインが入っていた。
私はとても悲しかった。このまま放置していても良かったがそれでは私の心がもたなかった。そこで思い切ってそのことを颯太くんに話してみた。
話してみると颯太くんは別れよと言ってきた。しかし私は別れたくなかった。けど他の女の子とデートに行く約束をしているのも許せなかった。
そう言って私たちは口論になり公園に言った。そうして私は殺された。前の世界の颯太くんは私を殺した。けれど私は颯太くんのことが好きなままだった。殺されたのにそれでも好きだった。颯太くんにとって私は邪魔な存在だったのかもしれない。それでも好きだった。
そして転生された後の世界の颯太くんはとっても優しかった。見ず知らずの私に対して彼氏のように接してくれていた。前の世界の颯太くんと違うこともわかっていた。それでも颯太くんは必死に話を合わせてくれていた。
そして旅行の時も本当に楽しかった。好きって言ってもらえたことが幸せだった。この幸せが永遠に続いていくのかなと思っていた。
しかしこちらの世界の颯太くんにとって私は知らない人のはず。いずれはこのことを話さなければならないと思った。しかしなかなか話せなかった。
颯太くんがパラレルワールドの研究を始めたと聞いた時は正直怖かった。私が転生されてきた存在と知ったらどうしようと思った。現に颯太くんは知っていたかもしれない。そして颯太くん自身前の世界の自分は私を殺したと知った時同意思うだろうか。そう考えているとなかなか言い出せなかった。
後悔しか出てこない。もっと早くいっていればこうはなってなかったかもしれない。私が旅行先で突然泣き出したのも前の殺された時の記憶が蘇ったからだった。その時も颯太くんは優しく言葉をかけてくれた。そんな颯太くんを怒らせてしまった。私も怒りたかったわけではなかった。けど誕生日はお祝いして欲しかった。そこの記憶は颯太くんに引き継がれて欲しかった。颯太くんと幸せを共有したかった。それだけだった。
大粒の涙がこぼれ落ちる。どんどん目から涙が溢れていく。もう止めることはできない。
「颯太くん・・・颯太くん・・・」
何回も颯太の名前をいう。しかし颯太はいない。恵那の心の中にはずっこ後悔だけが残っている。連絡も返ってこないのがなおさら心の傷に染みていた。このままもう颯太くんと一生仲直りできないのかと不安になる。
そんなのは嫌だ。だけどどうしたらいいのか解決策が思いつかない。
ただただ時間だけが過ぎていく。
泣いているうちに恵那は眠りについていた。けどすぐに目が覚めてしまった。起きるたびに涙が溢れ出してくる。颯太くんの香りはほのかにするベッドで恵那はまた泣いていた。涙で枕が蒸れているのがわかるくらいに。これほどまで好きな人にまた会えなくなってしまうのが辛い。ずっと颯太くんと一緒にいたい。そう思っていても今は颯太くんから返信もなければ返ってくる様子もない。寝るとなくを繰り返していたら窓の外が明るくなっていた。
「仕事に行かなきゃ・・・」
泣いて目が腫れている顔を鏡で見て仕事に行く気をさらに失ったが体力を振り絞って仕事に向かった。
仕事中も何も手がつかない状態だった。それでも周りにバレないように一生懸命仕事をした。もしかしたら颯太くんが返ってきているかもしれないと少しだけの希望を頼りに仕事を頑張っていた。
颯太くんはどこで何をしているだろう。自分の家なのに返ってこないということは誰かの家に泊まっているのかもしれない。けれどそれを知る手段もなかった。
仕事から帰って真っ先に家に向かってみたが家には誰もいなかった。また一人の空間が広がっていた。
「颯太くん・・・」
その光景を見てまた泣き出した。どれだけ泣いただろう。けれどずっと涙が止まらない。今日の仕事中も何回も泣きそうになった。しかしそれをグッと堪えた。誰もいない颯太くんの家を見て我慢していたものが溢れ出していた。
そんな日が何日も続いた。何日も待っても颯太は家には帰ってこなかった。