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幸せな時の終わり

この日も颯太は会社でパラレルワールドの研究をしていつものように家に帰った。

 家に帰るとソファーで恵那が座っていた。最近は颯太が帰ってきても恵那は玄関まで迎えには行かずにソファーなどに座っていることが多かった。

「颯太くんおかえり。」

「ただいま。」

 二人は軽く会話を交わし颯太は服を着替えて恵那の横に座った。


 二人は並んでソファーに座りテレビを見ていた。テレビではケーキの特集をやっていて二人はそれを眺めていた。

 少しすると恵那が口を開いた。

「ケーキ美味しそうだよね。今すぐに食べたいけど一週間後になったらケーキ食べられるからそこまで我慢する。」

 恵那の言葉に颯太は疑問を感じた。一週間後にケーキを食べれるイベントごととかあったのかなと色々考えていた。

「一週間後?どこかでケーキ食べたりするの?」

 颯太は純粋に恵那に聞いてみた。それを聞いた恵那は顔が曇った。

「え?一週間後だよ。」

「一週間後何かあったっけ?」

「え・・・」

 恵那の表情が一気に暗くなっていった。そして涙が流れ出ていた。

「恵那ちゃんどうしたの?何かあったの?」

「颯太くん本当にわからないの・・・一週間後は私の誕生日だよ。忘れられているなんてひどい・・・」

 颯太は衝撃を受けた。まさか一週間後が恵那の誕生日だったんなんてもちろん初めて知ったし想像もしていなかった。

「ごめん。」

「ごめんってなによ。誕生日って一番大事な日じゃない。それを忘れているなんて。もう。なんだろう。」

 恵那の目から涙がどんどん溢れていた。

「本当にごめん。」

 颯太はただ謝るしかなかった。

「もういいよ。忘れてたんだよね。そうなんだよね。最近私と話す時もそっけないと思っていたけどもう冷めてたんだね。じゃないと誕生日忘れるなんてできないもんね。」


 恵那のその言葉に颯太はむかっときた。決して恵那を蔑ろにしているわけではないしそもそも転生してきた恵那の誕生日まで知ってることが無理なことだった。ならもっと前から誕生日についての話とかをするべきだったのではないかと思った。

「分かった。もういいよ。今日はもう一緒に居たくないから俺出かけてくる。」

「なんで逆ギレしてるの?そういうことじゃないでしょ。」

「いやいいから。じゃ出かけてくるから。」

 そう言って颯太は家を出ていった。家の中には恵那が一人だけソファーにポツンと座っていた。

「やっちゃった・・・颯太くん誕生日知らなかったんだ・・・なんであんなこと言っちゃったんだろう。誕生日覚えていないことは寂しかったの間間違いないけど颯太くんが知ってるわけないよね・・・」

 恵那は一人になった部屋で涙が止まらなくなっていた。なんであんなことを言ってしまったのか後悔がずっと襲っていた。しかし後悔をしたところでもう遅かった。


 家を出た颯太であったがどこに行く宛もなかったのでとりあえず駅の近くにある繁華街に行くことにした。頭の中がすごくむしゃくしゃしていたのでお酒でも飲んで頭を冷やそうとしていた。

 しばらく歩いているとおしゃれなバーみたいなのがあったのでそこに入ることにした。


 店に入るとバーカウンターがあり奥にはマスターらしい人がいた。

「いらっしゃいませ。お一人様ですか。」

「はい。」

「ではこちらにどうぞ。」

 颯太はマスターに案内された席についた。隣には自分と同じくらいの年齢の女性が座っていた。

 颯太はとりあえずカクテルを頼んでそれを飲んでいた。そしてさっきのことを考えていた。


 恵那のさっきの発言からすると自分が転生してきたことがわかっていなさそうな雰囲気だった。もしも分かっていたならあそこまで言わないだろうと思った。ただ誕生日を忘れられるのはショックなのは理解できる。けれど本当に知らなかったものなのであそこまで言われたのは純粋に腹が立った。

 いずれ起きるだろうとは思っていたけどついに起きてしまったと颯太は思っていた。しばらくは恵那と会いたくないとも思っていた。


 そんなことを考えていると隣の人の視線を感じた。颯太はその視線の先に目を向ける。

 そうすると女性の顔が見えた。パッとみてどこか見覚えのある顔だなと思っていた。そう思っていると女性の方から声をかけてきた。

「もしかして颯太くん?」

 颯太はその女性の声に聞き覚えがあった。しかし思い出せないでいた。

「はいそうですけど。」

「やっぱり。私だよ真奈だよ。」

 女性の名前を聞いた颯太は一気に思い出した。

 真奈。颯太の幼馴染である。高校まで一緒の学校に行き大学から離れ離れになって社会人に至るまで連絡を取っていいなかったが家が近かったこともあり両親を通じてたまに近況を聞いていた。

 そのため会うのは数年ぶりとなる。最初見た時は化粧をしているからかかなり印象が違って見えた。しかし声を聞くと真奈そのものだった。


「真奈じゃん。お久しぶり。」

「お久しぶり颯太くん。元気にしてた。」

「うん。元気にしてるよ。」

「なら良かった。なんか顔がさ暗かったから元気ないのかなーって思っててさ。」

 真奈にそう聞かれ颯太は恵那のことが頭によぎった。確かにさっきまでそのことを考えていたので元気がないように見られていてもしょうがないと思った。

 真奈の前だし恵那のことやパラレルワールドについてのことを話してみることにした。


 真奈に話をすると真奈は真剣に話を聞いてくれた。恵那のことを話して驚かれたり疑ったりされるかと思ったが全然そんなことはなくむしろそのことについて理解してくれようとしていた。

 話を進めていると真奈もパラレルワールドについて興味があって色々と調べたことがあったそうだ。そのため今の仕事についてもとても興味を示してくれた。

「なるほどね。パラレルワールドから転生されてきた子か。しかも恵那さんは颯太くんのことは彼女だと思っているのね。颯太くんも彼氏のふりをしていたわけね。」

「まあざっとそんな感じだね。」

「それで今日の件があったんだね。」

「そうなんだよ。」

 真奈は颯太の話を聞いて色々考えていた。颯太の置かれた状況は相当特殊であったがその中でもいい解決策はないか真奈は考えていた。


「話を聞いてて思ったんだけどさ颯太くんは恵那さんのことが好きかどうかが一番だと思うよ。そこがどうかでだいぶ変わってくると思うからさ。」

 颯太はそう言われて心がモヤモヤした。確かに恵那に対して好きという言葉はよく使っていたが果たしてその隙は本当に恋人として好きということなのか今の段階ではわからなくなっていった。今はとりあえず恵那と距離を置きたいと思っていた。


 そのことを真奈に伝えると真奈はまた少し考えて言葉を言った。

「なるほどね。まあそうだよね。好きかどうかの前にいきなり彼女ですって現れたら好きとかそういう前に行動しちゃうのはわかるよ。けど一緒に旅行とかしたからには少なくとも好きという感情はあったと思うよ。」

 真奈にそう言われると納得した。確かに好きでもない人と旅行に行くこともないし一緒に暮らさないと思う。そう考えると自分は恵那のことが好きだったんだなと思った。

「うん。確かに俺は恵那のことが好きだったよ。けど今は好きという感情はないかな。なんかさっきの喧嘩で頭の中で恵那ちゃんに対する熱が冷めちゃった気がするんよね。」

「なるほどね。喧嘩した直後って色んな感情とかが混ざったりしているからすぐに判断するのは良くないと思う。時間が経てばやっぱり恵那さんのことが好きって気づくかもしれないしさ。」

「それもそうかもしれない。ありがとうね。」


 二人は恵那のことの話をした後昔話などを楽しんだ。数年ぶりにあったはずなのに真奈との会話はとても弾み自分の言いたいことや話したいことが何も考えずに話すことができてとても楽しかった。

 そしてお酒も結構飲んでいたので恵那と喧嘩したことが薄れていった。

「颯太くん今日どうするの?家に帰っても恵那さんがいるわけでしょ。」

「どうしようかなって思って。そこを今考えてたところだよ。」

「なるほどね。私の家に行ければいいんだけどそれこそ恵那さんとの喧嘩を炎上させるだけだしいくら幼馴染とはいえ彼女持ちの人を止まらせるわけにはいかないからね。ちょっとそれに関してうまくできないか確認してくるからちょっと待っててね。」

 真奈はそう言って席を立って外に出て電話を始めた。誰に電話をしているのかはわからなかったがきっと自分のために何かしていることはわかった。


 しばらくすると真奈が戻ってきた。

「ごめんね。今さパパに確認とっててパパが持っているアパートに空室があるからそこしばらく使っていいかって確認とっててさ許可が出たからそこしばらく使っていいよ。ベッドとかも一式揃っているしほらうちのパパ不動産経営しているからさ。」

 真奈は颯太のためにわざわざ部屋を用意してくれていたそうだ。真奈の父親が不動産経営していることは初めて知ったしそもそも不動産経営してたのかすら記憶があやふやであったが今は自宅に帰りたくなかったのでありがたく使わせてもらうことにした。

「わざわざありがとう。」

「全然気にしないで。幼馴染ということで大丈夫よ。また何か相談とかあったらいつでも話聞くからね。」

「ありがとう。助かる。」

 二人はそう言って店を出た。


 店を出て颯太は真奈に案内されたマンションへ行った。そこに行くと本当に必要なものは一式揃っており一時的に住むのには困らない環境だった。

「じゃあ私は帰るから自由に使ってね。」

「うん。本当にありがとう。」

 そう言って真奈は帰っていった。

 部屋で一人になった颯太は服とかどうしようかと悩んでいたが服とかスーツは会社のロッカーに数日分置いといていたので明日会社に出勤する時に取りに行くことに決めた。

 携帯電話を見ると恵那からLINEが数十件入っていた。しかしそれに返信する気も起きなくて颯太はシャワーを浴びそのまま眠りについた。


「颯太くんから全然返信がない・・・」

 恵那のか細い声が部屋に響いた。いつもなら颯太がいて二人で話したりして静かな環境は少なかったが最近を振り返ると会話をしないことも多くて静かになることも多かった。そう思うとこの喧嘩の前にも二人の空気は重いものを恵那は感じられた。恵那にとってそれが不安でどうしようもなかった。そしてつい誕生日のことで恵那も悲しくなりつい言ってしまった。

「そうだよね颯太くんが知っているわけないよね。今までだって私に話を合わせてくれていたり全然知らないであろう私に対して一生懸命向き合ってくれていたのにそれなのに私は・・・」

 恵那はまた泣きそうになっていた。どんなに泣いても涙が溢れ出そうだった。


 こんなのあの時以来だった。そうこの世界に転生される前のように

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