朝起きたら彼女がいた
前日のことは全く覚えていない。昨日飲み会があったのは覚えているがその後の記憶が全くない。
俺が目覚めたとき横に温かい温もりを感じた。何かと思い二日酔いがする体をなんとか起こし横を確認する。
そこには全く見覚えのない女性が寝ていた。女性はスヤスヤと気持ちよさそうに寝ていた。
この女性に全く見覚えがない。もしかして昨日の飲み会の時によってナンパでもしたのか。そう思うと冷や汗をかいた。もしもそうだとしたら女性が起きたら大問題になる。それをすごく心配した。
そんなことを思っていると女性が目を覚ましてしまった。俺は思わずやばいと声が出てしまった。しかし女性から放たれた言葉は想像とはかなり違ったものだった。
「おはよう颯太くん。昨日の飲み会どうだった?」
颯太は自分の名前を呼ばれて驚いていた。けど名前くらいはもしかしたら昨日名乗っているかもしれない。そう思っていた。そう思っていると女性は言葉を続けた。
「颯太くん今日仕事休みだよね?昨日会社の忘年会だったから遅くなると思って先に寝ちゃった。ごめんね。」
颯太は頭がハテナだらけだった。そもそも颯太は一人暮らしで彼女なんてもちろんいない。そして仲の良い女性もいなかった。
しかしこの女性はまるで彼女のように接してきた。不思議そうにしている颯太を見て彼女は不思議がった。
「颯太くんまだお酒残っているのかな。なんか私のこと忘れちゃったみたいな顔しているから少し不安になっちゃう。」
女性は悲しそうな目で颯太の方を見つめていう。
颯太は必死に思い出そうとしたが何も思い出せない。本当に彼女とは初見なんだと確信もしていた。
少しの間沈黙が続き颯太が口を開いた。
「すみません。二日酔いで名前思い出せないんです。失礼なことですがお名前なんでしたっけ。」
颯太は二日酔いを理由に彼女の名前を聞いてみた。名前を聞けば何か思い出すかもしれないと思ったからだ。
「すごい他人と話しているみたいな話し方だね。彼女の名前忘れるなんてひどい。私は恵那だよ。いつも読んでたじゃん。すごくお酒飲んだのね昨日。」
恵那と名乗る女性は少し不機嫌そうに答えた。その名前を聞いた颯太は何か思い出すと思ったが何も心当たりはなかった。しかも恵那は彼女と言ってきた。他人ではなくまさか彼女と言われるのは想定外だった。
颯太は大学時代に彼女はいたが社会人になり遠距離になったのが理由で彼女と別れていた。それから三年経つがその間彼女なんてできなかった。しかも女性との関わりも会社の人だけでありプライベートで女性と関わっている時なんてなかった。それもありなぜ恵那が家にいるのか本当に心当たりがなかった。
颯太がそう考えていると恵那が続けて言葉を発した。
「颯太くんもしかして私のこと本当に思い出せないの?でも仕方ないよ。多分携帯電話の写メ見ると私との写真がいっぱい残っているよ。」
恵那にそう言われて颯太は携帯の中の写真フォルダーを見た。
そこには恵那の言った通り恵那との写真がたくさんあった。もちろんこの写真の心当たりもない。
色々考えてもしょうがないと思いとりあえず颯太は恵那を受け入れることにした。受け入れることで何か思い出すかもしれないと思ったからだ。
「ねえ颯太くん二日酔いでだいぶきついと思うからお味噌汁作ってくるね。お味噌汁って二日酔いに効くからさ。少し待っててね。」と恵那はそう言って台所に行き冷蔵庫を開けた。
そこから食材を取り出して鍋で水を沸騰させ味噌汁を作り出した。
少し経つと台所から味噌汁のいい香りが漂ってきてその匂いで二日酔いが少し楽になった気がした。
「できたよー。」と言う恵那の声を合図に味噌汁が運ばれてきた。味噌汁の中にはなめこと椎茸が入っていた。
颯太はそれを一口飲むと口の中に味噌の味となめこと椎茸の食感が広がっていった。
「美味しい。」と颯太がそう呟くと恵那は笑顔で喜んでいた。
「良かった。美味しいって言ってくれてとっても嬉しい。二日酔い早く治るといいね。私ものむね。」
恵那は茶碗をもう一つ出して味噌汁をよそって味噌汁を飲んだ。部屋の中には味噌汁のいい香りが漂っていた。
味噌汁を飲んだ颯太はまた眠気が襲ってきて寝ようとしていた。それをみていた恵那は颯太の横に寝転がった。
「颯太くん。一緒に寝ようよ。昨日一人で寂しかったんだから一緒に寝たいよ。」
そう言われて颯太は少しドキッとした。朝起きてた時も一緒に寝ていた状態だったが改めてそう言われるとなんか胸が高まってきた。しかも恵那は自分のことを知っているが颯太自身は初めましての人だ。初めましての人と一緒に寝るのは勇気が言った。
しかし恵那とならなぜか寝てもいいと思っていた。自分の直感を信じて恵那と二人でベッドで寝ていた。
ベッドに寝転がると恵那が小さな声で「颯太くん。大好き。」と呟いた。その言葉で颯太の鼓動はさらに早くなった。颯太はその瞬間恵那の彼氏のふりをしようと決めた。初めて会ったけど恵那とはその関係になっても大丈夫だと思っていた。
「僕もだよ。」と颯太も言って二人は眠りについた。
二人が次に目を覚ましたのは午後3時くらいだった。目が覚めた颯太は体がかなり楽になっているのがわかった。恵那が作ってくれた味噌汁がかなり効いているのを実感した。
それと同時に恵那も目が覚めた。
「おはよう。」と恵那の半分寝ぼけた声が聞こえた。
「おはよう。恵那のおかげで二日酔いもだいぶ楽になったよ。」
「本当に?ありがとう。良かった。」
恵那は颯太の言葉で一瞬に目が覚めた。恵那はとても嬉しそうだった。
二人はベッドから出てリビングのソファーに座った。
「ねえ颯太くん明日仕事でしょ。私も仕事だからさ今日のうちに食材とか買いに行こうよ。」と恵那が買い物を提案した。
恵那も仕事していることに驚いた。いったいどこで仕事をしているのかとか色々気になったが突っ込むとまたややこしくなるのでそれを素直に受け入れた。
そして買い物に行くのも全銭屋ではなかった。ちょうど颯太も食材とかかいたいものがあったし何せ3年ぶりの女性と買い物に出かける嬉しさがあった。
「いいよ。行こう。ならショッピングモールに行こう。」
颯太がそういうと恵那はすぐに準備をした。それに続いて颯太も準備に取り掛かった。
準備が終わると二人は家を出て颯太の車に乗った。運転は二日酔い明けの颯太ではまだ不安だったので恵那がすることになった。
いつもは一人で乗っている車に女性が乗っているのが非現実だった。そして恵那は顔立ちも整っており肩より少し短いくらいの髪の毛の長さがとても似合っていた。こんなこと買い物をできるのが幸せに感じた。
「出発進行。」という恵那の掛け声と共に車でショッピングモールに向かった。
車を走らせること15分くらいでショッピングモールに着いた。二人は車を降りショッピングモールの中に入っていった。
ショッピングモールはそこそこの人がいて活気付いていた。恵那はそれをみて颯太に寄り添った。そして颯太の手を握った。
颯太はえなのいきなりの行動に驚いて手をよけてしまった。その瞬間恵那が悲しい目をして振り向いた。
「颯太くん手を繋ぐの嫌なの?前はずっと繋いでいたのに。」
恵那の寂しそうな声が颯太の耳に入ってきた。
「ごめん。繋ぎたくないわけではないよ。急すぎてなんか驚いちゃった。」
颯太はそう言って恵那の手を握った。その瞬間恵那の顔が笑顔になった。
「颯太くんと手を繋いでいると本当に安心する。暖かいし大きいし包み込まれているみたいで本当に安心する。」
恵那の言葉で颯太は嬉しくなった。恵那の一言一言が颯太の心に響いて幸せな気持ちになった。
そんな幸せな気分でショッピングモールを回った。
二人は最初洋服店に行き服を買うことにした。今は3月でだんだんと暖かくなってきたので春物の服を新しく買うことにした。
洋服店に入り二人は服を見て回った。そこで白色のワンピースがあった。恵那はそれをずっと見ていた。
「恵那ちゃんこのワンピース気に入ったの?」と颯太がそっと恵那に聞いた。
「うん。白色だけどうっすらピンクかかっててとっても可愛いからつい見惚れちゃった。」
「確かにこのワンピース可愛いよね。」
「うん。とっても可愛い。」
そんな会話をしていると店員さんが寄ってきて試着を促した。恵那は店員さんに言われて試着してみた。
恵那が試着室に入ってしばらくするとワンピースをきた試着室から出てきた。颯太はワンピースを鍛えなをみて思わず見惚れていた。恵那とワンピースがとっても似合っておりいつまでもみてられた。
「とってもお似合いですね。本当にこの時期にお似合いですよ。」と店員さんも笑顔で言ってくれていた。
「着心地もいいし楽だしとっても可愛い。」
恵那も嬉しそうだった。
「恵那ちゃん。これ欲しい?」と颯太が聞くと恵那は即答で「うん」と返答した。
「よし。このワンピース買おう。恵那ちゃんとっても似合っているしこのワンピースを着ている恵那ちゃんもっとみたいし。」
「え!いいの?本当に嬉しい。」
「うん。もちろん。この服も喜んでくれると思うよ。」
そう言って二人はワンピースを購入した。恵那は終始喜んでいた。
二人はワンピースを買った店を後にして通路を歩いていた。
「ワンピース本当にありがとうね。せっかくだから颯太くんの服も買おうよ。颯太くんTシャツ好きだよね?」
「うん。Tシャツ好きだよ。せっかくだから新しいの買おうかな。」
「うん。そうしよう。」
二人は颯太のシャツをきめにさまざまな服屋さんを巡った。
服屋さんを巡っているととある服屋さんにあった白いTシャツに目が入った。少しそれをみているとそのシャツが気に入った。
「恵那ちゃん。俺このTシャツがいい。似合うかな?」
颯太は恵那に聞いてみた。
「うん。似合うよ。これにする。」
そう入って颯太は白いTシャツを購入した。颯太も新しいTシャツを買って喜んでいた。
二人は服を買った後食材を買いにショッピングモール内にあるスーパーマーケットに向かった。そこで野菜や肉などの食材を買いスーパーを後にした。
買い終わった後二人はショッピングモールを後にして家に向かった。道中颯太はとても幸せな気分だった。しかし恵那とどうして知り合い彼女になったのか全然わからなかったのでその経緯を知りたいとも思っていた。
明日は会社に行くのでその時に飲み会の時のことを話してみようと思った。そうすれば何かわかるかもしれない。そして恵那のこともわかってくると思ったからだ。
二人は家に着いてご飯をたべ寝る準備をしていた。二人はベッドに横になり互いに見つめあっていた。
「恵那ちゃん。今日はありがとうね。とっても楽しかった。服もありがとうね。」
「こちらこそありがとうね。とって嬉しかった。明日からの仕事お互い頑張ろうね。」
「うん。頑張ろう。」
二人は会話を少しだけしてそのまま眠りについた。
いきなり彼女となのる恵那が現れた時は驚きを隠せなかったが恵那と今日一日過ごしてみてとても居心地が良く楽しくて幸せだった。けれど恵那のことを知る必要もあると思っていた。
明日会社に行って何かわかればいいと颯太は思った。