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 前触れもなく扉が開き王兄妃殿下が入室した。それぞれ立ち上がり、頭を下げる。

「楽にしてちょうだい」

 許しを得て顔をあげると、鷹揚に頷き、ゆったりと腰掛けた。

 そしてクララ達も腰を降ろした。

「結論から。レムシャイト侯爵はロートゲンの処分を決めたようなので、入学金及び授業料をレムシャイト家に返金し、ロートゲンに同額を納めるよう告知。納めるならば、卒業資格は与えないけれど、中途退学扱いに。納めないならば、入学実績を抹消」

 卒業資格さえあれば、箔はつく。もし働く事になっても、採用されやすい。様々な事情で途中で退学しなければいけなくなっても、基準さえ満たせば資格を貰えるのだ。

 無論、基準に満たなくとも入学していた事は事実だから、多少の信頼は得られやすい。

 支払うだろうか、問題を起こした娘の箔の為に。

「相手の方の学校は処分をどうするのか検討中のようだけど、こちらはもう覆らない」

 ふう、と溜息をついた王兄妃殿下は軽く首を振った。

「王太子殿下は不愉快だと仰って、明日、関係者を集めて今後を決めるそうよ。クララ、あなたも不愉快だろうけど、出席するように。王太子殿下はあなたに対して無茶は仰らないからそこは安心してちょうだい」

「はい」

「まだ更生の余地はあると思ったわたくしの責任です。王太子殿下にそう申し上げて、沙汰を待ちます」

「そんな学園長先生!」

「わたくしも、興味のもてない婚約者でしたからそういう存在がいた方が便利かと考えて」

「駄目よ。本音を言っては。良いわね。特に王太子殿下の御前では、尽くしてきた婚約者をきちんとよそおいなさい」

「……はい」

「エリアス、アメリー、あなた達にも苦労をかけました」

「いいえ、妃殿下が気にかけて下さったから、アメリーは最後までやれたのです。でなければ、今頃どうなっていたか」

 エリアスの言葉にアメリーは深く頷いた。

「ありがとう。あなた達生徒にそう言ってもらえるなんて、わたくしは果報者ね」

 そう言って王兄妃殿下は退出した。

 明日の為にクララは先に帰宅する事にした。

 ホールからは賑やかな喧騒が聞こえてくる。素晴らしい思い出にすり代わってくれればいい。十年後位にそういえば、あんな迷惑な事あったけど、今、皆幸せにしてるわね、と言い合いたい。

「クララ、お疲れ様」

 次兄のヘリサーが待っていた。

「お兄様」

「さあ、帰ろう。明日の事、聞いているだろう?」

「はい」

 明日の為にも今夜はゆっくりと休んで万全な体調で迎えたい。





 王宮の一室に通される。

 窓が極端に少なくしかも小さい。昼間だというのに薄暗く、照明の為の灯りがいくつも灯されていた。

 集まっているのはクララの両親と長兄夫婦、クレーフェルト侯爵夫妻と、現時点ではまだ婚約者のエミル。そしてレムシャイト侯爵とリーナの両親のロートゲン子爵夫妻だ。

 王太子殿下に入室の案内の声で立ち上がり、頭を下げる。

 粛々と手続きが始められる。

 文面が読み上げられ、サインを求められる。当人とその両親のサインが終わると、クララは立ち上がり、深々と頭を下げた。

「お義父さま、お義母さま、今までよくして下さってありがとうございました」

「いいや。こちらこそこんな事になって申し訳ない」

「本当に。あなたが嫁いで来る日を楽しみにしていたのに」

「もし、困った事があったらいつでも頼ってくれ」

「はい、ありがとうございます」

 婚約破棄が成立したが、今後も会うだろう。エミルを除いて友好関係は続けたいというのがドルトムント家の総意だ。

 クレーフェルト家も同様なようで一安心する。


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