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「それで彼らはどうなった?」

 クララはリラと顔を合わせた。リラは困った顔をしている。クララも似たような思いだ。

「どうした?いや、王都の情報は色々入るがそれに関しては入ってこないんだ」

「噂ばかりで、わたくしも詳細がわかりませんの」

「噂でよい」

「まず、王太子殿下のはからいで夫婦で雇われたのはご存知でしょうか?」

「ああ、夫婦用の寮も用意されたとか」

「二人共、官吏になるには試験を受けなければなりません」

「そうだな」

 女子学園では学園長が推薦した場合、官吏登用の試験を受ける事が出来る。ただその試験内容は事前に知らされていて、その為に勉強しているから、よっぽどの事がないかぎり合格する。いや合格出来るだろうと判断出来た者のみ、推薦を出している。無論、卒業生として素行の悪い者は推薦していない。

 男子の場合もそうだ。

 しかしエミルは中途退学、リーナは入学自体なかった事になっている。当然、推薦は受けれない。一般人と一緒に登用試験を受ける事になる。

「その試験を受けませんでした」

「ほう」

「それでも二人、いえ、エミルは官吏になれると思っていたようでして、リーナの方は働かなくても大丈夫だと思っていたようで……」

「阿呆か」

「人事の方は、頭を悩ませてひとまず下働きから始めさせようと」

「ああ、それが普通、だな」

 下働きしながら官吏登用の為の勉強をする者は少なくない。試験は年に二度、行われているが、何度受けても構わないのだ。大半はそうやって官吏を目指すのだ。

「本人は不服のようで、十日後、職場に来ませんでした」

「十日は働いたのか。いや、文句ばかり言って日が過ぎたのか」

「無断欠勤し、様子を見に行った上司の方を殴りまして、寮から追い出されました」

「阿呆か」

「金銭も尽きたようで、そのリーナを高級娼館へ……」

「呆れた。売ったのか、自分の妻を」

「売ろうとしましたが、礼儀作法もなく教養もない上に乙女でもない女はいらぬ、と断られまして」

「……で?」

「エミルは娼館の方を殴ろうとしたようですが、返り討ちにあい、王都の警備隊に突き出され、現在、牢に入れられてます」

「リーナは?」

「リーナも暴れたようですが、別件で、その、ツケで買い物をして代金を支払っていなかったものですから……」

「なんとまあ、お粗末な」

 正直なところ、あまりにも馬鹿馬鹿しくて真実味がない。噂として流れた時もありえないと笑ったが、あれ以降、話は聞かない。二人共、牢に入ってから消息が不明だ。

「大人しく君と結婚していれば、よかったのに。いや、君にとっては良かったのか」

「さあ、どうでしょう?政略ですもの。愛はなくとも信頼しあえたらと思ってましたが、特にそれもなくても困りませんし」

「そうだな。特に君はクレーフェルト侯爵夫妻から信用されていたようだし」

「ありがたい事です」

 カップの中身を飲み干したジョセフは、ソフィアが置いていったポットを持ち上げ、カップに茶を注ぐ。半分程に減っているクララとリラのカップにも注いでくれ、ありがとうございます、と礼を述べる。


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