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引き裂かれた家族

作者: ヌベール

妻には母国に3人の姉がいる。


1番上の姉はさすがに長女らしく面倒見が良く、優しい姉である。


2番目の姉は本来ならカナダ国籍を持ち、カナダに住んでいるのだが、3年前にもともとの母国に帰国した時コロナ禍に巻き込まれてそのまま帰国できなくなってしまった。


3番目の姉は1番繊細で1番私とも近しく、私たちがこの国に住んだ時は1番お世話になった方である。

今は夫と2人で、社会にも従順に、静かに老後の生活を送っている。


そんな姉たちも、以前は何度か日本に来たことがある。

私も車で3人の義姉と、妻と、私で山中湖までドライブした。


しかしその後は、義姉たちと妻は京都だの飛騨高山や白川郷だの、九州の湯布院だのと旅行し、私の出る幕は無くなってしまった。


しかし勘違いしないでいただきたい。

妻が日本に住み、全く日本人と同様に生活を送っているせいもあって、義姉たちもよく心得ていて、爆買いをしたり、大声で話したりということは全くない。

極めて礼儀正しい外国人である。


こういう外国人が日本に来るのは日本にとってもプラス以外の何物でもないと思う。

静かに旅をして、日本の礼儀も妻の指南でちゃんと心得ていて、そしてしっかり落とすべき金銭を落としていく。

実にいい旅行者である。


しかし当然、もう何年も義姉たちは日本に来ていない。今もまだ来られない。

妻もとてもじゃないが、国に帰るような状況ではない。

こんなことになってしまって、次はいつ妻は姉たちと再会できるのだろう。


妻の両親は亡くなっている。甥っ子たちは当然本国にいるし、唯一、2番目のカナダ国籍の姉の子は、カナダ国籍を持ち、カナダで家族と暮らしているが、まだまだそう簡単に会いに行くというわけにもいかない。


妻は私の母親は勿論、姉とも、親類とも没交渉である。

妻は繊細で正直で純粋で、私の親類とは全く性格が合わない。


つまり、妻には私と子供と、柴犬キリしか親しいものはいない。

外国で、寂しいだろうなと思う。


そうそう、妻に最近新しい友達ができた。

友達なら妻も何人もいるが、割と近所に、親しい友人ができたようで、妻は喜んでいる。

柴犬キリが取り持った仲である。


最近まで、私も母の家に泊まり込んだりして母の介護をしていたが、体力的に持たないのと、妻を放っておけないのとで、ついに母を老人ホームに預けることになった。


これからは仕事一本で夜は妻のそばにいてやれる。

なんなら妻と小旅行くらいできないこともない。

やっと、妻にも寂しい思いをさせないで済む。

ごめんね、と妻に言いたい。

2年近く、私が母の家に泊まり込んだりして、寂しかったろうな。

もうそんな思いはさせない。

辛い思いも、苦しい思いも、悲しい思いも、全て縁を切りたい。

老後の生活は目の前に迫ってきている。


いつか、お姉さんたちと会える日が来るといいね。

きっと来るよ。

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