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29話 ウルーガ5

29話 ウルーガ5



 ――迷宮の森には色々な生き物が生息している。今は草木も眠る丑三つ時というやつで、夜半はとうに過ぎている。そんな中ジャスティスは目を覚ました。


 隣で静かな寝息を立てているウルーガを起こさぬようそっとベッドから出る。木張きばりの床がヒンヤリと冷たくて、ジャスティスは小さく呻いて身震いをした。


 身体をかすかに震わせつつ暖炉の側まで行くと、暖炉の火はジャスティスと同じように身を縮こませて小さな炎を揺らしていた。


(ーー寒いはずだよね)


 心中で呟きジャスティスは備えられていた薪をべる。


 そうするとお腹を空かせていた小さな炎は勢いよく薪を飲み込むと力がみなぎったかのように自身の炎を大きくした。


「これで少しはあったかくなるかな」


 呟いて、あたたまろうと暖炉の前でしゃがみ込みかじかんだ両手を差し出し擦り出した。そうする事で身体が程よく温かみを帯びてきた。

 身体の暖まりを感じたジャスティスは立ち上がりランタンに火を移し、暖炉から松明を拝借してブーツと外套マントを身に付け小屋から外へ出る。




 ――外へ出ると時が静まりかえったような空気がピリピリと肌に突き刺さる。ランタンの灯りを頼りに焚き火の所まで来ると松明から焚き火に火を移すと、静まり返った森のその一角だけ仄かな明るさの賑わいが灯る。


(マント着てきて良かったぁ〜…)


 そんな風に心で安堵し、ジャスティスは瞬く間に冷え込んだ身体を温めようと焚き火の側にある丸太に腰掛けて暖をとる。


 身体を温めつつ空を見上げればチラチラと瞬く満天の星々。その光景に感嘆の溜息を吐いた。


「ーーすごく、綺麗」


 知らずに呟きが漏れた。







 ――今までこんな風に空を見上げた事があっただろうか。


 ここに来るまでの経緯は確かに最悪だったかも知れない。けれど、空を見上げているとそんな事どうでも良くなって。

 不謹慎かも知れないけれど、『今』が一番自分らしくいられるようで正直楽しい。


「僕って、案外『現金なやつ』なのかなぁ」


 言って、くすりと笑ったと思えば急に思い出したように立ち上がり、

「そうだ。『アレ』を探さないと……」

 確認するように口内で呟いて、小屋の裏側に回る。丁度湧水の向かいに位置する辺りの小屋の壁に【アレ】はあった。


「やっぱり」


 寒さで少し薄白い肌色のジャスティスの口角が柔らかく上がる。彼は――自身が探すものが此処ここにあると確信していた。【木こりの小屋】と聞いた時からそうであるとは思った。


 寒冷地に育つ、【唐檜トウヒ】。木材としては硬めだが加工しやすくこの辺りの地方では包丁の柄などにも使われている。


「少し、貰います」


 誰に言う訳でもないが、この木材を常備していたであろう、【木こり】の方々に感謝しつつ、ジャスティスは無造作に置かれていた二メートル程に切り取られた唐檜トウヒの原木を一本肩に担ぐ。

 それを焚き火の側に置くと今度は同じ場所に置かれていた【斧】を、『これもお借りしますね』、と小さく了承を得て持ち出す。



 焚き火まで戻るとジャスティスは唐檜トウヒの原木をやや中心になるように横から輪切りするように斧で切断した。

 半分になった原木を立てて、今度は縦に割るように切り開く。二等分された片方を持ち、丸太に座ると、愛用のナイフで周りを形づけるように刃先で削っていく。



 ジャスティスの趣味でもある工作の時間だ。


 彼が今回作るのは盾のようで、これは勿論ウルーガのものである。


【武器を持たない戦い】にジャスティスは感動を覚えた。人には、その人の得意とする戦い方がある。

 ウルーガは戦うのが嫌いで、魔物モンスターの攻撃も身を持って防御に徹していた。いくら武器を持たなくても【生身】では受けた傷は蓄積しいずれ身体の内側を蝕んでいく。


 折角出逢ったのに。

 美味しい料理を作ってくれたのに。

 自分を信じてついてきてくれたのに。


 一人になって正直心細かったのもある。

 ついてきてくれた『お礼』ではないけど、身を守る盾くらい自分なら作れる――少しでも役に立ちたかったのだ。


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