表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/40

18話 もう一つの約束2

18話 もう一つの約束2



 ――カインは早朝にタドット村に戻る事にした。行きは深夜だったために獰猛どうもうな動物や魔物の姿があったが、陽がのぼると同時に彼等は静まり返っていた。



 村に着くや否や、心配で仕方がなかったと言う表情を隠しきれていない村長のイワフから熱烈な抱擁を受け、事のあらましを伝えた後、ゴブリンによる『畑あらし』も無くなり村長同様村人にもようやく安堵が訪れた。『宴』をしたいと言う村長を振り切り、カインは早めに港に着きたかった。



 ――カインは、ジャスティスの事が気がかりだったのだ。ディザイガの騎士団に皇妃の命が出た事。騎士団の新団長がジャスティスの級友のロウファである事。


 ジャスティスはカインと一緒に脱獄をしたのだ。あの少年にも何らかの危害が与えられるかも知れない。



「……ジャスティス。頼むから無事でいてくれ」


 カインは祈るように一人呟く。タドット村から続くシャウンイー山岳道を南下する。ウェイター森林を入ってすぐの分かれ道を左に曲がると拓けた洞窟がある。


 この洞窟はシャウンイー山岳地帯を縦に掘り進み、国の港であるティエラ港まで続いている。



 洞窟に足を踏み入れたカインはただひたすら道に沿って歩みを進めた。



「俺の足で行けば明日の朝くらいには港に着けるか」


 懐から【御礼】として受け取った簡易的な干し肉を取り出し少しずつ噛みちぎりながら歩く。その途中で革袋に入ったミルクを口にする。


 少し空腹が満たされたところで、カインは何度目かのディーバットの大群に襲われた。



「……ハァ〜…」


 自身の後頭部を掻きつつ呆れたようにまた何度目かの重い溜息を吐く。


「ええい、くそッ」


 手のひらを眼前で打ち鳴らし、


「緑と風に連なる四神、白虎バイフゥ!」


 張り合わせた手のひらをゆっくりと開く。掌大てのひらだいの淡い緑色をした光球が、手のひらの間に産まれた。


「俺、急いでんだよッ!」

 

 対面するディーバットの群れに当たり散らし素早く八芒星オクタグラムを完成させるカイン。


不変ふへんなる光刃こうじんの依り代を具現化せよっ! ウェントス!!」


 苛立たしげに術を唱えた瞬間。


 緑の八芒星オクタグラムはシュポンッと音を立てて消え、その反動で数個の小さな竜巻と具現化した。



 ――ビョオオオォ…ッ!



 何かが唸るような風音を撒き散らした竜巻がディーバットの群れを薙ぎ払い、風圧による刃にて彼らの翼や皮膚を切り裂き、地には先ほどまで天井付近に群がっていたディーバットの残骸が無惨な姿で至るところに散らばった。



「『急いでる』って言ってんだろ……」


 脱力したようにディーバットの死骸を睨みつけて再び足を進ませた。






 ――山岳道の洞窟をただひたすら南下するカインは、背後にある気配を感じた。それは一定の距離を保ちつつもこちらに悟られないように尾行してくる事から素人ではない事は確かだ。



 口中で静かに呼吸を整え、いつでも迎撃できるようにリラックスした状態をとる。


 ピタリと歩みを止めると相手も同じように動きを止めた。



「……『けられてる』ってのは分かってるんだ」


 低く言ってカインは後ろを振り向くと、



「流石に勘が鋭いな」


 数メートル先の洞窟の壁際から、人影らしきものが揺れる。


「お前に、手配書が回っている」


 人影はゆっくりとカインの方に近づいてくる。



 カインは黙ってダガーを懐から取り出す。



「……本当は、『始末』しないといけないんだがな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ